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主人公
- パスタ屋を後にして、俺たちは散策路を歩いた。

Transcription

  1. 主人公:

    - パスタ屋を後にして、俺たちは散策路を歩いた。

  2. 主人公:

    - 散策路はさっきとは違って静かだった。

  3. 主人公:

    - 噴水広場から離れた場所だからというのもあるが、それよりも……

  4. オレンジエード:

    ……

  5. 主人公:

    - さっきまで元気いっぱいだったオレンジエードの口数が一気に減ってしまったからだ。

    1. オレンジエード?
  6. オレンジエード:

    はい、司令官様。

  7. 主人公:

    - 返事には力がなかった。

    1. 大丈夫?
  8. オレンジエード:

    ……

  9. 主人公:

    - オレンジエードはしばらく黙ったままだった。

  10. 主人公:

    - 俺がもう一度オレンジエードと呼ぼうとした時、オレンジエードが口を開いた。

  11. オレンジエード:

    今日の……デート、ものすごく一生懸命準備したんです。

  12. オレンジエード:

    司令官様に最高に可愛いって思ってもらうために宝蓮さんとオードリーさんに手伝ってもらったし、

  13. オレンジエード:

    私が読んだ漫画を徹底的に分析した情報を元に最高のデートコースを組んだ後、さらに何十回もシミュレーションしました。

  14. オレンジエード:

    司令官様に最高の……いいえ、最高では不十分です。

  15. オレンジエード:

    完璧なデートを楽しんでほしくて……

  16. オレンジエード:

    それなのに……

  17. オレンジエード:

    寝坊はするし、約束の時間には遅れるし……楽しみにしてた映画も最悪で……

  18. オレンジエード:

    リサーチしておいたお店は入れなかったし、アルファ様には叱られるし、渾身のコーデも汚しちゃうし……

  19. オレンジエード:

    「今日は司令官様史上とびっきり最高の日になるはず」だなんて言ったのが恥ずかしくなってきます……。

  20. オレンジエード:

    私……最悪だ……。

  21. 主人公:

    - そう言うとオレンジエードはうなだれてしまった。

  22. 主人公:

    - オレンジエードの肩が小刻みに震える。

  23. 主人公:

    - そんなオレンジエードを見ていたら、俺も胸がいっぱいになって……

    1. オレンジエード。
  24. 主人公:

    - オレンジエードを抱き寄せた。

  25. オレンジエード:

    司令官様。

    1. 俺はすごく楽しかったよ。
  26. 主人公:

    - 慰めるために言ったんじゃない。これは本当の気持ちだ。

    1. 映画があれだったから原作を読もうと思えて良かったし。
  27. 主人公:

    - おかげで俺の好きな作品が一つ増えた。

    1. 予定通りの店には行けなかったけど、代わりに行った店も美味しかった。
  28. 主人公:

    - アウローラのワッフルはもちろん、パスタも美味しかった。

  29. 主人公:

    - 服屋では……新しい世界に足を踏み入れそうになったが……

    1. オレンジエードが隣にいてくれたから俺は楽しかったんだよ。
  30. 主人公:

    - だから、うまくいかなくても、多少のトラブルがあっても……

  31. 主人公:

    - 全部ひっくるめて今日のオレンジエードとのデートは楽しかった。

    1. オレンジエードは楽しくなかった?
  32. オレンジエード:

    ……

  33. オレンジエード:

    楽しかったです。

  34. オレンジエード:

    楽し過ぎて……いつも以上に喋ってしまいました。

  35. オレンジエード:

    たまに自分で何を言っているのか分からなくなってましたし……

  36. オレンジエード:

    幸せ過ぎて、自分が何喋ったかあんまり思い出せません……あはは。

  37. オレンジエード:

    いつも漫画を読みながら、私もこんな風にロマンチックなデートや恋愛をしてみたいって思っていました。

  38. オレンジエード:

    でも、いざその状況に直面したら……現実は想像と全然違いますね。

  39. オレンジエード:

    現実は……

  40. オレンジエード:

    最高でした!スリルがありました!ドッキドキです!えへへへっ!

  41. 主人公:

    - オレンジエードは顔を上げて俺を見つめた。

  42. 主人公:

    - オレンジエードの目元のメイクは少し落ちてしまっていたが、彼女の目には嬉しさが満ち溢れていた。

  43. オレンジエード:

    私ったら、大切なことを忘れていました。

  44. オレンジエード:

    デートで大切なことは、どれだけ完璧なデートをするのかではなくて、どれだけ二人で楽しむかなのに……

  45. オレンジエード:

    まだまだ修行が足りなかったみたいですね。恋愛漫画をもっとたくさん読まないと……えへへ。

    1. ふふ。俺も読まないとな。
  46. オレンジエード:

    ホントですか!?じゃあいっぱい貸してあげますから!司令官様!

  47. 主人公:

    - オレンジエードは元気を取り戻して、喋りはじめた……

  48. 主人公:

    - が、すぐに静かになった。

  49. オレンジエード:

    あの…司令官様?

    1. …ん?
  50. オレンジエード:

    あの……私が考えたデートはこれで終わりです。

    1. もう?
  51. オレンジエード:

    いや、えと……厳密に言えば、終わって、ないというか……

    1. ふむ?
  52. 主人公:

    - オレンジエードの声がだんだん小さくなっていく。

  53. 主人公:

    - 俺はよく聞こえるようにオレンジエードに顔を近づけた。

  54. オレンジエード:

    その…分かってるでしょう……?ほら……最後……ですよ……

    1. ……。
  55. 主人公:

    - オレンジエードは吐息交じりに囁いた。

  56. オレンジエード:

    最後まで……お願いします……司令官、様。