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Transcription
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- スタジオの外から機械の軽快な音が響いてくる。
タタンタタン、あるいはカシャンカシャン。 - - :
- その音が遠くから響いてくると、彼女は食べかけのパンの缶詰をテーブルに置き、
今日も出番なのだと立ち上がる。 - - :
- AGS用のハンガーラックにかけられている巨大な装甲を装着し、乱雑に置かれた
これまた巨大なドリルランスを手に取った。 - ???:
おはようございます……
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- ある映画の撮影のために作られたバイオロイドである彼女が、
何かを始める時にする挨拶はいつもこれだ。 - - :
- もうすでに何十年と続けてしまっているため、体に染み付いてしまった。
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- 「おはようございます」が朝の挨拶という常識はわかっているが、
特に気にしていない。 - - :
- ……そもそも気にしてくれる世間が消えて久しい。
- ???:
……
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- 正午を回ったあたりだろうか。スタジオのシャッターが音を立てて上がると、
日差しが容赦なく降り注ぐ。 - ???:
うっ……眩し……
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- 彼女は思わず眩しくて目を細める。被っているヘルメットのバイザー部分は
もう壊れてあまり遮光の役割を果たしていない。 - - :
- 相変わらず一定のテンポでこちらに向かってくる機械音の方を見る。
- ???:
……本当によく来るなぁ……。いち、に、さん……
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- 今日は4体の鉄虫が大通りを我が物顔で走ってきていた。
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- その軽快な足取りには羨ましさを覚えることもある。いつも重いブースター付きの
ブーツを履いているからというのもあるが、 - - :
- どこか“殺す”という行為を全力で楽しもうとしているように見えてしまうから。
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- あの鉄虫たちの前に立てば、殺す対象は自分となる。
- ???:
お願いだから通らないでほしいんだけど……
- ???:
でもここを通るってことはスタジオを壊す可能性もあるわけで……
- ???:
うぅ……
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- この鉄虫たちは彼女を狙っているわけではない、
ただ道を通っているだけなのである。 - - :
- 鉄虫たちの目的はおそらくこの道路の先の元繁華街。
いや、そもそも目的などないのかもしれない。 - - :
- では、なぜ彼女は鉄虫に立ちはだかるように大通りのド真ん中に立ったのか?
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- それは……『このスタジオを守れ』という命令のせいである。
- ???:
今日も弱そうだなぁ……
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- 彼女も出来る事なら戦いたくはない。
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- だが、スタジオを守るために全力で戦ってしまう。
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- そして、もう一つ別の理由から死ぬことに強い忌避感を感じている。
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- だから、死が近づくと全力で抗ってしまう。
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- 彼女はこうして死ねず、守ることを強制され、生きている。
果たされない命令を果たし続けながら……