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Transcription
- C-77紅蓮:
- 無知は決して退かない勇気となった。
- AS-12スチールドラコ:
みんな!私の後ろに!
- AS-12スチールドラコ:
へへ、心配すんなって!私の盾は矛盾だし!そもそも私は頑丈だからさ!
- C-77紅蓮:
- 傍観は一瞬のタイミングを捉える慎重となった。
- T-14ミホ:
もうちょっと……もうちょっと……
- T-14ミホ:
もうちょっとだけ。あともう少し―
- T-14ミホ:
タンゴーダウン!高所の鉄虫を排除!
- C-77紅蓮:
- 独善は仲間のための正義となった。
- P-24ピント:
最後方に鉄虫の砲撃部隊発見!
- P-24ピント:
艦隊に座標を送信するわ!
- C-77紅蓮:
- 盲従は役目を果たす責任となった。
- T-60ブルガサリ:
ちょっと待って!ピント!前に出過ぎよ!
- T-60ブルガサリ:
ドラコの後ろに下がって再整備!
- C-77紅蓮:
- “紅蓮”が自らを責め、一人で償おうとしなければ……
- C-77紅蓮:
- もしかしたらラーテルチームの結末も違ったかもしれない。
- C-77紅蓮:
- でも実際は、彼女たちが変わる機会も、贖罪する機会も奪われてしまった。
- C-77紅蓮:
- あの選択は作戦官の責任。
- C-77紅蓮:
- 例え、私がその“紅蓮”でなかったとしても……
- C-77紅蓮:
- ラーテルチームの“紅蓮”が遺したものを譲り受けたのなら、
彼女の責任と罪も譲り受けなければならない。 - AS-12スチールドラコ:
お母さん?大丈夫?
- AS-12スチールドラコ:
どこか怪我した!?
- T-14ミホ:
え?もしかして、流れ弾に当たったのですか?
- T-14ミホ:
ダフネを呼びましょうか?
- P-24ピント:
……
- P-24ピント:
お母さん。
- P-24ピント:
お母さんが薔花と話してた事……
- P-24ピント:
気にならないとは言いません。嘘は吐きたくないですから。
- P-24ピント:
でも、その事を知ったからって、お母さんに対する今までの気持ちが
変わることはありません。 - P-24ピント:
お母さんが本当に悪人だったなら……
- P-24ピント:
自分の罪のことをあんなに深く考えたりしないですから。
- T-60ブルガサリ:
お母さんが言っていたように、お母さんの罪を許す人はもういません。
- T-60ブルガサリ:
ですが、お母さんのそばには私たちがいます。
- T-60ブルガサリ:
オルカのみんな……。そして、司令官もいますから。
- T-60ブルガサリ:
一人で背負わないでください。
- T-60ブルガサリ:
お母さんが一人で苦しむ姿を見ていると、私たちも苦しくなってしまいます。
- T-14ミホ:
別の、しかも昔の私がやった過ちが私と何の関係があるの?とか
そういうことは言いません。 - T-14ミホ:
失敗や過ちから学んで、私が活かさないと……昔の私が浮かばれませんから。
- T-14ミホ:
罪だって同じだと思います。
- AS-12スチールドラコ:
あ……えっと……
- AS-12スチールドラコ:
お母さん、頑張ろうぜ!
- C-77紅蓮:
……
- C-77紅蓮:
はい……頑張ります。
- C-77紅蓮:
- 私の罪は…許されることはない。
- C-77紅蓮:
- 私の罪を許す者はもういないから。
- C-77紅蓮:
- 私は私の罪を償う方法を知らない。
- C-77紅蓮:
- 死ぬまでに見つかるかどうかも分からない。
- C-77紅蓮:
- もしかするとその方法は存在すらしていないのかもしれない。
- C-77紅蓮:
- でも私は諦めない。方法を探し続ける。
- C-77紅蓮:
- それが犠牲となった者たちへの慰霊となるから。
- C-77紅蓮:
- そして……
- C-77紅蓮:
- この子たちと前へ進むために。
- 主人公:
- 薔花は2日間の休息をとった後、俺たちにエンプレシスハウンドに関する情報を
提供してくれた。 - 薔花:
アタシがエンプレシスハウンドについて知っている内容はこれで全部。
- 薔花:
話に出てきた奴のうちの何人かはもう死んでると思う。あ、最後に言った奴は
確実に死んでるわ。そいつの死体を発見したのはアタシだから。 - 主人公:
- そう言うと薔花は不思議そうな表情で自分の手や辺りを見たりした。
- 薔花:
思ったより何ともないじゃない。
- 何が?
- 薔花:
あのクソバ―、女帝が“エンプレシスハウンドの情報は喋るな”って
命令でも植え付けてると思ってたからさ。 - レモネードアルファ:
そんな風に制約をかければかけるほど、行動の幅が狭まりますからね。
- レモネードアルファ:
それにそういう制約がかかっている方が尋問する時も楽ですから。
特定のテーマについて話せないと分かれば情報の特定が容易ですし、 制約を迂回して聞き出す方法もたくさんあります。 - 薔花:
……
- レモネードアルファ:
まだ何かありますか?
- 薔花:
うん。
- 薔花:
アタシ……
- AS-12スチールドラコ:
あれ?薔花。
- AS-12スチールドラコ:
どこ行くんだよ?
- 薔花:
ちょっとそこまで。
- AS-12スチールドラコ:
あ、シャーロットが埠頭でじゃがバター作ってっからもらいに行ったら?
- AS-12スチールドラコ:
シャーロットのじゃがバターはホント美味いんだよ。超おススメ!
- T-14ミホ:
薔花、発見!
- T-14ミホ:
どうしたのよ?そんなキッツイ顔しちゃって。
- 薔花:
別に……。
- T-14ミホ:
気分が落ちてる時こそスマイル!スマイル!
- T-14ミホ:
笑ってれば次第に気分も良くなってくるからさ。
- T-14ミホ:
ほら、笑ってみ?
- P-24ピント:
あ!チビ発見!
- P-24ピント:
あ、間違った!薔花発見!
- P-24ピント:
薔花、じゃがバターどう?あそこでシャーロットが配ってるよ。
- 薔花:
要らない。
- P-24ピント:
もしかして戦闘の時に言ったコト、まだ気にしてんの?
- P-24ピント:
おいお~い、半分冗談だって~。切り替えようよ。
- P-24ピント:
……薔花も色々悩んでるんでしょ?
- P-24ピント:
悩みがあるなら言ってよね。いくらでも相談に乗るからさ。
- P-24ピント:
私だけじゃないわ。きっと、オルカのみんなが相談に乗ってくれる。
- P-24ピント:
あ、スプリガンだけはやめといた方がいいわ。
あいつの耳に入ったら次の日にはオルカ全体に知れ渡っちゃう。 - P-24ピント:
それも悪意しかない尾ひれが付いた状態で!
- T-60ブルガサリ:
薔花。お母さんが探してたけど会った?
- 薔花:
ううん。
- T-60ブルガサリ:
あそこの通りを行けば会えると思うわ。
- T-60ブルガサリ:
分からなかったら一緒に行ってあげるけど?
- 薔花:
……あんたたちってさ。
- T-60ブルガサリ:
うん。
- 薔花:
どうしてアタシに構うの?
- T-60ブルガサリ:
理由が必要?
- T-60ブルガサリ:
友達を気にかけるのは、普通のことでしょ?
- 薔花:
……
- 薔花:
……そうなんだ。
- 薔花:
友達……
- C-77紅蓮:
薔花。よかった。来てくれたのですね?
- 薔花:
私を探してるって聞いたから。
- C-77紅蓮:
ええ。探してました。まだいてくれてよかった……
- 薔花:
何か用?
- C-77紅蓮:
何か用って……司令官から聞きました。
- C-77紅蓮:
本当に……
- C-77紅蓮:
本当に行ってしまうのですか?
- 薔花:
うん。
- C-77紅蓮:
……オルカでの生活は合いませんでしたか?
- 薔花:
半分はそう。
- 薔花:
でもそれはそっちの問題じゃなくてアタシの問題なの。
- C-77紅蓮:
……私たちでは解決してあげられない問題なのですか?
- 薔花:
わかるでしょ?
- C-77紅蓮:
……
- 薔花:
たまに変な奴もいるけど……オルカはみんないい子ばかりだわ。
- 薔花:
特にマングースチームの子たちは。
- 薔花:
この前までアタシと戦ってたくせに、今はやたらと構ってくる。
- 薔花:
アタシがその理由を聞いたら……友達だから普通だって……
- 薔花:
なにそれ……アタシの感覚からしたら有り得ない話だった。
- 薔花:
昔は、ううん、ちょっと前まではそんな話されたら怒り狂ってた……
- 薔花:
紅蓮。
- 薔花:
アタシにオルカの生活が合わないのかって聞いたわよね?
- 薔花:
そんなことないわ。満足してる。人生で一番幸せだって言えるほどに。
- 薔花:
だから苦しいの。
- 薔花:
幸せな分だけ……苦しい。まるでコインの表と裏みたいに。
- C-77紅蓮:
……
- 薔花:
ここにいると…アタシが殺した子と同じ顔の子がアタシに「調子はどう?」とか、
「ご飯ちゃんと食べてる?」とか、「一緒に遊ぼう」って……話しかけてくる。 - 薔花:
悪意や皮肉が無いのはわかってる。でも、顔を合わせるたびに苦しい。
- 薔花:
そして……アタシが一番憎んでいた相手が…あんたが……
アタシのことを一番気にかけてくれる。 - 薔花:
こんな状況……平気ではいられない。
- 薔花:
あんたはアタシたちの罪を許す人はもういないって言ったでしょ?
- 薔花:
でも、アタシたちの罪を許せない人は残ってる。
- 薔花:
それが誰だか、あんたなら分かるでしょ?
- C-77紅蓮:
……
- 薔花:
自分自身よ。
- 薔花:
罪悪感が、アタシの手に染みついた血が、魂にへばりついている恨みが、
アタシに「幸せになる資格があるのか?」って聞いてくる。 - 薔花:
アタシは……まだその資格はないと思う。
- C-77紅蓮:
絶対に……行かなければならないのですか?
- C-77紅蓮:
あなたにまだ何もしてあげられていないのに……
- 薔花:
何言ってるの?
- 薔花:
あんたがいなかったら、アタシは今も身勝手な恨みを抱いたまま
世界中を彷徨っていたはず。 - 薔花:
紅蓮。
- 薔花:
お姉ちゃん。
- 薔花:
今は行かせて。
- 薔花:
アタシは幸せになりたくて行くの。
- 薔花:
贖罪の方法が見つからないことが、贖罪しなくていい理由にはならないって…
言ってたでしょ? - 薔花:
だから……今は自分なりの償いを探してみる。
- 薔花:
そして、必ず幸せになる資格を持っていいと自分で思えるようになる。
- 薔花:
…そしたら、戻ってくるから。
- C-77紅蓮:
……
- C-77紅蓮:
絶対に戻ってきてください。
- 薔花:
うん。
- C-77紅蓮:
どうか体に気を付けて。
- 薔花:
うん。
- C-77紅蓮:
危ないところにはなるべく行かないように……それから―
- 薔花:
お母さんかよ。
- C-77紅蓮:
待ってますから。
- 薔花:
……うん。
- 薔花:
またね。お姉ちゃん。
- 主人公:
- 薔花は俺たちのもとを去った。
- 主人公:
- 紅蓮は俺のところへやってきて、そっと笑った。
- まさか紅蓮にも言ってなかったとは思わなかったよ。
- C-77紅蓮:
こういう別れというものに慣れていないのでしょう。
- ちゃんと挨拶できたか?
- C-77紅蓮:
はい、ありがとうございます。
- よかったのか?今なら引き留められる。
- C-77紅蓮:
そうしたいですが……
- C-77紅蓮:
薔花が自分の意志で贖罪の方法を探しに行こうとしているんです……。
それを私が……同じく贖罪の方法を探している私が…… 止めるわけにはいきませんから。 - C-77紅蓮:
姉らしく……見送ってあげませんと。
- 寂しくないのか?
- C-77紅蓮:
……寂しいです。もう少し話をして、もう少し色々としてあげたかった……
- C-77紅蓮:
ですが、分かるんです。
- C-77紅蓮:
薔花はきっと贖罪の方法を見つけると……
- C-77紅蓮:
そして、私たちのもとへ戻ってきてくれると……
- C-77紅蓮:
私と薔花は……
- C-77紅蓮:
姉妹ですから。
- - :
< 蓮花と陰に咲く薔薇 > END.