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主人公
- 狐の遺伝子が混ざっているというだけあって、ヒルメは伝説に出てくる九尾の狐の姿をしている。

Transcription

  1. 主人公:

    - 狐の遺伝子が混ざっているというだけあって、ヒルメは伝説に出てくる九尾の狐の姿をしている。

  2. 主人公:

    - だとすれば、それに関する資料も調べた方が役に立つかもしれない。

    1. う~ん…油揚げが好き…?
  3. 主人公:

    - いくつかの資料を漁ってみた結果、共通してヒルメの姿のモチーフとなっていると思われる九尾の狐は、油揚げが好きだという記述があった。

    1. 油揚げといえば…いなり寿司か?
  4. 主人公:

    - いなり寿司は一度だけ食べたことがある。ソワンではなくカエンが作ってくれた。

  5. クノイチ・カエン:

  6. クノイチ・カエン:

    殿。あ~ん。

  7. クノイチ・カエン:

    美味し…?

  8. クノイチ・カエン:

    …うん。カエン、頑張って、作った。…殿の、ために。

  9. クノイチ・カエン:

    それ、食べたら、次は…

  10. 主人公:

    - ……とりあえずカエンに頼んでみるか。

    1. ヒルメ、行こう。
  11. 天香のヒルメ:

    …わかった。

  12. 主人公:

    - カエンに連絡を入れて、ヒルメと一緒に艦長室に戻ることにした。

  13. クノイチ・カエン:

    ううん、だめ。

    1. ……
  14. 主人公:

    - カエンにいなり寿司を作ってくれと頼むと、即答で断られてしまった。

    1. え……どうして?
  15. クノイチ・カエン:

    お寿司…調和が、大事。

  16. クノイチ・カエン:

    いなり寿司だけは…彩り、悪い。美味しさ、下がる。

    1. そ、そうなの?
  17. 主人公:

    - そういえば…カエンは寿司に関しては異常なまでのこだわりを見せていたな…。

    1. じゃあ寿司を全種類作るならいいのか?
  18. 主人公:

    - この周辺は港湾都市であるためか、物資探査報告書にも保存状態の良い海産物が、大量に発見されたとの記述があった。

  19. クノイチ・カエン:

    ……新鮮、じゃない。よね?

    1. ほとんどが良い状態みたいだから…大丈夫じゃないか?
  20. クノイチ・カエン:

    ……うん。わかった。

  21. 主人公:

    - しばらく待っていると、カエンが一目で美味いとわかる寿司の盛り合わせを運んできた。

  22. 主人公:

    - 綺麗に並べられた寿司の両端にはふっくらとした いなり寿司があった。

    1. ほら、食べてみて。
    2. 確か手で食べさせろって言ってたな…
  23. 天香のヒルメ:

    これは…

  24. 主人公:

    - ヒルメは皿に盛られた いなり寿司に目をキラキラさせていた。

  25. 天香のヒルメ:

    あ…ありがとう…。このようなもてなし…正直嬉しいが…驚いておる……

  26. 天香のヒルメ:

    では…

  27. 天香のヒルメ:

    …ぬしは妾を何と思っておるのだ。

  28. 主人公:

    - ぶつぶつ言いながらヒルメの視線は俺の手にあるふっくらとした いなり寿司に向かっていた。

    1. 食べないんだったら俺が…
  29. 天香のヒルメ:

    た、食べないとは言っておらんだろ!

  30. 主人公:

    - そう言ってヒルメは両手で俺の手をぎゅっと掴み、ゆっくりと口を近づけた。

  31. 天香のヒルメ:

    はむっ…もぐもぐ…

  32. 主人公:

    - 目をそっと閉じて、寿司をじっくり味わうヒルメを見ているとなんだか嬉しくなった。

  33. 主人公:

    - 作ってくれたカエンも無表情だが、美味しそうに食べてくれてきっと嬉しいはず。

  34. 天香のヒルメ:

    初めて食べる味だ。悪くない。

    1. …それだけ?
  35. クノイチ・カエン:

    ……

  36. 天香のヒルメ:

    妾に何を期待しておるのだ…。伝説は伝説、妾は妾だぞ。

  37. 天香のヒルメ:

    ただ普通に美味しいだけ…あぁっ…!

  38. クノイチ・カエン:

    残りは、殿のもの。

  39. クノイチ・カエン:

    あなたは…食べちゃ、ダメ。

  40. 天香のヒルメ:

    そ、そんな…

  41. クノイチ・カエン:

    殿、あ~ん。

  42. 主人公:

    - そう言うと有無を言わさずカエンはいなり寿司を俺に食べさせた。

  43. クノイチ・カエン:

    どう…?美味し…?

    1. 最高。
    2. …まぁまぁかな?
  44. クノイチ・カエン:

    …うん。

  45. クノイチ・カエン:

    ……

    1. 冗談だよ。すごく美味しい。
  46. クノイチ・カエン:

    殿…意地悪…

  47. クノイチ・カエン:

    はい…残りも、食べて。

    1. ほら。ヒルメもこっちに。三人で食べよう。
  48. 主人公:

    - カエンが鋭い眼光で睨む中、ヒルメは体を縮こまらせながら慎重に俺に近づく。

  49. 天香のヒルメ:

    …さっきは妾が失言をした…。本当は、とても美味しかった…。

  50. クノイチ・カエン:

    …うん。

  51. 主人公:

    - カエンも許してくれたようで、ヒルメはサーモンの寿司を手に取り、それを幸せそうな顔で口に入れようとした瞬間、艦長室のドアが勢いよく開いた。