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主人公
- 約束の場所に行くと、ダイカが大きな荷物を隣に置いてベンチに座っていた。

Transcription

  1. 主人公:

    - 約束の場所に行くと、ダイカが大きな荷物を隣に置いてベンチに座っていた。

  2. 主人公:

    - ふと悪戯しようと思って、気配を殺してダイカに近づき、隣に座った。

  3. 37式ダイカ:

    ……

  4. 主人公:

    - そっと手を伸ばし、ダイカの手を握った。

  5. 37式ダイカ:

    ふふ。

  6. 主人公:

    - するとダイカは目を開けてこちらを見た。

  7. 37式ダイカ:

    こんにちは。司令官。

    1. お待たせ、ダイカ。何してた?
  8. 37式ダイカ:

    音を聞いていました。

    1. 音?
  9. 37式ダイカ:

    はい、百聞は一見に如かず……あ、これはちょっと違いますね。

  10. 37式ダイカ:

    一緒に聞きますか?

  11. 主人公:

    - ダイカに言われた通り、ダイカの手を握ったまま目を閉じた。そして、耳を澄ます。

  12. 主人公:

    - 送風装置と空調が作り出した風に森の木々が揺れる音が聞こえた。

  13. 主人公:

    - それから、隊員たちの声。

  14. 主人公:

    - 工事の音、出店で呼び込みする声、楽しげな話し声、足音、跳ねたりする音、歌声、笑い声。

  15. 主人公:

    - そしてダイカの声。

  16. 37式ダイカ:

    昔の世界は今よりもずっと……索漠としていました。

  17. 37式ダイカ:

    聞こえる音といえば……戦争の音……爆発の音。

  18. 37式ダイカ:

    戦闘の合間に仲間同士でする会話も……戦闘のことだったり……どこの部隊が壊滅したとかそんな話ばかりでした。

  19. 37式ダイカ:

    戦って生き残ることだけがすべての人生……

  20. 37式ダイカ:

    ですが今は……

  21. 37式ダイカ:

    ふふ。

  22. 主人公:

    - そう言うダイカはとても幸せそうだった。

  23. 37式ダイカ:

    ひと時の平和ではありますが……昔の私からすればこのようなこと……夢のまた夢でした。

  24. 37式ダイカ:

    すべて……誰かさんのおかげなのです。

  25. 主人公:

    - 目を開けて隣を見ると、ダイカが俺を見つめていた。

  26. 主人公:

    - その熱のこもった視線を受けていると、俺は恥ずかしくなって、そっと視線と話題を逸らした。

    1. そういえばその荷物は?
  27. 37式ダイカ:

    私が用意したお昼のお弁当とデザート……です。

  28. 主人公:

    - 俺はダイカの荷物をもう一度見た。

  29. 主人公:

    - パッと見ても相当な量だ……。重さは分からないが、デート中にあれをずっと持ち歩くのは大変なはずだ。

    1. じゃあちょっと早めにお昼にしようか?
  30. 37式ダイカ:

    もうですか?

    1. お腹が空いた。
  31. 主人公:

    - 俺たちは早めの昼食を食べることにした。

  32. 主人公:

    - ダイカが用意してくれたお弁当はとても豪華だった。それに、単に量が多いだけでなく種類も豊富だ。

    1. わ~!作るの大変だったろ?
  33. 37式ダイカ:

    そんなことないですよ。

    1. いや、絶対大変だったと思う。
  34. 主人公:

    - 昔、俺が食堂の茶わん蒸しを卵フライにしようと提案したら、匿名でクレームを受けたことがあった。その時に実際の作り方を勉強して、改めて料理の大変さというものを知った。

  35. 主人公:

    - これを作るのも相当な時間がかかったに違いない。

    1. いただきます。
  36. 主人公:

    - おかずの一つをパクリと頬張る。

    1. 美味しい!
  37. 主人公:

    - 思わず叫んでしまった。

  38. 主人公:

    - ソワンのおかげで色々と美味いものを食べてきた俺だったが、ダイカの料理もかなり美味しかった。

  39. 主人公:

    - 早めの昼食だったのも忘れて瞬く間に完食してしまった。

    1. ごちそうさま、ダイカ。
  40. 37式ダイカ:

    お粗末様でした。

  41. 37式ダイカ:

    お茶でもいかがですか?温かいものと冷たいもの、どちらにいたしましょう?

    1. じゃあ冷たいので。
  42. 主人公:

    - ダイカは茶器を取り出すと、お茶を淹れてくれた。

  43. 主人公:

    - ダイカのお茶を淹れる姿はとても端正で美しく、まるで何かの芸術を見ているようだった。

  44. 37式ダイカ:

    大したものではありませんが……どうぞ。

  45. 主人公:

    - 姿勢を正した方がいい気がして焦ったが、そんな俺を見たダイカは穏やかな笑みを浮かべた。

  46. 37式ダイカ:

    ふふ、作法とかありませんから、気にしなくて大丈夫ですよ……楽に飲んでください、司令官。

  47. 主人公:

    - ダイカに言われ、お茶を飲みながらお菓子を食べた。

  48. 主人公:

    - お菓子もお弁当に負けず劣らず美味しかった。

    1. ダイカがこんなに料理が上手だったとは知らなかったよ。
  49. 37式ダイカ:

    そんな風に褒められたら……どうしたらいいか分からなくなります。

  50. 主人公:

    - ダイカは顔を赤くして視線を逸らしたが、とても嬉しそうだった。