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デカルトボイジャー・サッカ
おぬしは“ドリームウォーキング”という言葉を知っているか?

Transcription

  1. デカルトボイジャー・サッカ:

    おぬしは“ドリームウォーキング”という言葉を知っているか?

  2. 主人公:

    - 笠をかぶったAGSはそう言った。

  3. 主人公:

    - ドリームウォーキング…初めて聞く言葉だ。

    1. いや…。夢の中を歩き回る…とか?
  4. デカルトボイジャー・サッカ:

    ふむ。ドリームウォーキングとは他人の夢に入ったり、他人と同じ夢を見ることを言う。

    1. そのせいで俺は君の夢の中に入ってしまってるってこと?
  5. 主人公:

    - そもそもAGSは夢を見るのか?電気羊の夢は聞いたことあるが……

  6. デカルトボイジャー・サッカ:

    うーん、合っているとも言えるし、間違っているとも言える。

  7. デカルトボイジャー・サッカ:

    夢とは人の脳が作り出す抽象的なイメージの集合体であるだけで、絵やゲームのようにどこかでダウンロードできるものではない。

  8. デカルトボイジャー・サッカ:

    つまり、ドリームウォーキングというのはまさに夢物語でそれ以上でもそれ以下でもないのだよ。

  9. デカルトボイジャー・サッカ:

    しかし、科学者や医師の中にはこのドリームウォーキングというものに興味を持つ者がいた。

    1. 科学者はわかるけど医師も?
  10. デカルトボイジャー・サッカ:

    患者の治療に役立つと思ったんだよ。

  11. デカルトボイジャー・サッカ:

    心的外傷後ストレス障害…すなわちPTSDを持った患者を診療する時に最も重要なのは心に傷を負うことになった原因を調べることだ。

  12. デカルトボイジャー・サッカ:

    PTSDに苦しむ人々の中には、無意識のうちに原因となった出来事を“なかったこと”にして忘れる者がいる。

  13. デカルトボイジャー・サッカ:

    しかし、それでも夢の中ではそれを思い出して繰り返し体験し、いつの間にか心の傷を深くしてしまうそうだ。

  14. デカルトボイジャー・サッカ:

    だから、もし医師がそういう患者の夢の中を見ることができたなら……

    1. 原因を特定して治療もしやすくなる。
  15. デカルトボイジャー・サッカ:

    そういうことだ。

  16. デカルトボイジャー・サッカ:

    まぁ、とにかく彼らは長い研究の末に他人の夢を見て、さらに変化させることが出来る装置を作った。

  17. デカルトボイジャー・サッカ:

    それが三安の最新医療機器“ドリームウォーカー”だ。患者の脳波を読み取り、患者が見ている夢を共に体験できるまさに夢の装置!

  18. デカルトボイジャー・サッカ:

    もちろん、完成する直前に滅亡戦争が始まって未完成な状態だが。

    1. つまり…俺は今その装置の中にいるってこと?
  19. デカルトボイジャー・サッカ:

    そういうことだ。

    1. じゃあ、俺と一緒にいた子達は無事なんだな?
  20. デカルトボイジャー・サッカ:

    ああ、そうだな。だが近いうちにその子達とも再会するはずだ。

    1. どうして?
  21. デカルトボイジャー・サッカ:

    マルタ島に来てから、異常な眠気を感じなかったか?

  22. 主人公:

    - サッカの言葉で砂浜でのことを思い出した。

  23. 主人公:

    - 確かにここ数日夜ふかししたけど、それを考慮しても尋常じゃなく眠かった。

  24. デカルトボイジャー・サッカ:

    ドリームウォーカーの催眠ガスを吸ってしまったんだよ。長期間管理を怠っていたせいか、ガスボンベから催眠ガスが漏れていた。そして、そのガスは今マルタ島全体を覆っている。

  25. デカルトボイジャー・サッカ:

    バイオロイドは薬物への耐性が高い。だが、それでも催眠ガスに継続的に曝されていれば眠ってしまうだろう。

  26. デカルトボイジャー・サッカ:

    だから近いうちにその子達とこの世界で再会することになる…ということだ。

    1. …じゃあ早く目を覚まさないと…!
  27. 主人公:

    - みんなが眠ってしまう前に一刻も早くこの島を出て、対策を立てなければ。

  28. デカルトボイジャー・サッカ:

    とまぁ、そうしたいだろうが…ここで問題が発生する。

    1. どういう問題だ?
  29. デカルトボイジャー・サッカ:

    ドリームウォーカーはまだ未完成だと言ったことを覚えているか?

  30. 主人公:

    - 不安が一気に押し寄せてきた……

    1. ……まさか。
  31. デカルトボイジャー・サッカ:

    もうわかったかな?

  32. デカルトボイジャー・サッカ:

    ドリームウォーカーに一度接続してしまった者は、治療が終了するまで自発的に接続を解除することができない。接続解除機能がまだ作られていなかったのだよ。

  33. デカルトボイジャー・サッカ:

    だから…拙者たちは誰かが起こしてくれるまでこの眠りから覚めることが出来ないということだ。

  34. - :

    - 一方、そのころ…

  35. ガラテア:

    何なの!?このAGSたち!?

  36. ガラテア:

    突然ハニーが消えて、急に夕方になって、AGSが襲ってきて…どうなってるの!?

  37. アンフィトリテ:

    ガラテア、後ろに気を付けてください!

  38. ガラテア:

    サンキュー!アンフィー!

  39. メリテ:

    一カ所に集まれ!皆で落ち着いて対処していけば乗り切れる!

  40. メリテ:

    数が多いとは言え、烏合の衆に過ぎん!

  41. アンフィトリテ:

    了解!シア、こっちへ!

  42. サラシア:

    うん!アンフィお姉ちゃん!ヘル、行こ!

  43. ヘル:

    はい、はいぃっ…!

  44. ヘル:

    うぅっ…すみません…急に力が使えなくなってしまって……

  45. ヘル:

    役立たずですみません…、すみません…!もういっそここで死んだ方がいいですよね…そっちの方がまだお役に―

  46. ガラテア:

    そんなこと言うなよ!

  47. ヘル:

    ふぇ…!

  48. ガラテア:

    急に力が使えなくなって怖くなるのもわかるよ!でも、死んだ方がいいとか…そんなこと絶対に言うな!

  49. ガラテア:

    本当に死んだらネオディムたちが悲しむって思わないの?

  50. ヘル:

    ……お姉さまたちが…

  51. ガラテア:

    そうだよ。僕たちも悲しいし、ヘルにそんなことを言わせてしまった僕が何よりも悔しいよ!

  52. ヘル:

    す、すみません……

  53. ガラテア:

    わかった?だったら、背筋を伸ばして!

  54. ヘル:

    せ、背筋を伸ばして…

  55. ガラテア:

    頭上げて!

  56. ヘル:

    頭上げて…!

  57. ガラテア:

    堂々と言う!

  58. ヘル:

    堂々と……

  59. ヘル:

    …堂々と何を言えばいいんでしょうか…?

  60. ガラテア:

    力が使えません!助けてください!

  61. ヘル:

    ち、力が使えませぇん!助けてください!

  62. ヘル:

    …えっと…これでいいんですか?

  63. ガラテア:

    もちろん!ヘルは僕らが助けを求めてても助けてくれないの?

  64. ヘル:

    いえ!助けます…!

  65. ガラテア:

    でしょ?僕たちも同じ、ヘルが急に力が使えなくなったからって見捨てたりしないよ。だって、もう一緒に遊んだ友達じゃん!

  66. ヘル:

    友達…

  67. サラシア:

    そうだよヘル!シアたちが助けるからだいじょうぶ!それにこんな時はもっと「ニコニコ」しないと!

  68. ヘル:

    ニコニコ…ですか?

  69. サラシア:

    そう!危ない時こそもっと笑って、もっと頑張らなきゃってお姉ちゃんたちが言ってたんだ!だからヘルも「ニコニコ」で頑張って!そしたらシアも「ニコニコ」して守ってあげるから!

  70. ヘル:

    危ない時こそもっと笑って…もっと頑張る…

  71. ヘル:

    はい…!力は使えないですけど…まだ杖はあります…!

  72. メリテ:

    うむ!よく言った!

  73. メリテ:

    しかし、何がなんだかよく分からないな。スチールラインが上陸して偵察したと言っていたのに、こうして敵が現れた……

  74. メリテ:

    スチールラインの仕事に手抜かりなどないはず……きっとこれは何らかの事件が起きているに違いない。

  75. メリテ:

    まずは目の前に迫っている敵から処理しよう!そして、提督を見つけて島から脱出するのだ!