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Transcription
- Mr.アルフレッド:
準備は……よろしいでしょうか!?
- 俺が準備することは特にない。
- Mr.アルフレッド:
…そ、そうですか。
- Mr.アルフレッド:
では……アィシェェァ!
- 主人公:
- アルフレッドは奇妙な気合いの声を出して、俺の手を握った。
- Mr.アルフレッド:
ぎ・や・あ・あーっ!あーっ!
- ………
- ペレグリヌス:
プハハハハ!なんだそれ。本当だったんだな。
- これ、俺は全然いい気がしないんだけど……
- Mr.アルフレッド:
私ほどではないでしょう!皮膚の下を虫が這いずるような感覚に
襲われるんですよ! - 皮膚ないだろ…
- Mr.アルフレッド:
それはそうですけど!
- 主人公:
- 話はさかのぼること数分前…いつもに増して大げさに登場したアルフレッドは、
口があったなら唾を飛ばしまくる勢いで話を始めた。 - 主人公:
- 話す場面は端折るが、要約すると俺がオルカのネットワークを
ハッキングしたあの時、俺の手を握ったのに何ともなかったというのだ。 - 主人公:
- それで、タンパク質アレルギーが改善したのかと思い、
試しに触ってみることにしたのだが…… - というかそれって、治るものなのか?
- Mr.アルフレッド:
くうっ…!よく分かりません。
- Mr.アルフレッド:
体ではなく精神的な問題であることは確かなのですが……!
いくらデバッグをしても……! - ペレグリヌス:
それは興味深いな。体を変えてもそれだけは変わらないってことか?
- Mr.アルフレッド:
嘆かわしいことに……そうなんです。
- ペレグリヌス:
マジか?ちょっと俺っちに体見せてくれよ。
- Mr.アルフレッド:
どうぞどうぞ!
- 主人公:
- ペレグリヌスが不思議そうにアルフレッドの体をあちこち見ていると、
俺達の様子を黙って見守っていたグラシアスが何やら神妙な雰囲気で話し始めた。 - グラシアス:
アルフレッド、一つ聞きたいことがある。
- Mr.アルフレッド:
これはグラシアスの姐さん殿!何でも聞いてください!
- グラシアス:
そなたのその体に触覚センサーはあるのか?
- Mr.アルフレッド:
もちろんです!見かけはあれですが、実はこの胴体は私が数十年間かけて
開発した―おうふっ! - ペレグリヌス:
おっ、マジだ。
- Mr.アルフレッド:
痛いじゃないですか!
- 主人公:
- ペレグリヌスが指でアルフレッドの脇腹……のような部分を小突くと
アルフレッドが悲鳴を上げた。 - グラシアス:
では……一度私のセンサーの設定を見てはくれないか?
- グラシアス:
触覚は初めて感じる感覚でな、これが正常なのかどうか私にはよく分からないのだ。
- Mr.アルフレッド:
分かりました!データを送信していただければ、すぐにお調べいたします!
- グラシアス:
助かる。
- う~ん…じゃあ竜の姿の時は感触みたいなのはなかったのか?
- グラシアス:
感じることはできたが、今とは少し違うものだった。
- グラシアス:
感触ではなく、センサーを通した認識というのに近いか。
- ペレグリヌス:
何も感じないと自分が地面に立ってんのか、ブン回した手足が敵に命中したかとか
わかんねぇからな。 - ペレグリヌス:
もちろん視覚センサーや他の方法でも確認できるが、
やっぱこれが一番正確なんだよ。 - 不思議だな……
- ペレグリヌス:
あっ、アルフレッドよぉ。もしかしてそれってセンサーの故障じゃねぇのか?
正確に言うとセンサーから伝わる信号を分析するアルゴリズムが。 - Mr.アルフレッド:
確認してみましたが、異常なしでした…
- ペレグリヌス:
マジか?不思議だな。じゃあバグか何かか?
- Mr.アルフレッド:
くうっ……いつになればこれを克服できるのでしょうか……
- グラシアス:
そう焦る必要はない。いつか必ず克服できるはずだ。
- 精神的な問題なんだろ?もしかして心を鍛えたら変わるんじゃないの?
- Mr.アルフレッド:
……
- Mr.アルフレッド:
……分かりました。今まで面倒くさくて後回しにしてきましたが、
精神修行を始めてみます!! - 面倒くさがってたのか…
- ペレグリヌス:
……
- ペレグリヌス:
ところでよ、相棒は俺達みたいなロボットにも心とか精神とかいうもんが
あると思ってんのか? - もちろん……え?違うの?
- 主人公:
- 確かに…当然のようにアルフレッドに精神がなんだとか言っていたが…
ロボットなんだよな……。ペレグリヌスに言われて初めて気が付いた。 - グラシアス:
盟友は本当に優しいのだな。
- ペレグリヌス:
ハァァァ~…。姐さんはもうどうしようもねぇな。
- ペレグリヌス、お前はどう思ってるんだ?
- ペレグリヌス:
俺?俺は当然…
- ペレグリヌス:
あると思ってる。俺達にも。
- …どうして?
- ペレグリヌス:
だってよ!俺達みたいな鉄の塊にも実は心や感情があるって思う方が
ロマンがあんだろ? - Mr.アルフレッド:
さぁぁぁすがです!わかっていますねぇぇぇ!そう!ロマン!
- Mr.アルフレッド:
まさにそういうロマンある展開があったからこそ!
このMr.アルフレッドが誕生したのであります! - …そうか。確かにロマンはあるな。
- ペレグリヌス:
だろ?
- ペレグリヌス:
それに…人間も感情と思考は俺達と同じ電気信号にすぎないっつう、
つまんねぇ理屈を言うつもりはないが、現にこうして…… 今の俺は感情を感じている。 - ペレグリヌス:
これ以上の説明が必要か?
- Mr.アルフレッド:
くううううっ、実に素敵なお言葉で…
あ。グラシアスの姐さん殿、分析が終わりました。 - Mr.アルフレッド:
何の問題ありませんでした。健康な20代の人間女性の平均的な触覚です。
心配ありません! - ペレグリヌス:
健康な20代の女性……?
- ペレグリヌス:
なぁ……、姐さん……姐さん?姐さ~ん?
- グラシアス:
ふふ、この体は健康な20代の女性らしい。
ということはつまり、私は健康な20代の女性のようなものだ。 - グラシアス:
ありがとう、アルフレッド。
- Mr.アルフレッド:
どういたしまして!
- グラシアス:
…盟友よ、ちょっといいだろうか。
- あっ…
- 主人公:
- グラシアスは恐る恐る俺の頬を手で撫でた。
- グラシアス:
少しずつ……慣れてきているようだ。
- グラシアス:
この感覚にも、そなたの感触にも。
- ペレグリヌス:
……アルフレッド、俺っち達は精神修行でもしに行こうぜ。
- Mr.アルフレッド:
くふぅん、分かりました。
- え?何で?
- ペレグリヌス:
……相棒、よく聞け。
- ペレグリヌス:
お前に実の姉ちゃんがいると仮定する。その姉ちゃんがお前の目の前で
彼氏とイチャついてたらどうする? - う~ん…?よく分からない……
- ペレグリヌス:
そうか……じゃあ…これはどうだ。
- ペレグリヌス:
俺っちかアルフレッドが、突然彼女だって言って
可愛らしい女性型ロボットを連れてきた。 - お、おお……
- ペレグリヌス:
そして、お前が見ている前でそのロボットと絡み合―
- …OK。どういうことか分かった。すまん。
- ペレグリヌス:
わかったならいい。だから続きは俺っち達が行った後でしろってこった。
- ペレグリヌス:
姐さんもあんまりハメ外すなよ~。年考えろ~。
- ペレグリヌス:
いこーぜ、アルフレッド。
- Mr.アルフレッド:
では私はこれで失礼します、グラシアスの姐さん殿!いえ、お嬢さん!
- Mr.アルフレッド:
司令官殿は…
- Mr.アルフレッド:
…こほんっ!んん!くふふ~!
- 主人公:
- 二人がいなくなり、グラシアスと俺の間にはなんだか妙な雰囲気が漂……
…ったと思ったのは俺だけのようだ。 - グラシアス:
ふふ。
- 主人公:
- グラシアスは相変わらず柔らかい手で俺の顔や、体のあちこちを
触ったり押したりしていた。 - そんなに面白い?
- グラシアス:
…あ。
- グラシアス:
す、すまない。私としたことがつい夢中になってしまった……
- …俺も触ってみていいか?
- 大丈夫。
- グラシアス:
…!
- グラシアス:
私の……体をか…?
- うん。俺も気になってたんだ。
- グラシアス:
……
- 主人公:
- 少し考え込んだ後、グラシアスは小さく頷いた。
- じゃあ…
- グラシアス:
あ…
- 主人公:
- 細い腰に両腕を回すと、グラシアスから小さな声が漏れた。
- どう?
- グラシアス:
よく…分からない。誰かに体を触られるのは初めて…だから。
- あ……そ、そうだよな。
- 主人公:
- 妙なニュアンスを感じる返事に動揺してしまった。
- グラシアス:
……もっと触っても、大丈夫だ。
- 主人公:
- 俺の錯覚だろうか……?
口から言葉が出ているわけではないにもかかわらず、 グラシアスの声は妙な熱気を帯びている気がした……。 - じゃあ…続けても?
- グラシアス:
…頼む。
- 主人公:
- その後もしばらく、明らかに金属であるはずの体から伝わる体温と、
柔らかな感触を感じながら…グラシアスの体を撫で回す…… - 主人公:
- そのたびに、グラシアスは恥ずかしがり屋な少女のように
体を震わせたのだった。 - グラシアス:
では…続けてもいいか…?
- うん。
- 主人公:
- 金属であるはずのグラシアスの手は柔らかく、体温まで感じられた。
- 主人公:
- 優しく頭を撫でられているうちに、だんだんと眠くなってきた。
- グラシアス:
眠たいのか?盟友がいいのなら……
- 主人公:
- グラシアスに促されるまま膝を枕にして横になった。
- グラシアス:
…痛かったりはしないか?
- ぜんぜん。
- グラシアス:
…ふふ。
- 主人公:
- 微かな機械音と共にグラシアスの翼が開き、影に覆われた。
- グラシアス:
ゆっくりと休め。私が見ている。
- うん…
- 主人公:
- 髪を撫でる手の感触と、温かな視線を感じながらゆっくりと眠りについた。