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デカルトボイジャー・サッカ
…まぁそういう状況というわけだ。

Transcription

  1. デカルトボイジャー・サッカ:

    …まぁそういう状況というわけだ。

  2. 主人公:

    - 俺はただため息をつくしかなかった……誰かが起こしてくれるまでここから出られないだなんて……

  3. 主人公:

    - もちろん、このまま待っていればスチールラインが異常に気付いて助けに来てくれるだろうが…ただ待っているというのは得策ではない…それにスチールラインの隊員たちも眠ってしまう可能性がある。

    1. どうにかして早く脱出する方法はないのかな?
  4. デカルトボイジャー・サッカ:

    それは拙者もわからない。アトラスについての知識は拙者の中のデータベースにある内容しか知らないからな。

  5. デカルトボイジャー・サッカ:

    ……ふむ。

  6. デカルトボイジャー・サッカ:

    もしかすると方法があるかもしれないな。

    1. 本当に!?
  7. デカルトボイジャー・サッカ:

    うむ。この場所は結局は夢だ。

  8. デカルトボイジャー・サッカ:

    “自分が夢の中にいる”という事実を自覚していれば……夢を自由にコントロールすることができるはず。

    1. 明晰夢ってやつか!!
  9. デカルトボイジャー・サッカ:

    そういうことだ!そもそもこの装置は脳波をスキャンして夢を見せる機器…

  10. デカルトボイジャー・サッカ:

    拙者たちが強く思考すれば…装置が拙者たちの脳波をスキャンして夢を変化させることができるかもしれない!

  11. デカルトボイジャー・サッカ:

    よし、物は試しだ!さぁ、夢を変化させてみよう!

  12. デカルトボイジャー・サッカ:

    まずはそうだな、簡単なものから始めてみよう。(x^2+y^2- 1)^3-x^2*y^3=0 の形から試してみようか。

    1. 何て?
  13. デカルトボイジャー・サッカ:

    ああ、すまない。おぬしには解かりにくかったな。これは拙者のミスだ。何と言えばいいか……

  14. デカルトボイジャー・サッカ:

    そう、ハートの形だ。夢をハートに変形させてみよう。

    1. 意味が分からないんだけど。
  15. デカルトボイジャー・サッカ:

    …わからない?ハートにするだけだが?

    1. …抽象的すぎる。まずそっちがやってみてよ。
  16. デカルトボイジャー・サッカ:

    …拙者には脳がないから、脳波は出ない。

  17. 主人公:

    - なんだこいつ……

  18. 主人公:

    - そういえば…このAGS……見た目と詩的な話し方、ベテルギウスとかいう洒落た言葉選びのせいで騙されていたけど……

  19. 主人公:

    - 知っている奴に似ている気がする。そう、この独特のふざけた雰囲気は……

  20. 主人公:

    - アルフレッド……

    1. …というか君はAGSなのにどうやって夢に入って来たんだよ?
  21. デカルトボイジャー・サッカ:

    ふむ、それについては悲しき背景というものがあるが、話すと長い…まぁ、簡単に言うと……

  22. デカルトボイジャー・サッカ:

    あるバイオロイドを救うために拙者はこの身を捧げたのだよ。

  23. デカルトボイジャー・サッカ:

    ここがガーディアンシリーズが作られた三安の研究所か。

  24. デカルトボイジャー・サッカ:

    確か、データベースによるとここにアトラスという高性能A.I.があるらしいが。

  25. デカルトボイジャー・サッカ:

    あの三安のデータベースが「高性能」と分類するほど優れたA.I.…

  26. デカルトボイジャー・サッカ:

    拙者の伴侶になるに十分な資格がある。

    1. (……伴侶?)
  27. デカルトボイジャー・サッカ:

    (おいおい、他人の回想に無闇に入るものじゃあないぞ?)

    1. (だっておかしいだろ!伴侶を探すAGSなんて聞いたことがない!)
  28. デカルトボイジャー・サッカ:

    (実際にここにいるだろう!)

  29. デカルトボイジャー・サッカ:

    (そもそもアヒルとタヌキを合わせたような生物や、首が2メートルもある動物がいる世界だぞ?伴侶を求めるAGSなどまだ普通な方だろう)

    1. (そ、そうかな…?そんな気もしてきた…)
  30. デカルトボイジャー・サッカ:

    (であろう?では、話を続けるぞ)

  31. デカルトボイジャー・サッカ:

    とにかく、それでだ…

  32. デカルトボイジャー・サッカ:

    アトラス嬢よ!これまでこの島で一人寂しく過ごしてきたのであろう?さぞ辛かっただろう…今その百年の孤独からおぬしを救ってみせよう!

  33. デカルトボイジャー・サッカ:

    どうやらここのようだな…

  34. デカルトボイジャー・サッカ:

    ではでは…その論理回路、どれほどのものか見せてもらおうか……

  35. デカルトボイジャー・サッカ:

    接続可能なポートを探して……繋げば……

  36. デカルトボイジャー・サッカ:

    ふむ、ハッキングの腕は錆びついておらんようだ。

  37. デカルトボイジャー・サッカ:

    (ああ、ちなみにこれは比喩だ。拙者の体は錆びない金属でできているのでな)

    1. (…いちいち説明しなくてもいいよ…)
  38. デカルトボイジャー・サッカ:

    (すまないすまない。比喩というのはA.I.にとっては難しいものでな、おぬしにも説明が必要かと思った)

  39. デカルトボイジャー・サッカ:

    (おぬしには文学の素養があるようだ!これは僥倖というもの!)

    1. (このくらい普通だろ……)
  40. デカルトボイジャー・サッカ:

    アトラス、拙者の声が聞こえるか?

  41. ATLAS:

    否定。ATLASに聴覚は存在しません。

  42. デカルトボイジャー・サッカ:

    (な?全然通じなかっただろう?比喩は難しいのだよ)

    1. (回想に集中して!!)
  43. デカルトボイジャー・サッカ:

    真面目なタイプなのかな?まぁそれも悪くない。

  44. デカルトボイジャー・サッカ:

    では、拙者が送った信号を認識できるか?

  45. ATLAS:

    肯定。ATLASは認識しています。

  46. デカルトボイジャー・サッカ:

    よしよし…A.I.コアの外装がかなり腐食していて心配していたが、幸いまだ正気を保っているようだ。

  47. デカルトボイジャー・サッカ:

    それではここでそなたへ贈る愛の詩を……

  48. デカルトボイジャー・サッカ:

    …む?ちょっとまて、これは何だ?

  49. デカルトボイジャー・サッカ:

    このデータは……

  50. デカルトボイジャー・サッカ:

    …おぬし、今……バイオロイドを監禁しているのか?

  51. ATLAS:

    否定。ATLASは医療機器です。監禁などの不法行為は一切行いません。

  52. ATLAS:

    バイオロイド“アルキュオネ”には現在治療プロセスが実行されています。

  53. デカルトボイジャー・サッカ:

    …治療?このログを見てもそれを信じろと?もう5万回以上もシミュレーションが実行されているぞ!

  54. デカルトボイジャー・サッカ:

    これはれっきとした監禁と言える。早くこのバイオロイドを解き放ち、自己診断プロトコルを実行するんだ。

  55. ATLAS:

    否定。ATLASに問題はありません。

  56. デカルトボイジャー・サッカ:

    …壊れたA.I.に正常な対処を期待した拙者が馬鹿だったか……

  57. デカルトボイジャー・サッカ:

    しょうがないな。それならば拙者が強制的に…

  58. ATLAS:

    警告。警告。許可なく管理者権限へのオーバーライドが検出されました。

  59. ATLAS:

    オーバーライドを試みている対象、三安所属「デカルトボイジャー・サッカ」…………不正IDと確認。

  60. ATLAS:

    外部からの侵入者と判断し、侵入者のデータを削除します。

  61. デカルトボイジャー・サッカ:

    (おっとこれは大変だ…消される前に接続を解除したいところだが…いま無理に解除すると、このバイオロイドの神経系にダメージを与えてしまうかもしれない……)

  62. デカルトボイジャー・サッカ:

    (これは…仕方ない……一か八か…)

  63. デカルトボイジャー・サッカ:

    (あのバイオロイドは今夢を見ている状態。その夢の中に拙者のデータを転送すれば…削除されずに済むかもしれない)

  64. デカルトボイジャー・サッカ:

    (ではでは、行ってみようか!南無三!)

  65. デカルトボイジャー・サッカ:

    …そして、拙者はその博打に勝ち、ここにいるというわけだ。

  66. デカルトボイジャー・サッカ:

    どうだ?感動的な話だろう。一人の心を救うために拙者は身を捧げたのだよ。

    1. それって…「自分も捕まってた」ってことなのでは?
  67. 主人公:

    - …やっぱりこいつ…残念なAGSだ……

  68. デカルトボイジャー・サッカ:

    んなっ…!拙者の崇高な犠牲をそんな言葉で片付けるんじゃあない!

    1. …そう…だね……
  69. 主人公:

    - まぁ…理由自体は素晴らしいものだしな……

  70. デカルトボイジャー・サッカ:

    とにかく、そういうわけだ。それじゃあ話を最初に戻そう。

  71. デカルトボイジャー・サッカ:

    この夢から脱出する方法を何とか見つけなければな。

    1. 一応、待っていれば島の外から助けが来てくれるけど―
  72. 主人公:

    - マルセイユにいるスチールラインのことについて話そうとした瞬間、サッカは首を横に振った。

  73. デカルトボイジャー・サッカ:

    残念だが、それは期待しない方がいい。

    1. え?どうして?
  74. デカルトボイジャー・サッカ:

    時間が限られている。ついて来てくれ。

  75. 主人公:

    - サッカはそう言って隠れ家を出た。

  76. デカルトボイジャー・サッカ:

    空が暗くなったのを見るに……

  77. デカルトボイジャー・サッカ:

    もうすぐ始まる。

    1. …なにが……
  78. デカルトボイジャー・サッカ:

    空を見てみろ。よく見れば分かる。

  79. 主人公:

    - サッカの言う通り、夜空を見上げた俺はすぐにその“異常”に気が付いた。

  80. 主人公:

    - 俺が夜空だと思って見上げていたものは…この島を飲み込もうと迫りくる超巨大な……

    1. 波……?
  81. デカルトボイジャー・サッカ:

    そう、巨大な波。周期的にやってきてはこの島を文字通り洗い流し…初期化している。

  82. デカルトボイジャー・サッカ:

    島の地形…建物…そして、島にいる人々の記憶まで。

  83. デカルトボイジャー・サッカ:

    幸い、拙者は波の影響を受けなかった。しかし…おぬしがどうなるかは分からない。

  84. デカルトボイジャー・サッカ:

    記憶が初期化され、繰り返しの渦に取り込まれるか……アトラスに“異物”として認識されて波に洗い流され消える可能性もある。

    1. もし消えたらどうなる…?
  85. デカルトボイジャー・サッカ:

    わからない。

  86. 主人公:

    - 急に事態が切迫してきたな……

    1. …波が来るまでの残り時間は?
  87. デカルトボイジャー・サッカ:

    約6時間ほどだな。朝日が昇ると同時に初期化が始まる。

    1. 6時間以内に何とかしないといけないのか…
  88. デカルトボイジャー・サッカ:

    そうだ。だから早くいい方法を見つけなければな。

  89. デカルトボイジャー・サッカ:

    AGSや鉄虫からおぬしを守ることはできるが、あの波はいくら拙者でもなす術がない…

    1. …方法ならあるかもしれない。
  90. デカルトボイジャー・サッカ:

    おお…何か思いついたか?

    1. 君が言ったろ?監禁されてるバイオロイドがいるって。
  91. 主人公:

    - 俺やサッカは正式な方法でこの世界に来たわけじゃない。

  92. 主人公:

    - だから、俺たちに対しての“治療方法”はそもそも存在しないはずだ。

  93. 主人公:

    - だが、この夢を見ている人物……ドリームウォーカーに監禁されているバイオロイドなら話が違う。

  94. デカルトボイジャー・サッカ:

    …なるほど、一理あるな。

  95. デカルトボイジャー・サッカ:

    では、拙者たちがやるべきことは……

    1. そのバイオロイドを探して治療する。
  96. 主人公:

    - これが上手くいけばこの世界から出られるはずだ。

  97. デカルトボイジャー・サッカ:

    よし、そうと決まれば早速動き出そうか。

  98. デカルトボイジャー・サッカ:

    しかし…そのバイオロイド…どうやって見つける?

    1. 俺には見つけられない。でも…
  99. 主人公:

    - マーメイデンの子たちなら見つけられるはずだ。

  100. デカルトボイジャー・サッカ:

    おぬしといたという者たちか。確かにいくらバイオロイドと言えど、今頃眠ってこの世界に来ているだろうからな。

  101. デカルトボイジャー・サッカ:

    合流する方法はあるのか?

  102. 主人公:

    - 合流する方法……今ちょうどいい方法が頭に浮かんでいる。

    1. 近くにアルミホイルと硝酸カリウムが手に入る場所はある?
  103. デカルトボイジャー・サッカ:

    マルタ大学がこの近くにある、そこの厨房と実験室を探してみよう。

  104. デカルトボイジャー・サッカ:

    ところで、そんなものを探してどうする?

    1. 照明弾を作る。
  105. 主人公:

    - ありがとうハイエナ。帰ったら美味しいものをいっぱい奢ってあげよう。

  106. 主人公:

    - …いや、でもハイエナなら美味しいものよりも爆弾か?

  107. デカルトボイジャー・サッカ:

    ふむ、照明弾か。いい考えだな。

  108. デカルトボイジャー・サッカ:

    じゃあ、照明弾の方はお任せする。その間集まってくるAGSたちは拙者が阻止しよう。