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主人公
- 残酷で冷酷な勝負の世界。そこでの俺は「最強」だ。

Transcription

  1. 主人公:

    - 残酷で冷酷な勝負の世界。そこでの俺は「最強」だ。

  2. システムメッセージ:

    < 敗北 >

    1. …………
  3. 主人公:

    - いや、最強「だった」。

  4. llliIIllILi:

    wwww自分で自分のカウンターアタック食らってるwコード使うから高ランクプレイヤーって思ったのにw

  5. 最強陸軍036771:

    いつのアイテム引っ張り出してんだよ…www

  6. Jkew9588:

    垢バンお願いしま~す。

  7. 主人公:

    - 煽りばかりのチャットウィンドウを閉じ、頭を搔きむしった。

    1. ああぁぁぁぁぁ~…!!好き放題言いやがってぇ~!!
  8. 主人公:

    - スチールラインオンライン……通称「スチオン」……。オルカの隊員達に人気の趣味ランキングがあったとしたら、1位か2位にはなる人気ゲームだ。

  9. 主人公:

    - 以前、隊員達のためにデータをオルカ号のデータベースに保存し、独自のサーバーで運営できるようにしておいた。

  10. 主人公:

    - そして、俺は卓越した状況判断とマップ分析、圧倒的なフィジカルでランキング1位に到達。仕事が忙しいと順位が下がることもあったが……

  11. システムメッセージ:

    < 降格:Diamond 2 >

    1. 嘘だろ……!
  12. 主人公:

    - 記憶の箱舟には当然、スチオンのデータも最新のバージョンまでのすべてが保管されていた。

  13. 主人公:

    - いつも同じバージョンをプレイしていた隊員達にとっては朗報だ。すぐに大規模アップデートが実施された。

  14. 主人公:

    - そして、ちょうど無職になったこともあり、俺は久しぶりにマウスを手にし…すぐに絶望を味わった。

  15. コネクターユミ:

    ……24連敗……あはは……

    1. あああああ~!!!あー!あー!
  16. 主人公:

    - 悲鳴をあげる俺に哀れみの眼差しを向けていたユミが、俺の対戦記録を見た。

  17. コネクターユミ:

    マッチング運がなかったみたいですね……

    1. だよね!?俺悪くないよね!?
  18. コネクターユミ:

    でも、それ以前に……メタに全く……適応できていないのでは……

    1. ………
  19. 主人公:

    - 実際、本当は自分でもよく分かっていた……。昔は突撃を躊躇するチームメンバーも無理矢理ついて来させて勝てていた……

    1. ただ俺は現実(メタ)を否定したかったんだ……
  20. 主人公:

    - 複雑な心境で対戦記録を見ている俺の肩をユミが揉んでくれた。

  21. コネクターユミ:

    私がお手伝いしましょうか?

    1. ユミが?
  22. コネクターユミ:

    はい。ゲームは得意ではありませんが、サーバー管理を担当しているのでアップデートの追加項目や変更履歴はすべて分かります。

  23. コネクターユミ:

    それにデータ管理と分析にも自信がありますので、最適なオーダーとアイテムツリーを―

    1. よろしくお願いしまぁす!!
  24. コネクターユミ:

    えっ……

  25. コネクターユミ:

    は、はい!では早速始めましょうか!

  26. -:

    (37分後)

  27. 主人公:

    - 敵陣営…防御タワーが全て撤去された状態で接敵中。状況は大きく動いた。小柄なユミはアドバイスをするために俺の足の間に座っている。

  28. コネクターユミ:

    本陣です、本陣を攻撃してください!

    1. 全体を対象にしなくてもいいのか!?
  29. コネクターユミ:

    さっき選択したアイテムに追加ダメージがあるので突破可能です!

    1. くっ……!
  30. 主人公:

    - すべてのフィジカルを駆使し、敵のスキルショットを避けた後、敵の本陣を集中射撃。そして、俺のキャラクターが倒れた瞬間……

  31. システムメッセージ:

    < 勝利 >

  32. コネクターユミ:

    わぁ……!

    1. 勝ったああぁぁぁぁぁぁ!!!
  33. 主人公:

    - 24連敗後の1勝。ユミを抱きしめて、込み上げる喜びを全身で噛みしめた。

    1. ああああぁぁぁぁ嬉しい………
  34. コネクターユミ:

    ぷっ。ふふ……そんなに嬉しいですか?

    1. でも……まだまだ先は長い…
  35. コネクターユミ:

    それはそうですね……

  36. 主人公:

    - 感動も束の間、すぐに虚無感に襲われた……。失ったスコア……どうやって取り戻そう……

  37. コネクターユミ:

    あの、司令官…

    1. どうした…?
  38. コネクターユミ:

    あっ……えっと、さっきから言いたかったんですが……とても集中されていたので……

    1. え??
  39. コネクターユミ:

    ……えっと…背中にですね、何度も……あの……あそこが当たって……

    1. ご、ごめん。気付かなかった。
    2. 当たってたか、ちょっと興奮し過ぎたみたいだな。
  40. コネクターユミ:

    ……

  41. 主人公:

    - 気まずくなった空気を変えるため、違う話を振ることにした。

    1. えっと、ユミは、本当に色々知ってるな。
  42. コネクターユミ:

    えへへ、そうですか?知識だけは自信あります。

    1. じゃあ一緒にやらない?俺もアカウント新しく作るから。
  43. コネクターユミ:

    いいんですか?もちろんです!じゃあ私の部屋でやりましょう!

    1. そうしよう。
  44. 主人公:

    - ユミと一緒に部屋へ行き、新アカウントで戦績をロンダリング―ではなく、とにかく新規アカウントを作成した。

  45. 主人公:

    - 24連敗の記録は、墓場まで持っていく。

  46. 主人公:

    - やっと手にした勝利に興奮した勢いで、思わず言ってしまった……。するとユミは笑うでもなく唇を尖らせた。

  47. コネクターユミ:

    またからかって……

    1. え、え?
  48. 主人公:

    - ユミはそう言って俺の方を見もせずゲームのスタートボタンを押す。すぐにゲームが始まってしまった。

  49. コネクターユミ:

    バンピックしちゃってください。

    1. う、うん…
  50. 主人公:

    - 怒っちゃったか……?ユミの様子を窺いつつ、慎重にキャラクターを選択しプレイを始めた。

  51. 主人公:

    - ロード画面が表示され……ユミはクルッと俺に向き直った。

    1. ユミ…?
  52. コネクターユミ:

    はい?

  53. 主人公:

    - 予想に反してユミは笑顔だった。

    1. 怒ってたんじゃなかったの?
  54. コネクターユミ:

    いいえ。司令官のからかいには慣れてますから。その代わり……

  55. 主人公:

    - ユミは両腕を俺の首に巻きつけ、体を密着させた。

    1. ちょ、ちょっと待て……ゲーム始まってる……
  56. コネクターユミ:

    そうですね。頑張ってくださ~い。

  57. 主人公:

    - また負けるわけにはいかない俺は仕方なくマウスを握り、ユミは俺の反応を見ながら小刻みに体を動かす。

    1. うっ……ちょっ……
  58. コネクターユミ:

    えへへ……。私が主導権を握るのって初めてですね……変な気分です……

    1. も、もうすぐレイド戦なんだけど…?
  59. コネクターユミ:

    ふぅ~ん…そうですかぁ……

    1. …………
  60. 主人公:

    - 俺は何故か分からないが……どうしてか分からないが……ゲームに集中できなかった……

  61. 主人公:

    - そのせいでその後7連敗してしまったのだった……。