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Transcription
- 主人公:
- ある日の真夜中。
- 主人公:
- 俺は森の中を彷徨っていた。
- 確かこの辺のはずなんだけど…
- 主人公:
- 理由は艦長室のドアに挟まれていた一通の手紙のせいだ。
- 主人公:
- 内容は簡単に描かれた地図と約束の時間だけだったが、
一番下に書かれた差出人の名前を見たら納得がいった。 - 主人公:
- このままだと遭難するのでは?という不安が芽生え始めた頃、
生い茂る森の中に空き地を発見した。 - 主人公:
- その空き地の中央にはポツンと置かれたピアノと、
手紙を出した張本人がいた。 - 解体者アザズ:
思ったより早かったですね。
- 解体者アザズ:
少し待っていてください。もう少しで調律が終わりますので。
- あ、うん…でもどうして急にピアノ……?
- 解体者アザズ:
歌を歌うために必要ですから。
- 歌?誰が?
- 解体者アザズ:
私です。
- ここで?
- 解体者アザズ:
はい。あ、もしかして手紙に書いてませんでしたか?
- ……
- 解体者アザズ:
ふふ、ごめんなさい。書き忘れてたみたいです。
- 解体者アザズ:
ちょっと……緊張してるみたいですね。
- 主人公:
- 珍しく恥ずかしがっているアザスを見ていたら、文句を言う気持ちも
どこかへ消えてしまった。 - アザズが緊張するなんて、珍しいな。
- 解体者アザズ:
好きな人に歌を聞かせるんですから、緊張しないはずありません。
- 解体者アザズ:
それからそんな無神経なこと言わないでもらえます?私も女ですので傷つきます。
- あ…ごめん。そういう意味じゃなかったんだけど。
- 解体者アザズ:
ふふ冗談です。別にそこまで気にしてません。
- 解体者アザズ:
司令官が優しくて温かい人だとわかってますので。
- あ…うん…それならよかった…
- 主人公:
- 俺がアザズ節ワンツーパンチを食らってくらくらしている間に
調律が終わったのか、アザズは椅子に座って鍵盤をそっと押した。 - 解体者アザズ:
いい音です。
- 解体者アザズ:
では始めますね。
- 主人公:
- 森に、澄んだピアノの音色が鳴り響く。
夜空の星の光も共鳴するように美しく輝いている…… - 主人公:
- 何が何だか分からないまま、何の前触れもなく始まったピアノの旋律に、
アザズの透き通るような声が重なった。 - 主人公:
- 演奏は完璧だったが、声は少し震えている。
でも、そんなこと全く気にならなかった。 - 主人公:
- 星の光を背景に、微笑みながら歌うアザズは本当に嬉しそうだ……
そして、俺は歌に引き込まれ、この真っ白な世界に俺達たった二人しか いないような錯覚に陥る…… - 主人公:
- ……歌が終わり、小さく息を吐いたアザズはニコリと笑った。
- 解体者アザズ:
どうでしたか?
- …すごくよかった。
- 解体者アザズ:
ふふ、ピアノを改造した甲斐がありました。ピアノの伴奏だけではつまらないので、
私の演奏に反応して自動でMRが再生されるようにしたんです。 - いや……俺は歌がすごく良いと思ったよ。
- 解体者アザズ:
う~ん…
- 主人公:
- アザズは少し困ったように笑みを浮かべながら、鍵盤を撫でた。
- 解体者アザズ:
歌は……正直言うと自信がありませんでした。
- 解体者アザズ:
意外かもしれませんが、私って何かにのめり込むと他の事が見えなくなる性格でして…
ピアノの練習ばかりに集中してしまって、歌のことを完全に忘れていました。 - 解体者アザズ:
しかも司令官に聞かせる歌なのに、メロディーだけで選んで
歌詞を確認しなかったので、別れの歌を選んでいました。 - 解体者アザズ:
本当に…失敗だらけですね。恥ずかしいです。
- 別れの歌には感じなかった。
- 解体者アザズ:
はい…?
- 何と言うか…アザズが歌ってくれた歌としか感じなかったよ。
- 主人公:
- ちゃんと真心を感じたという意味で言ったのだが、
それが上手く伝わったのか、アザズは微笑んだ。 - 解体者アザズ:
司令官、こっちに来てください。
- う、うん。
- 解体者アザズ:
ここに座ってください。
- 主人公:
- 言われるがまま隣に座ると、アザズは俺の手を取って、鍵盤の上に乗せた。
- 解体者アザズ:
一緒に演奏しましょう。
- え?俺は弾いたことないぞ。
- 解体者アザズ:
大丈夫です。鍵盤が光りますから。そこを押さえればいいだけです。ほら。
- おお。
- 主人公:
- アザズの言う通り、ピアノの鍵盤が光っている。
- 解体者アザズ:
光に合わせて鍵盤を押すだけです。
- 解体者アザズ:
ゆっくりと、アマービレで。
- アマービレ?
- 解体者アザズ:
愛らしく、という意味です。
- 分かった。
- 主人公:
- 鍵盤に乗せた指に、慎重に力を入れた。
- 主人公:
- そして、二人一緒に演奏を開始する。
おぼつかないが可愛らしいピアノ演奏が夜の森に鳴り響いた。 - 解体者アザズ:
司令官。
- うん。
- 解体者アザズ:
私、恋愛の才能はまったくありません。
- 解体者アザズ:
いいえ…恋愛だけでなく、人付き合いが苦手なんです。
だから、ずっと…機械やフィギュアと過ごしてきました。 - ……
- 解体者アザズ:
ですから、いつも自分の言葉が他人にどう聞こえてるのか気になって……
その人のことを思って言ったことが真逆に聞こえていたらどうしようと 不安になるんです。 - 解体者アザズ:
ですが……司令官の隣にいる時は不思議とそういう気持ちにはなりません。
- 解体者アザズ:
私が何を言っても、どんなことしても……私の本当の気持ちを分かってくれると
信じてるからでしょうね。 - 解体者アザズ:
ふふ、自分勝手ですよね?私って。
- いや。
- 主人公:
- 確かに最初の頃は戸惑うこともあった、一体この子は何なんだ?と思うことも
あったが、今は違う。 - 主人公:
- 表現が変わっているだけで、実はありのままの気持ちをありのままに
言っているだけだと分かったから。 - 主人公:
- 俺の返事を聞いてしばらく無言で俺を見つめるアザズ。
そして、彼女は少し微笑みながら……口を開く。 - 解体者アザズ:
キスしてください。
- 解体者アザズ:
ん…
- 主人公:
- 月明かりの下でロマンチックな時間が流れる。
こんなシチュエーション、二度と訪れないのではないだろうか? - 主人公:
- どれくらいの時間が経ったろうか……アザズに優しく手を握られた。
いつの間にか、顔に添えていたはずの手が胸の方に移動していたことに 気が付いた。 - 解体者アザズ:
少し我慢してください。続きはお部屋で。いいですね?
- う、うん。俺としたことが…つい。
- 解体者アザズ:
ふふ。大丈夫です。
- 解体者アザズ:
私の部屋に行きましょう。お互いにもっと気持ちよくなれるよう、
色々と準備しておきました。 - …え?
- 解体者アザズ:
冗談です。
- 解体者アザズ:
恋愛には自信ありませんが……そういうことはあまり関係ないと、
司令官から教わりましたので。 - 解体者アザズ:
その代わり……
- その代わり?
- 解体者アザズ:
私の部屋までおんぶしてください。
- よろこんで。
- 解体者アザズ:
ありがとうございます。ドラマで観ていつかやってみたいと思ってたんです。
- 主人公:
- 子どものようにはしゃぐアザズをおんぶして、雪が積もった森の中を
歩いて帰った。 - 主人公:
- 幸い、気持ちよくなれるように色々準備した というのは本当に冗談だった……
- 主人公:
- そして、そんなものがなくても俺たちの心と体は、ちゃんと通じ合った。