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Transcription
- オベロニア・レア:
あ、ご主人様。
- オベロニア・レア:
今日も医務室に行かれるのですか?
- うん。そうだよ。
- 主人公:
- そんな風にしばらくの間、医務室で……正確にはティタニアの隣で
時間を過ごした。 - 主人公:
- 相変わらずほとんど無視されているが、たまに無言で睨んできたり、
冷たいが返事をしてくれることが増えてきた。 - オベロニア・レア:
最近は安定剤の投与量も減りましたし、少しですが姉妹達とも
会話するようになったそうです。 - オベロニア・レア:
本当に……ありがとうございます。
- いや、本当はもっと早くにこうしないといけなかったんだ。
- ダフネ:
レアお姉さま!ご主人様!
- ダフネ?まさか…!
- ダフネ:
ティタニアお姉さまが…!
- ティタニア・フロスト:
はあ、はあ……
- ティタニア・フロスト:
うぅっ……もう、これ以上は……!
- ティタニア・フロスト:
痛い……痛い!…頭が、体が……はあああっ……!
- ティタニア・フロスト:
……………………………
- ティタニア・フロスト:
…あはっ、あはははは………!
- ティタニア・フロスト:
本当に……バカみたい……私にそんなこと許されるはずが……あうぅ……
- ティタニア・フロスト:
…あはっ、そう…そうよ…我慢する必要なんてない……
- ティタニア・フロスト:
全部…殺してしまえば、この女王は楽になる……
- ティタニア・フロスト:
…これ以上、下らない話も、見たくない……顔……。も……?
- やぁ、元気……じゃないか。
- ティタニア・フロスト:
お前は…何をしているんだ?
- 主人公:
- ティタニアが呆然とするのも無理はない。
俺が頭のてっぺんからつま先まで、ぶ厚い防護服…ではなく、 甲冑を着てよろけながら登場したからだ。 - いつもの格好じゃ絶対に行かせないって言うもんだから…
- 主人公:
- そう言って俺はティタニアの前に座った。
- ティタニア・フロスト:
何をしているのかと聞いてるッ……!
- 主人公:
- ティタニア周辺を包み込んでいる吹雪の勢いが一気に強くなった。
- 主人公:
- だが……俺の体には粉吹雪が風に乗って優しく当たるだけだった。
- いつものことだよ。いつも通り俺が隣に勝手にいるだけ。それから、これ―
- ティタニア・フロスト:
そんなもの、必要ない……!
- 主人公:
- ダフネとリーゼから預かった安定剤と、ドリアードが皮を剥いたリンゴ、
それとアクアが用意した毛布が入ったカゴが、雪の上にひっくり返った。 - ティタニア・フロスト:
……こんなもの、必要ない。全部……
- ……
- 主人公:
- 散らばった物を元通りカゴの中に入れて、ティタニアの隣に置いた。
- ここに置いておくから。
- 主人公:
- 改めて座り直し、ハルピュイアに勧めてもらった小説を取り出して
ページを開いた。 - ティタニア・フロスト:
……
- 主人公:
- 黙って俺を睨みつけていたティタニアは、
ゆっくりと膝を抱えて座りこみ、顔を埋めた。 - 主人公:
- 依然として吹雪は吹き荒れていたが、俺の周辺の風はページの端が
ペラペラとめくれる程度だった。 - 主人公:
- びゅうびゅうと風の音だけが聞こえる雪原で、
今にも溶けて消えてしまいそうな声が聞こえた。 - ティタニア・フロスト:
…命令でも、すればいいだろう。
- ティタニア・フロスト:
おとなしく言うことを聞いて、「幸せになれ」と。
そうすればこの女王は……お前の望み通り幸せになるだろう。 - 嫌だ。
- ティタニア・フロスト:
……
- 俺が望むのはそれじゃない。
- ティタニア・フロスト:
…ははっ。じゃあお前の望みは何だ?
- 君が本当に幸せになること。
- ティタニア・フロスト:
だったら命令しろと言っている……!この女王に!余に……!
さっさと幸せになれと! - ティタニア・フロスト:
この苦痛を、望んでもない憎悪を!終わらせてほしいのよ……!
- うん。それでいい。
- ティタニア・フロスト:
何が……?
- そうやって胸の内にしまっていたものを、俺に全部吐き出してくれ。
- ティタニア・フロスト:
……
- 主人公:
- レアから聞いた、ティタニアの本来の性格……もしそれが本当なら……
- 主人公:
- ティタニアは誰かを傷つけるくらいならと、自分の胸の内に
しまい込んでしまうのだろう。 - 主人公:
- それが毒となり、こうして爆発してしまったが……まだ間に合うと信じたい。
- 主人公:
- ティタニアの凍りついてしまった心の中には、きっと姉妹達と一緒に
笑い合って、穏やかに過ごしたいという気持ちが存在するはず…… - 主人公:
- レアなら、きっとそうだから。
- 主人公:
- そして俺が知っているレアなら……誰も傷つけたくないと思っているはずだ。
- はぁ……、苦しかった。
- 主人公:
- 兜を脱いで下に置いた。冷たいが穏やかな風が俺の髪を撫でる。
- ごめん。これ被ってると声がよく聞こえなくてさ。
- ティタニア・フロスト:
…この女王はその気にさえなれば、お前を殺すかもしれないということ……
分かっているのか? - うん。
- ティタニア・フロスト:
じゃあどうして……!
- その気にならないってことも分かってるから。
- ティタニア・フロスト:
……
- 主人公:
- 俺達の周囲に吹いている風は、勢いが強まったり、弱まったりしている。
- 主人公:
- そして、その中心にいるティタニアは、唇を嚙みしめたまま無言で
俺を見つめている。 - ティタニア・フロスト:
……お前という奴は。本当に……
- うん。
- 主人公:
- 全く止まる気配のなかった猛吹雪が、嘘のように一気に止んだ。
- ティタニア・フロスト:
バカ、そのものだな……
- 主人公:
- その言葉と同時に、ティタニアの体は力無く崩れ落ちる。
- 主人公:
- 気を失ったようだが、抱きとめたティタニアの口元には嘲笑のような……
安心したような笑みが浮かんでいた。