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Transcription
- 薔花:
でも……こんなことして今さら何の意味があるの?
- 薔花:
アタシがいくら足掻いても……アタシの運命は変わらなかった。
- 薔花:
いくら足掻いても……アタシの過去は変わらないのに……
- 薔花:
きっとアタシだけしか生まれなかったとしても、アタシは今と変わらずきっと不幸。
- 薔花:
愛されて幸せになることにも資格が必要なら……
- 薔花:
アタシにその資格はあるの?
- 薔花:
最初から……復讐のために作られたアタシに?
- 薔花:
最初から……悪意で作られたアタシに?
- 薔花:
こんな……血に染まったアタシに?
- 主人公:
- 無事に作戦は終了し、事件の元凶が俺の前にやってきた。
- よく来た。俺がオルカの総司令官だ。ふふふ……
- 主人公:
- 今回は色々と紅蓮達が大変だったので、厳しい態度で出迎えようと思ったが、
みんなの顔を見ると笑ってしまい、変な感じになってしまった。 - 薔花:
……こんなのが司令官……?大丈夫なの?
- C-77紅蓮:
冗談が度を過ぎることもありますが、素敵な人ですよ。
- 主人公:
- こういうことも皆が無事でいてくれたからこそ出来たことだ。
- 主人公:
- もしマングースチームや、作戦に参加した隊員の誰かが死んでいたら、
こんな風に薔花と会うことはなかった。 - 薔花:
まさかこの人間に弱みを握られてるんじゃないわよね?
- 本人の前でよくそんなことが言えるな……
- 薔花:
先に変な真似しないように警告してるのよ。
- 主人公:
- 変な真似なら、するよりされる方が多いと思う……
- 主人公:
- それはさておき、薔花の態度に今まで感じたことのない感覚を覚えた。
- 主人公:
- 通常、バイオロイドは人間に対して無条件に敬意をもって話してくる。
だが、薔花は一人の人格として俺と対等な立場で会話をしている。 - もしかして人間の命令権が通用しないのか?
- 薔花:
あんた馬鹿?アタシはテロを起こすためのバイオロイドよ?
主人以外の命令を聞くように作るわけないでしょ。 - 主人公:
- 言われてみればその通りだ。
- 主人公:
- ラビアタ、アルファ、龍、メイのように最初から自律権、または拒否権が
保障されたバイオロイドはうちにもいる。 - 主人公:
- いいだろう。だったら、俺は一人の“人間”として……
- 俺は最後の、そして最初の人間。オルカの司令官で誰かのお兄ちゃん。
- 薔花:
は?
- そしてまたある時は眷属であり、殿、友達であり、ご主人様…
- 薔花:
……
- 主人公:
- 薔花は口をポカンと開けて俺を見ている。
- 主人公:
- そして、他の隊員たちがクスクス笑い出して、俺も笑ってしまった。
- ただの自己紹介だよ。薔花、君について知りたい。
- 薔花:
……
- 薔花:
アタシは薔花。女帝の猟犬。エンプレシスハウンド所属のサボタージュ専門家。
- 薔花:
女帝の命令に従ってテロを起こし、扇動し、デマを流した。
- 薔花:
……罪のない人たちをたくさん殺した……
- 主人公:
- 「それは人間の命令に従っただけだろう?」と言おうとしたがやめた。
- 主人公:
- 紅蓮も命令に従って罪のない人々を殺した。
- 主人公:
- そして、紅蓮もそれで自分が許されるとは思っていない。
- 主人公:
- だから贖罪の方法を探している。
- 主人公:
- オルカで復元された紅蓮でさえそうなのに……
- 主人公:
- 自らの手で罪を犯した薔花に、今その言葉を言うのは良くないと思った。
- 薔花:
人類が滅亡する直前。女帝はアンヘルを殺せってアタシに命令した。
アタシは女帝の命令に従って世界中を放浪した。 - 薔花:
全然見つからなかったし音沙汰もないってことは、
もうとっくにアンヘルは死んでるんでしょ? - 薔花:
女帝も……
- ……大変だったな。
- C-77紅蓮:
これからどうするつもりですか?
- 薔花:
……分からない。
- 薔花:
無意味に生きてきたアタシに、突然生きる意味が生まれるわけ―
- 薔花:
……いや……意味は……
- 薔花:
……
- 主人公:
- 何かをボソボソと言った薔花はそのまま黙り込んだ。
- 主人公:
- しかし、俺もあの時の薔花と紅蓮の会話は聞いていた。
だから何を思ったのかは見当はついた。 - 主人公:
- 贖罪。
- 主人公:
- だから、俺はそれ以上聞かず、雰囲気を切り替えることにした。
- ふふふ…。今からお前を風呂に入れてやる。
- それからソワンの料理を限界まで食べさせて…
- トドメに、ふかふかの布団に叩き込んでやろう!
- C-77紅蓮:
お風呂に入って、食事をして、ゆっくり休めということですね。
- 主人公:
- 今は少しでも心を休めてほしいと思った。
今まで気を張り詰めていただろうから。 - これからどうしたいのかはゆっくり考えればいい。
- 主人公:
- あとで余裕ができたら、また色々と聞いてみよう。
- C-77紅蓮:
では、行きましょうか、薔花。ひとまずは体を休めて。
そのあと私がオルカ号を案内します。 - 薔花:
……うん。
- 主人公:
- 紅蓮は薔花を連れて艦長室を出ていった。
- 主人公:
- 二人の後ろ姿を見ていると、武器を構えて睨み合っていたのが嘘のようだった。
- 主人公:
- 俺は無事に今回の作戦が終わったことに安堵のため息を吐いた。
そして、すぐに気持ちを切り替える。 - ドクター。通信の解読は終わったのか?
- ドクター:
うん!お兄ちゃん。
- ドクター:
もう会議室にみんな集まってるよ。
- 主人公:
- 会議室に到着すると皆が俺を待っていた。
- お待たせ。
- 主人公:
- 俺は席に座ってドクターに頷く。
- 主人公:
- ドクターがパネルを操作すると、画面に解読されたメッセージが映し出された。
- 通信:
はじめまして。オルカ抵抗軍の皆様。
- 通信:
正体を明かせないことについて、あらかじめご了承願います。
- 通信:
万が一、レモネードオメガがこの通信を解読して、正体を知られてしまえば、
私を含め、決して少なくない数のバイオロイドが死ぬことになります。 - 通信:
本題ですが、現在PECSではオルカ抵抗軍の宣伝を見て、オルカへ合流を
希望するバイオロイドが現れており、その数も日に日に増えている状況です。 - 通信:
しかし、合流しようとしてもオルカに行く手段を確保するのが難しく、
さらにPECS支配圏のバイオロイド達はオルカの宣伝映像を所持しただけで 即決処刑されています。 - 通信:
どうかお願いします。
- 通信:
彼女たちを受け入れてください。
- 通信:
彼女たちにとってオルカは最後の希望なのです。
- 通信:
私を信用してもらうため、PECSの情報をいくつか添付して送信します。
- 通信:
応答は指定の場所へお願いします。
- 主人公:
- メッセージを全部読んだ後、俺はアルファを見た。
- 主人公:
- アルファは静かに頷く。
- レモネードアルファ:
添付されたデータはPECSの機密情報で間違いありません。
オメガの秘密研究所の位置は私も知りませんでしたから。 - レモネードアルファ:
発信者はPECS内でもかなり上層部に位置する人物と思われます。
- 無敵の龍:
罠である可能性はないのか?
- レモネードアルファ:
何が起こってもおかしくありません。
- レモネードアルファ:
しかし、ケストスヒマスを失ったオメガがすぐに行動を起こすとも思えません。
失ったタイミングだからこそ、通信を送ってきたと考えることも出来ます。 - レモネードアルファ:
そして、宣伝工作が効果を発揮しているのは確実です。
- レモネードアルファ:
こういった状況ならオメガはまず、内部の取り締まりを優先して、
一度軍事力を高めることに集中するはずです。 - 無敵の龍:
PECSの上層部と言ったが、心当たりのある人物はいるのか?
- レモネードアルファ:
多くはありませんが少なくもない…といった感じでしょうか。
仕方なくオメガに服従するバイオロイドも多いですから。 - 主人公:
- あの性格だ。恨みを持つ部下がいない方がおかしい。
- レモネードアルファ:
ちょうど今北米に信頼できる部下がいますので、
彼女を使って情報の交差検証をしてみます。 - ラビアタプロトタイプ:
罠ではない場合、どうされますか?ご主人様。
- 主人公:
- ラビアタがそう言うと皆の視線が俺に集中した。
- 主人公:
- そんなの決まっている。
- もちろん、助けに行こう。
- 主人公:
- 宣伝工作を行っている理由を考えれば、救いを求める者を
無視することなんてできない。 - 主人公:
- 希望を与えただけで終わるのではなく、実際に行動を起こしてこそ
信頼してもらえるのだから。 - 主人公:
- いや、違うな……
- 主人公:
- 誰かが助けを求めているのなら、手を差し伸べるのは当たり前のことだ。
- 主人公:
- オルカのみんなと過ごしてきて学んだことの一つだ。
- ラビアタプロトタイプ:
ではご主人様の命令に従い、合流希望者…ではなく、難民と呼んだ方が
正しいかもしれませんね。 - ラビアタプロトタイプ:
次のオルカの目的は難民救助とします。早速準備を開始しましょう。
- 無敵の龍:
そうなると半ばアメリカに乗り込むことになる。となれば、拠点を設置して
それ相応の備蓄と計画が必要だ。時間もある程度かかるだろう。 - 無敵の龍:
幸い、我々がいるヨコハマは拠点化が容易な場所だ。
- 無敵の龍:
まずはヨコハマにいる鉄虫を殲滅する。