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Transcription
- 主人公:
- 数日後、情報区域でシステムをいじっていると興味深いものを発見した。
- これは……情報閲覧履歴?
- 主人公:
- Administratorと書かれているから、このIDはムネモシュネだろう。
- う~ん…
- 主人公:
- 思わず周囲を確認してしまった。
- 主人公:
- 何人か隊員の姿があったが、みんな自分達の作業に集中している。
- 良心が痛むが……少しだけ…
- 主人公:
- あの機械のようなムネモシュネがどんな情報を見たのか知りたいという
好奇心が良心を打ち負かしてしまった…… - 主人公:
- 情報閲覧履歴はカテゴリー別に分類されていた。
- 主人公:
- そのうち、AdministratorというIDが閲覧したカテゴリーは
ほとんどが生物‐植物‐花のカテゴリーだった。 それも数万回に渡って閲覧している。 - ……
- 主人公:
- 先日、ムネモシュネの部屋の片隅に
よく手入れされた小さな植木鉢があったことを思い出した。 - 趣味…あるじゃん。
- 主人公:
- 俺は少し嬉しくなり、そのままムネモシュネの部屋に向かった。
- 主人公:
- ムネモシュネはこの前と同じ状態で俺を迎えた。
- ムネモシュネ、花は好き?
- ムネモシュネ:
……
- 主人公:
- 氷のようなムネモシュネの表情に初めて亀裂が走った気がした。
- 主人公:
- しばらく床をグルグルとさまよっていたムネモシュネの視線が俺に向けられた。
- ムネモシュネ:
…理解不能。質問の意図が……
- 偶然、情報閲覧履歴を見た。
- 主人公:
- やはりベッドの枕もとには植木鉢があり、白い花が咲いていた。
- 特に野花に関する情報の閲覧回数が多かった。
- ムネモシュネ:
あ……
- 主人公:
- 俺の視線が向かう先を見て、嘆声とも悲鳴とも聞こえる声を
出したムネモシュネは、植木鉢への視線を遮るように立ち位置を変えた。 - ムネモシュネ:
…再考を要請いたします、管理者様。
- ムネモシュネ:
これは本モデルの業務の妨げにならない範囲で行われた行動であり、
業務記録をご確認いただければ― - え?違う違う。注意してるわけじゃない。
- ムネモシュネ:
ではなぜ本モデルにそんなことをおっしゃるのでしょうか?
- それは……
- 主人公:
- どうしてかと聞かれると、なんて返せばいいのか分からなくなった……
- …なんとなく?
- ムネモシュネ:
…理解不能。あらゆる行動には理由ときっかけ、動機というものがあります。
- 主人公:
- はっきりと警戒心を露わにしているムネモシュネを前に、
どうしたらいいのかと頭を掻いていたが、正直に言うことにした。 - ただ…仲良くなりたくて。
- ムネモシュネ:
…………?
- 花が好きみたいだから、それをきっかけに話をしたかった。それだけだよ。
- 主人公:
- しばらく黙って目を瞬きさせていたムネモシュネが一歩横に移動した。
- ムネモシュネ:
…おっしゃる通り、本モデルはこの「野花」という生物の分類に
大きな興味を抱いています。 - そうなんだ。その花は何て言うんだ?
- ムネモシュネ:
被子植物門の双子葉植物綱キンポウゲ目キンポウゲ科イチリンソウ属アネモネです。
- アネモネ…なんだかムネモシュネと名前が似てるな。
- ムネモシュネ:
…え?
- どうした?
- 主人公:
- 驚きという感情を初めて感じた人の表情というのは、こんな感じなんだろうか?
- 主人公:
- しばらく呆然と俺を見つめていたムネモシュネが、やっと口を開いた。
- ムネモシュネ:
……一度も、ありませんでした。
- ムネモシュネ:
そんな風に思ったことは、一度も……ありませんでした。
- そうか?すぐそう思ったけど。ムネモシュネとアネモネ。
- ムネモシュネ:
……
- ムネモシュネ:
そう、ですか。
- 主人公:
- アネモネ、ムネモシュネと何度か繰り返し呟いたムネモシュネの目は、
微かに笑ったような気がした。 - ムネモシュネ:
管理者様。野花はお好きですか?
- 主人公:
- 前回とは違って、花について話してくれるムネモシュネは少し嬉しそうだった。