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Transcription
- 主人公:
- 仕事をしていたがふと顔を上げ、時間を確認する。
集中していて思ったより時間が経過していた。 - ちょっと休憩するか……
- 主人公:
- 艦長室にいるとすぐに仕事をしてしまうし、どこか別の場所で
休んだ方が良さそうだな。さて、どこに行こう…… - スカイナイツの部屋にでも行くか。
- 練習部屋に行ってみよう。
- 甲板を見に行こう。
- 主人公:
- 俺は艦長室を出て、目的の場所へと向かった。
- 主人公:
- スカイナイツの部屋にはハルピュイアがいた。
- 主人公:
- 他には誰もいないようだ……。ちょうどいい……チャンスだ。
- P-22ハルピュイア:
うっ……プロデューサー、痛い……優しく……
- もう少し力を抜いて。
- P-22ハルピュイア:
うう……ん……。
- P-22ハルピュイア:
あっ……私…こういうの、本でしか読んだことなくて…は、初めてだからぁ……
- 大丈夫。俺に任せて。
- P-22ハルピュイア:
うん……プロデューサー、信じ―ひゃあん!?
- 主人公:
- 少し力を入れると、ハルピュイアの体はビクンと跳ねる。
- P-22ハルピュイア:
うっ……ふぅ……んん……これ以上は、もうだめぇ……ふぁっ…!?
- ここか?ここがいいのか?
- P-22ハルピュイア:
プロデューサー……そこ……あぁ……
- P/A-00グリフォン:
……あんた達は何してんの?
- 主人公:
あ……、グリフォンも一緒にどう?すごく気持ちい―はうっ!?
- P-22ハルピュイア:
ふぁぁああぁ……プロデューサー、マッサージ本当に上―ああっ。
- 肩がだいぶ凝ってるな?
- P/A-00グリフォン:
……マッサージでそんな声出すことある……?もう完全に……
- P/A-00グリフォン:
いや、何でもないわ……
- お前、何か勘違いしてるだろ……
- P/A-00グリフォン:
勘違いしない方がおかしいだろ!!
- P/A-00グリフォン:
ふぅ……偵察に行ってくる。留守番頼んだわよ。
- P-22ハルピュイア:
いってらっしゃ~い。
- 主人公:
- ハルピュイアはうつ伏せになったまま手を振ってグリフォンを見送ると、
もうマッサージは良いのか、ベッドから立ち上がった。 - どう?
- P-22ハルピュイア:
体がすごく軽くなったわ。マッサージ得意だったの?
- いや、この前 宝蓮に教えてもらった。
- P-22ハルピュイア:
最近覚えたのね?その割にはすごく気持ちよかった……
- 愛情を込めたからかな?
- 結構練習したからな。
- P-22ハルピュイア:
あはは、やだ~。
- 主人公:
- ハルピュイアは笑いながら俺の肩をぺしっと叩いた後、
気持ち良さそうに「う~ん」と伸びをした。 - P-22ハルピュイア:
プロデューサーのおかげで元気も出てきたし、もう少し練習しないとね。
- 無理してないか?
- P-22ハルピュイア:
私、こんなだから……普通にしてたらみんなに置いてかれちゃうじゃない……?
だから、無理くらいしないと……ね? - P-22ハルピュイア:
でも無理し過ぎて辛くなった時は……またプロデューサーに
マッサージしてもらおうかな? - うん。いつでも言って。
- P-22ハルピュイア:
うん。
- P-22ハルピュイア:
うぅ……、プロデューサーは何でもすぐ上手になれていいな。
- そ、そうかな?
- P-22ハルピュイア:
私なんてどれだけ本を読んでも全然上手くなれなくて悩んでるのに。ずるい。
- 主人公:
- ハルピュイアは頬を膨らませ、俺の肩をぺしぺしと叩く。
そして、気が済むとベッドにどさっと座った。 - 主人公:
- ゆっくりともたれかかってくる背中に腕を回し、
柔らかな体を後ろから抱きかかえる。 - P-22ハルピュイア:
ねえ、プロデューサーは……私たちがいて、嬉しい?
- うん。
- P-22ハルピュイア:
即答ね。
- だって…事実だからな。
- 主人公:
- 「えヘヘ…」と笑いながらモジモジしていたハルピュイアは、
体の向きを変えて俺と向き合った。 - P-22ハルピュイア:
あのね。私がオルカに来た時は最後の人類……しかも、抵抗軍の総司令官と
こんな風に話をするだなんて、夢にも思わなかったわ。 - じゃあ、どういう風に思ってた?
- P-22ハルピュイア:
戦隊長とか小隊長を通して命令を受けて……顔を見れるのは年に1回……
それも遠くから、一瞬見れたら運がいい…そんな風に思ってたわ。 - それはちょっと酷いな。
- P-22ハルピュイア:
普通よ。プロデューサーが変なのよ?
- 主人公:
- そう言って、しばらく俺の顔を見ていたハルピュイアは、
心を落ち着かせるように小さく深呼吸した。 - P-22ハルピュイア:
プロデューサー、疲れてない……?
- う~ん……大丈夫だよ。
- P-22ハルピュイア:
………。
- …と思ったけど、ちょっと疲れてるかな?
- P-22ハルピュイア:
そ、そう?じゃあ……
- 主人公:
- ハルピュイアはゆっくりと腕を伸ばして、俺の頭を抱き寄せた。
- 主人公:
- 甘い香りがしたと思ったらすぐになめらかな肌が俺の顔に触れる。
- P-22ハルピュイア:
ほ、本で読んだの……。男の人って……す、好きな女の人に
こうしてもらうと元気が出るって。 - P-22ハルピュイア:
……どう?元気、出てきた?
- …もう少しこのままでいたら、わかるかも。
- P-22ハルピュイア:
えへへ、そう?
- 主人公:
- 「仕方ないわね」と呟いたハルピュイアは俺の頭を優しく撫でた。
- 主人公:
- この部屋に聞こえるのは、どこか遠くの微かな話し声と服が擦れあう音だけ…
俺たちは静かに、お互いの温もりを感じ合った。 - 主人公:
- 俺は艦長室を出て、目的の場所へと向かった。
- EB-48Gフレースヴェルグ:
あ、プロデューサー。
- お疲れ。練習してたのか?
- EB-48Gフレースヴェルグ:
あっ、いいえ。その……
- 主人公:
- フレースヴェルグはそう言うと、持っていたパネルを後ろに隠した。
- ん……?まさか……
- 主人公:
- 俺の姿……正確には俺、そして俺と一緒に過ごす隊員の姿を
カメラに収めたがる、某フェザーのことが脳裏に浮かんだ。 - 検問にご協力お願いします。
- EB-48Gフレースヴェルグ:
くっ……。
- 主人公:
- フレースヴェルグはゆっくりと姿勢を低くし、逃げ道を探すが、
唯一の出口であるドアの前には俺が立っている。 - 大人しく諦めろ。
- EB-48Gフレースヴェルグ:
…私が何と答えるか、プロデューサーならわかるはずです……。
- 交渉決裂だな……
- EB-48Gフレースヴェルグ:
そういう見方も出来ますね……
- 主人公:
- 互いに間合いを詰め、一瞬の隙を狙う……二人の動きは止まり、静寂が訪れた。
- 主人公:
- 数秒後、目をカッと開いたフレースヴェルグは勢いよく床を蹴った!
- EB-48Gフレースヴェルグ:
見えた……!
- EB-48Gフレースヴェルグ:
マジカルエスケ―なにぃっ!?
- 残念だったな。
- 主人公:
- 脇のわずかな隙間を狙ったようだが……
幸か不幸か、空軍所属バイオロイドの身体能力は総じて大したことがない。 - 主人公:
- ひょいとフレースヴェルグの細い腰を抱き上げると、
観念したのか、パネルを差し出してきた。 - まったく……今度は誰との…あ……。
- EB-48Gフレースヴェルグ:
………。
- EB-48Gフレースヴェルグ:
も、もう放してもらえますか……、プロデューサー……
- 主人公:
- EB-48Gフレースヴェルグ:
……。
- …そろそろモモは隠さなくていいんじゃない?
- EB-48Gフレースヴェルグ:
これには……複雑な事情があるのです。
プロデューサーのような一般人にはわからんのですよ! - 主人公:
- フレースヴェルグがパネルで観ていたのは、モモが登場するアニメだった。
当然と言えば当然か……どうやら俺の考え過ぎだったようだ。 - そんなの観てみないとわからないだろ。何なら今からでも―
- EB-48Gフレースヴェルグ:
ほ、本当ですか!?
- そ、そんなに驚くことか?
- EB-48Gフレースヴェルグ:
……私と一緒にモモを観た方は……二度とモモの話をしなくなるんですよ……。
- ………。
- EB-48Gフレースヴェルグ:
では、確認のためお聞きしますが……
プロデューサーはモモについてどの程度ご存知ですか? - EB-48Gフレースヴェルグ:
今オルカに所属しているモモではなく、
魔法少女マジカルモモシリーズに登場するモモについてです。 - …そ、それなりに知ってると思う。本人とも仲良くしてるし……
- そういう意味なら……全く分からないと言った方がいいかも。
- EB-48Gフレースヴェルグ:
そそそ、それでは!
- EB-48Gフレースヴェルグ:
ではこれを観ましょう!!魔法少女マジカルモモ第8期OVA!!!背景説明が一切なく、分かりにくいことで有名なのですが、セリフや描写に隠されたメッセージと意味を見出せた者には何よりも価値のある20分だと評価されている作品です!!!
- EB-48Gフレースヴェルグ:
いや、説明したところで何になりましょう!とにかく、一度観ないことには始まりません!!観ながら私が解説します!!いくらプロデューサーがそれなりにご存知だとしても、流石に私ほどではないでしょう……
- 主人公:
- 気が付くと俺はフレースヴェルグと座って、
見知った顔が大活躍する分かりにくいアニメを観ていた。 - 主人公:
- アニメを観終わった後も、フレースヴェルグの熱のこもった解説は
終わる気配がなく、結局夜が明けるまで続いた……。 - EB-48Gフレースヴェルグ:
そう、ですか……。じゃあ、無理に観なくても大丈夫ですよ……
- 最初から観ていけば、内容もわかっていくだろ?
- EB-48Gフレースヴェルグ:
それはそうですが……
- EB-48Gフレースヴェルグ:
……アニメですし、長いし……もしかしたら面白くないと思うかもしれません。
- まあ…それでも構わないよ。とりあえず観て―
- EB-48Gフレースヴェルグ:
そんなのは……嫌です。
- なんで?
- 主人公:
- 俺の質問にフレースヴェルグは項垂れる。
- 主人公:
- しばらく指をモジモジさせていたフレースヴェルグは、
消え入りそうな声で話し始めた。 - EB-48Gフレースヴェルグ:
私が好きなものは……好きになってもらいたいからです。
- EB-48Gフレースヴェルグ:
……好きな、人には……
- ……。
- 主人公:
- その一言で、フレースヴェルグの矛盾しているような言動の意味が
少しわかった気がした。 - 主人公:
- 隠したいけど、分かってほしい、好きになってほしい……。
- じゃあ、こういうのはどうだ?
- EB-48Gフレースヴェルグ:
……?
- 好きな人が好きなものは好きになると思う。そして、俺はお前が好きだ。
- EB-48Gフレースヴェルグ:
ふふふっ。何ですか、それ。
- 変かな?
- EB-48Gフレースヴェルグ:
…はい。私と同じくらい変です。
- 主人公:
- 小さく噴き出すように笑ったフレースヴェルグは、俺の手を引っ張って
一緒に床に座った。 - EB-48Gフレースヴェルグ:
今日は……お時間ございますか?
- あるよ。
- EB-48Gフレースヴェルグ:
では……
- 主人公:
- フレースヴェルグはパネルを操作し、モモのアニメの第1期第1話を再生した。
- 主人公:
- すぐにオープニングが始まり、見知った面々が登場し始めた。
- 主人公:
- エンディングが流れ、2話、3話と続き……
- 主人公:
- 第1期の最終話を観終わるまで、フレースヴェルグは俺の横顔を見つめていた。
- 主人公:
- 俺は艦長室を出て、目的の場所へと向かった。
- 主人公:
- 夜の帳が下りる頃、甲板に上がった。
オルカ号は今ステージを設置しているため安全な海域に停泊している。 - 特に変わったことはないか。
- 主人公:
- 人員コスト削減のため、先日から艦船外部の警戒を無人システムとセンサーに
切り替えた。だから、この時間の甲板には誰もいない…… - ん?
- 主人公:
- 一瞬、奥にあるステージの上で黒い何かが動いたような気がした。
- 主人公:
- 目を細めてよく見てみると、ステージの上を動き回っている人影が見えた。
- 何してるんだ……?あ、そうだ。
- 主人公:
- 驚かせようと思い、腰を屈めてそっと近づこうとしたのだが、
途中で地面に落ちていた物を蹴って、音を立ててしまった。 - ??:
誰だ!
- ………。
- 俺…プロデューサーだ。
- ??:
誰だと聞いている!暗号を言え!
- えっと……
- 主人公:
- これまで聞かれることがなかったため、答えに詰まってしまった。
思い出すために記憶を辿ろうとした矢先、ステージにいた何者かは…… - 主人公:
- 躊躇なく非常ベルを鳴らした。
- P-49スレイプニール:
ご、ごめんなさい……プロデューサーだとは思わなくて……
- いや、完全に俺が悪い……。
- 主人公:
- オルカ号は大変な騒ぎになりかけたが、駆けつけた隊員達に事情を説明して
戻ってもらうと、ずっとおろおろしていたスレイプニールは抱き着いてきて、 とうとう泣き始めてしまった。 - スレイプニールはマニュアル通りにやっただけだから……。
- P-49スレイプニール:
でも、プロデューサーのこともわからないなんて……
- 大丈夫だって。ほら、俺たちも戻ろう。
- P-49スレイプニール:
うん……
- 主人公:
- すっかり落ち込んでしまったスレイプニールを慰めながら、
艦内へ戻るエレベーターに乗った。 - ??:
んん!?
- ??:
……ほ、本当に司令官なら、本物だって証拠を見せて!
- スレイプニールは約1年間、アイドルにな―
- ??:
いやああぁぁぁ!ごめんなさい!やめてぇぇぇ!!
- P-49スレイプニール:
よりによって何であんなことで証明しようとするのよ……
- あれよりわかりやすい証拠はないだろ。
- P-49スレイプニール:
……。
- それはそうとこんな時間に何してるんだ?
- P-49スレイプニール:
えっと……その、ただ…ちょっと見ておきたくて。
- 動線とか、そういうの?
- P-49スレイプニール:
……うん。
- P-49スレイプニール:
フレースヴェルグが担当してるけど……
リーダーの私もちゃんと見ておいた方がいいと思って…… - 指は…ギターのせいで?
- 主人公:
- きまりが悪そうに話すスレイプニールの指先には、
絆創膏がいくつも巻かれていた。 - P-49スレイプニール:
う、うん…
- P-49スレイプニール:
でも大丈夫……。薬も塗っておいたし。
- 完璧じゃなくてもいいんだよ?俺が言い出したことなんだし―
- P-49スレイプニール:
ううん、完璧にしてみせる。私がそうしたいの。
- P-49スレイプニール:
軍人としてのスカイナイツも、アイドルとしてのスカイナイツも……
どっちも完璧でありたいの。 - P-49スレイプニール:
だから……どっちも完璧にやってみせるわ。
- おお~カッコいい~。
- P-49スレイプニール:
も~!こっちは真剣に話してるのに!
- 主人公:
- スレイプニールは口を尖らせ、真っ暗なステージの上に立った。
- 主人公:
- ステージの中央に立つスレイプニールを星の明かりがぼんやりと照らした。
- P-49スレイプニール:
プロデューサー、一曲歌ってあげよっか?
- 伴奏もないのに?
- P-49スレイプニール:
滅亡前最高のアイドルを舐めないでくれる?アカペラでも全然余裕だから。
- 主人公:
- スレイプニールは「あーあー」と軽く発声練習をすると、
いつもの自信に満ちた顔で、俺をまっすぐ見つめた。 - P-49スレイプニール:
私達の想いをこれでもかって詰め込んだ曲よ。
- P-49スレイプニール:
うぅ……だから……この曲はふ、深く考えないで軽い感じで聴いて……。
軽い感じで…… - 主人公:
- 星明かりが照らすステージは、すぐにスレイプニールの歌声で満たされた。
誰もいない観客席には俺一人。 - 主人公:
- 今夜のステージのことを俺は忘れはしないだろう。永遠に……