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Transcription
- ムネモシュネ:
本区域には「記憶の箱舟」が設置され、滅亡戦争によって補給と情報更新が
中断される直前まで存在したすべての生物の遺伝情報が保存されています。 - ……!だとしたら……!
- 主人公:
- それが事実ならきっと人間の遺伝子もあるはずだ。
- 主人公:
- 驚く俺を見つめるムネモシュネの瞳からは、なんとなく複雑な心境を
感じ取ることができた。 - ムネモシュネ:
……訂正いたします。保存されて「いました。」
- 主人公:
- ムネモシュネが扉を開くと……
- 風が……?
- 主人公:
- 室内であるはずの遺伝子保存区域から冷たい風が吹いてきた。
- 誰かが侵入したのか。
- 主人公:
- 壁に開いた大穴から風が吹き込んでいる。
- 主人公:
- ここからは真っ暗な穴にしか見えないが、外とつながっているのだろう……
- 主人公:
- 本来、この区域にはあらゆる生物の遺伝子が整然と保管されていたはず…
だが、今は…… - ムネモシュネ:
今から約2カ月前、本箱舟に外部勢力が侵入してきました。
- ムネモシュネ:
その勢力を率いていたのは……レモネードデルタ。
- レモネード……!
- ムネモシュネ:
レモネードデルタは配下の「マリオネット」を率いて、本箱舟へ
大々的な攻撃を加えました。 - ムネモシュネ:
本モデルも狭い正門はなんとか守ることができましたが、外壁からの侵入には……
- 主人公:
- ムネモシュネは言い淀むと、俺の方を向いて正面から見つめた。
- ムネモシュネ:
本モデルは箱舟に保管されている遺伝子を維持および管理し、保護する
という使命を果たせませんでした。 - ムネモシュネ:
それに伴い、特級権限を持つ管理者様による廃棄処分の―
- いや、一人では無理だったはずだよ。
- 主人公:
- 視線を下に向けているムネモシュネを慰め、めちゃくちゃに
なってしまった遺伝子保存区域の奥へと足を進めた。 - 見事にぐちゃぐちゃだな……。無事だった遺伝子はあるのか?
- ムネモシュネ:
……レモネードデルタは目的だった識別名「オードリー・ドリームウィーバー」、
「オリビア・スターソワー」、「テイラー・クロスカット」の遺伝子を回収し、 残った遺伝子すべてを徹底的に破壊しました。 - ムネモシュネ:
ごく少数のバイオロイドの遺伝子は回収し、修復することには成功しましたが、
人間様達の遺伝子は手の施しようがない状態でした。 - ……だろうな。
- 主人公:
- 奴らの目的は会長の復活であり、人類の再建ではないからな。
- ムネモシュネ:
修復できたバイオロイドの遺伝子のリストを送信いたします。
- ありがとう。確認してみる。
- ムネモシュネ:
……管理者様。ひとつだけ、お願いをしてもよろしいでしょうか?
- お願い?
- ムネモシュネ:
- ムネモシュネは果てしなく広がる保存区域の奥にある遮蔽扉に視線を移した。
- ムネモシュネ:
レモネードデルタは目的を達成後、
後退しながら一部の「マリオネット」を残していきました。 - ムネモシュネ:
命令を受けていない「マリオネット」はただの人形にすぎませんが、
本来戦闘用でない本モデルとしましては…… - 主人公:
- あの遮蔽扉の向こうに隔離しているということだろうか……
- 主人公:
- ムネモシュネを見ていたら、同じく命令に縛られて、テーマパークから
出られなくなったキルケーのことを思い出した。 彼女もまた鉄虫をどうすることも出来ず、なんとか別のエリアに隔離していた。 - …今までご苦労さま、ムネモシュネ。後は俺達に任せてくれ。
- ムネモシュネ:
……?
- 主人公:
- 不思議そうに目を瞬きさせるムネモシュネに見つめられたら
急に恥ずかしくなってきて、頭を撫でていた手を引っ込めた。 - レモネードアルファ:
旦那様、戦闘部隊が到着しました。
- 了解。PECSのバイオロイド戦闘員か……
- 主人公:
- 幸か不幸か、俺達はまだPECS所属バイオロイドとの交戦経験がない。
- 数は把握できたか?
- レモネードアルファ:
遺伝子区域内に残っている数はわずかです。
- レモネードアルファ:
ただ、箱舟周辺で何体かの鉄虫と相当数のマリオネットを発見しました。
- なんで落伍した兵力がそんなにいる?後退中に何かあったのか?
- レモネードアルファ:
尋問して調べてみます。
- 主人公:
- こんなにも早くその時が来てしまうとは思わなかったが……、
俺の意思は明確だ。 - 主人公:
- 同じバイオロイドだとしても、俺には大切なものがある。
- …なるべく生け捕りにしろ。ただし、味方に被害が出そうな場合は射殺も認める。
- レモネードアルファ:
…承知いたしました、旦那様。