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Transcription
- - :
- 過去、『テンランスタジオ』
- ???:
……
- ???:
- 気が付いたら私は、テンランスタジオの控室で椅子に座っていた。
- ???:
……痛っ……
- ???:
- すでに全身にはゴルタリオンⅧ世のパーツを付けることができる改造が
施されていた。 - ???:
- ……
- ???:
- 自分が誰なのかわからなかった。
- ???:
- 解るのは「自分がゴルタリオンⅧ世の最期を演じるためだけに生まれた」
ということだけ…… - 監督:
これか、伝説の方からこっそり回してもらったバイオロイドは……
こいつも昔は結構人気あったんだけどなぁ……お前、観たことあるか? - ???:
- 誰かが喋っている……どうやら私は人気があったらしい。
- スタッフ:
すみません。実は伝説作品はそんなに観てなくて……
どっちかっていうとビスマルクの方が…… - ???:
- なんだかビスマルクって言葉がダメそうだ。
- 監督:
あ~、お前ビスマルク好きそうだよな。俺も結構好きだよ。
今じゃ「西洋の伝説」って言われてるしな。 - 監督:
でも、そういうのは伝説の会長とかお偉方がいるとこでは言うなよ?
- スタッフ:
やっぱりダメなんですか?
- 監督:
良いものは良いって言ってもいいと思うが、一応伝説からのおこぼれで
作品を作ってるし……ピリピリしてんだよ今は…… - 監督:
あと単純に会長は怖い……機嫌を損ねたらクビか、エキストラをやらされるかだ……
- スタッフ:
ひっ……気を付けます……
- ???:
- そして、会長は怖いらしい……
- 監督:
おい、聞こえるか?バイオロイド。
- ???:
はい。
- 監督:
自分の名前覚えてるか?
- ???:
- そう聞かれて思い出そうとする……知っているはずなのに、
自信満々で答えられるはずなのに……何故かわからなかった…… - ???:
あ……ぅ……
- ???:
- 言葉にしようとすると息が止まるような、そんな感覚に襲われて諦めた。
- ???:
いいえ……わかりません。
- 監督:
チッ……ほんとに全部記憶消してやがる……動けば何でもいいとは言ったけど、
めんどくせぇな…… - ???:
すみません……
- 監督:
謝るな。別にいい。
- ???:
- そう言うと監督は頭をボリボリと掻いて難しい顔をした。
- 監督:
あ~……そうだなぁ……サレナだ。
- ???:
え……?
- 監督:
お前の名前だ。
- スタッフ:
なんでサレナなんですか?
- 監督:
輸送されてきた箱に「S」って書いてあっただろ?それだよ。
- スタッフ:
あぁ……確かに書いてましたね。サクリファイスのSでしたっけ?
- 監督:
作品への捧げものってか?伝説の奴らは良い趣味してるよな?
- 監督:
まぁ、少しの付き合いだが、よろしく頼むぞ。
- サレナ:
はい……。こちらこそよろしくお願いいたします……
- サレナ:
- 私は返事をした。この人は優しい方なんだと思った。
どうでもいいただ死ぬだけの役者に名前をくれた。 - サレナ:
- 私を私として呼ぼうとしてくれてる……そう思うと、こんな状況でも少しだけ
よかったって思えた。 - 監督:
おい、サレナ。
- サレナ:
はい……
- 監督:
お前は今日からラストシーンの撮影のためにフル装備で動く練習をしてもらう。
肝心の本番で失敗しないようにな。そして台本をすべて読み込め。 - サレナ:
動き方はすでにモジュールによって頭に入っていますし、
私にはセリフはなかったと思いますが…… - 監督:
そうだな。だが、お前はゴルタリオンⅧ世そのものじゃない、
後から動きをモジュールで覚えただけのただの大根役者だ。 - サレナ:
大根役者。
- 監督:
伝説のバイオロイドってのはな、本人が本人として生きている。
だから真実味ってのがある。 - 監督:
何をするにしても全てが真実で、本当を生きているからブレがない……
だが、そんな中にお前みたいな付け焼刃な奴が入り込んだらどうなると思う? ……浮くんだよ。 - サレナ:
でも、私は最後のシーンで刺されるだけ……ですよね?
- 監督:
そうだ。今のままならゴルタリオンⅧ世じゃなく、お前が刺される。
- サレナ:
……???
- 監督:
この映画の中でお前だけが本物じゃないんだ。わかるか?みんな必死に人生を
生きている。そこに溶け込む為には必死に演じないといけないんだ。 - 監督:
必死じゃないお前が入れば、Ⅷ世がお前だと必ずバレる。白ける。
真実味が急に胡散臭さに変化する。 - 監督:
死ぬシーンだけだとしても、役者としてゴルタリオンⅧ世の死に方を演じろ。
- 監督:
ゴルタリオンⅧ世になれ……そのためにも練習するんだ。
幸いまだ撮影まで時間がある。本番までに体にゴルタリオンⅧ世を憑依させておけ。 - サレナ:
……
- 監督:
あ~……。何で俺はバイオロイド相手にこんなこと語ってるんだ……
- サレナ:
わかり……ました。
- サレナ:
- ただ死ぬためだけに生まれたと思っていた自分に衝撃が走った。
この人は本気なんだと……こんな私に意味を見出していると。 - サレナ:
- この人が作ろうとしているモノの中に、しっかりと私が組み込まれている。
- サレナ:
- そう思うと自分の中に希望みたいなものが生まれて……。
その瞬間のために生きようって思えた。 - - :
- 一週間後
- 監督:
よぉ、サレナ。スケジュール的に来週が本番になりそうだが、どうだ?
- サレナ:
監督!おはようございます。もうばっちりです!
- 監督:
そうかそうか、台本も……ボロボロだな。
- サレナ:
はい、演じるってこんなにワクワクするんですね。本番が楽しみです。
こんな大役を頂けて……本当にありがとうございます! - サレナ:
- 私がそう言うと、監督は嬉しそうに笑ってくれた。
- 監督:
おう、俺もお前がⅧ世でよかったよ。ありがとう。
- サレナ:
えへへ……。心残りなのは完成した作品が観られないことですけど、
私の演技を世界中の皆さんが見てくれるんですよね? - 監督:
あぁ、俺も全身全霊を込めて作ってるからな。大ヒット間違いなしだ。
- サレナ:
だったら、私も全身全霊を込めて演じます!
- サレナ:
- 私は多分幸せだったんだと思う。人間に必要とされ、目標を持ち、
その演技が世界中のファンに観てもらえる…… - サレナ:
- この世界には人間に当然のように使い捨てられ、感謝もされず、
暴力を振るわれるようなバイオロイドがたくさんいる中で…… 感謝されて認められている私は幸せ者だと、心からそう思った。 - - :
(本番当日、大型スタジオ)
- サレナ:
- 早朝からスタジオに入ってゴルタリオンⅧ世の装備を準備する。
この数時間後には私は殺される。 - サレナ:
あう……
- サレナ:
- 胸の心臓の辺りにレーザーのようなものでマーカーを刻まれた。
ここにモモの刀が突き刺さる。 - サレナ:
- 正直恐怖は全くなかった。楽しみで、人生で一番昂揚していた。
時間が経つにつれ心臓は高鳴る。 - サレナ:
- スタジオには少しずつ人が増え、機材などを黙々と準備している……
みんなが私を撮るためだけに動いている。それだけで無性に嬉しかった。 - 魔法少女マジカルモモ:
おはようございます~!
- ポックル大魔王:
おはようございます……。
- サレナ:
- そして、モモさんとポックル大魔王さんがスタジオに入って来た。
- サレナ:
本物のマジカルモモだ……
- サレナ:
- 今日、私を殺す人。
- サレナ:
- 何というか……よく分からないけど、心臓がチクチクする感じがした……
- 監督:
おう、サレナ。緊張してるのか?胸に手なんか当てて。
- サレナ:
あっ!おはようございます!監督!
- 監督:
おはよう。おっ、もうマーカーも入れたか。
ついに本番だな!あんまり緊張するな、練習通りにやればいいんだ。 - 監督:
お前はモモと戦った後、モモのマジカル真シャイニング突きを受けて、
殺されるシーンを演じることだけに集中しろ。 - 監督:
いいか?真シャイニング突きを最後に受けるんだ。
- サレナ:
はい!
- 監督:
じゃあ本番までリラックスしておけ。
- サレナ:
はい!
- サレナ:
……か、監督!
- 監督:
なんだ?
- サレナ:
今まで……ありがとうございました!
- 監督:
何終わったようなこと言ってるんだよ。これから撮るんだろうが、一発で決めろよ?
- サレナ:
はい、そうでしたね!えへへ……
- 監督:
- 私は最後になるだろう笑顔を監督に向けた。
でも、その笑顔は監督に見てもらえたのか分からなかった。 その瞬間にスタッフの悲鳴がスタジオに響いたから…… - スタッフ:
う、うわあぁあぁぁあああああ!!?
- 監督:
どうした!?
- スタッフ:
外でAGSが―
- スタッフ:
ぎゃあああああ!!
- サレナ:
- 外への扉を開けて叫んでいたスタッフが、何かに掴まれて
外へと引きずり出された。 - サレナ:
- そのあと、銃声が鳴ってたくさんの人の悲鳴がスタジオの外から聞こえてきた。
- 監督:
なんだ!?テロか!?
- スタッフ:
わかりません!
- 監督:
誰も外に出るな!扉を施錠しろ!……サレナ!
- サレナ:
はい!
- 監督:
スタジオを守れ!お前なら出来る!
- サレナ:
わかりました!
- 監督:
モモ!白兎が控室にいる!連れてこい!
- 魔法少女マジカルモモ:
はい!
- ポックル大魔王:
か、監督~!ど、どうなってるんですか~?
- 監督:
俺が分かるわけないだろ!お前たちも何かあったら戦え!!
- ポックル大魔王:
ふ、ふえぇぇぇ……
- サレナ:
- すると、扉の近くにいたスタッフが悲鳴をあげる。
- スタッフ:
キャアアアアァァァァッ!!AGSが扉を突き破って……!
- スタッフ:
ぎゃあああああっ!
- サレナ:
- そのスタッフは暴走した奇妙な形のAGSに引き千切られた。
- 監督:
なんだありゃぁ……
- サレナ:
はぁ……はぁ……。何だったの……あれ……
- サレナ:
- 何とか暴走したAGSを破壊することが出来た。
でも、スタッフの人たちはほとんど殺されてしまった。 - サレナ:
- モモさんとポックルさんは外に飛び出していった白兎さんを追いかけて
スタジオを出ていった。 - 監督:
終わったか……
- サレナ:
- 声がした方を見ると、監督が血だらけで倒れていた。
- サレナ:
監督!?
- サレナ:
- 慌てて駆け寄ったが、監督の体はどこが致命傷なのか分からないくらい
ズタズタだった。 - 監督:
すげぇ…動けてたな……本番もそれで頼むぞ……
- サレナ:
……はい。でも今日は……撮影は無理そうですね……監督のお体を治さないと……
- 監督:
……そうだな……モモ達も…どっか行っちまったからな……
- サレナ:
……
- 監督:
……なぁ……サレナ……
- サレナ:
はい。
- 監督:
俺、何か間違ってたか?……これが映画だったら……
俺が何か間違ったことを……してる、はずなんだよ…… - サレナ:
いいえ……。監督は善い方です。間違ったことなんかしてませんよ。
- 監督:
だよなぁ……。現実ってのは…いきなりこんなことが起こるんだからなぁ……
残酷だぁ…… - 監督:
あ~あ……
- サレナ:
- 監督は少し笑ったと思ったら、悔しそうに唇を震わせた。
- 監督:
……死にたくない……
- サレナ:
監督……?監督……
- サレナ:
……
- - :
- 現在
- サレナ:
夢……か……
- サレナ:
- ここは人間様に貸してもらっている部屋。久しぶりに「監督」という言葉を
聞いたからだろうか、昔の夢を見てしまった。 - サレナ:
- あれから、「スタジオを守れ」という言葉に従って、
モモたちとずっとスタジオを守ってきた。 - サレナ:
…………
- サレナ:
- 正直言うとあの命令はやめてほしかったな……。
せめて「俺を守れ」とかだったならまだ違ったのかもしれない…… - サレナ:
- でも……監督は映画を撮る場所を守りたかったんだなって……
- サレナ:
私はわかってますよ。
- サレナ:
- そう言って、私はベッドを降りた。
- 主人公:
- 俺は映画の撮影をするための作戦会議を行った。もともとこの都市には
補給を目的としてやって来ていたため、長期で居座る気はなかった。 - 主人公:
- だから、撮影も可能な限り迅速に進めていく必要がある。
速度を出すために技術チームには少し無理をしてもらうことになるが、 アルマンが事前に根回しをしてくれていて、話をすると快諾してくれた。 - 主人公:
- そして、フクオカの南方にある工場から定期的に鉄虫がやって来ていることも
判明している。撮影の邪魔をされないためにもその対処をしなければならない。 - 主人公:
- 攻撃準備と撮影の円滑化を図るため、テンランスタジオとその周辺を完全に
確保して基地を構築する。 - 主人公:
- 撮影はもちろんテンランスタジオで行う。やることがかなり多いが、
鉄虫が少ないということで作戦の難易度はかなり下がっていた。 - 主人公:
- しばらく忙しくなりそうだな!
- - :
<あなたの楔にまごころを>2部に続く。