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Transcription
- :
- 韓国。某所―
- パク・ジェミン:
こんにちは、視聴者の皆さん。
「大韓民国の朝」のキャスター、パク・ジェミンです。 - パク・ジェミン:
本日は特別なゲストをお呼びいたしました。
- パク・ジェミン:
最近のバイオテクノロジー分野で話題の……と言えばもうお分かりですよね?
- パク・ジェミン:
<三安産業>のキム・ジソク代表をお迎えいたしました!
- パク・ジェミン:
こんにちは!キム・ジソクさん!
- ジソク:
こんにちは。三安産業のキム・ジソクと申します。
- パク・ジェミン:
最近「人類の限界を超えた」と言われているバイオロイド“ラビアタプロトタイプ”
を発表し、世界中で話題になっています。 - パク・ジェミン:
今回三度目の新作発表となり、世間では様々な意見や懸念の声が聞こえてきます。
そもそもなぜ“バイオロイド”開発に着目したのでしょうか? - ジソク:
キッカケは限界が見えていた医療の発展のためです。
- ジソク:
オリジンダストの持つ無限の可能性は、不治の病とされてきたものを
人類が克服するカギになると信じていました。 - ジソク:
それがこうしてバイオロイドへと繋がり、新たな歴史が切り拓かれようと
しているのですから、その当事者として我々も大きな自信と責任を感じています。 - ジソク:
もちろん世間の皆様からは多くの懸念の声が寄せられているのも事実ですが……
- ジソク:
“エヴァ”はあくまでプロトタイプです。三安はこれに慢心せず、
さらに完成度の高いバイオロイド開発のために研究を日々行っています。 - ジソク:
そして、博識で思慮深い“人間”の皆様…
- ジソク:
歴史というものは繰り返されます。
- ジソク:
過去に産業革命が起きた時はどうでしたか?
- ジソク:
人間が産業の部品として組み込まれた世の中で、権利の平等をいくら主張しても、
見えない階級と人種の壁を壊すことなど出来ませんでした。 - ジソク:
遠い昔から人間の価値は経済活動の中で数字をつけられることによって
やっと可視化し……商品化されてきました。 - ジソク:
本来の尊厳と幸福追求の権利など失って久しいのです。
- ジソク:
バイオロイドは、その矛盾した問題の根本を覆す“しるし”となるでしょう。
- パク・ジェミン:
ですが代表、すでにディープラーニングA.I.が搭載された優れたロボットが
比較的安価な価格で各分野のシェアを獲得している昨今で、 - パク・ジェミン:
人類とほぼ同じと言っていいようなバイオロイドが優位に立てる部分というのは
具体的に何なのでしょうか? - ジソク:
“ロボットにはないもの”……そのすべてです。
- パク・ジェミン:
うーん、その答えは多方面に考えさせられますね……
- パク・ジェミン:
キム・ジソク代表……これは少し個人的にお聞きしたいことなのですが……
- パク・ジェミン:
アダム・ジョーンズ元代表の件は非常に残念です。
- パク・ジェミン:
かつては共同代表として“三安産業”を引っ張っておられましたが、
お二人はどのようにして“三安産業”を起業するにいたったのか、 その始まりをお聞きしてもよろしいでしょうか? - ジソク:
……
- ジソク:
彼とは大学時代の友人……
- ジソク:
いえ、実は幼い頃からずっと一緒で、俗に言う親友でした……
- :
- 過去、ジソクの大学時代。
- アダム:
おー!ジソク!ちょうどよかった!
- ジソク:
おいおい、元気だな。どうしたんだ?野良犬みたいに走り回って。
- アダム:
ほら、俺たちの会社の名前!
- アダム:
三安ってのはどう?<三安産業>。
- ジソク:
ああ……う~ん……
- ジソク:
…最近、疲れてるのか?
- ジソク:
ずっと指導教授のラボに出入りしてるだろう?
- アダム:
どういう意味だよ?
- :
- この数日、アダムは昼夜を問わず研究を続けていた。
やつれた顔と充血した目が疲労具合を物語っている。 - :
- ジソクはポケットから冷たい缶コーヒーを取り出して投げ渡した。
- ジソク:
お前のセンスには敵わないって意味だよ。
- アダム:
お!コーヒー!やっぱり総学生会長様は人間ができてるな!
サンキュー、いただくよ。 - ジソク:
三安か……三つの「安」って意味か?安全・安心……あと一つは何だ?
安眠……? - :
- アダムは缶コーヒーを一口飲んで、ジソクの頭を軽くチョップした。
- アダム:
違う違う、そうじゃなくて。
- アダム:
「世界、国、家庭の平安を願う」っていう意味。
- アダム:
俺達はレイチェルの病気のためにこの世界に飛び込むことを決心したけど、
俺たちの会社は国境も人種も越えて…人類全体に貢献しなければならないだろ? その意志を表したんだよ。 - ジソク:
まぁ、いいんじゃないか?男として生まれたんなら、大きな夢を持つべきだ。
それでロゴはもう決めたのか? - アダム:
ジソク…兄貴が一つ考えたんだから、もう一つは弟が考えるもんだろ?
- ジソク:
…?
- アダム:
…?
- アダム:
お前も“三安産業”の未来の共同代表として仕事しとけって話。
あとで「俺が考えました」ってデカい面できるようにな。 - アダム:
まさか何もせずに俺にタダ乗りする気か?乗るのは車か女だけにしとけって!
- ジソク:
……破廉恥なバカと共同代表として働かなければならないなんて、
やっぱり考え直した方がいいのか……? - アダム:
ほらほら、キム・ジソク共同代表~、前にお前のノート見たけど
いいデザイン考えてたじゃん!なぁ?ロゴ考えてくれよ。減るもんじゃないし。 - ジソク:
は?他人のノートを盗み見たのか?
- アダム:
おいおい、ひどいな……他人とか言うなよ。兄弟だろ?
- アダム:
あ~……じゃあお前が野良猫だったら俺は泥棒猫ってとこか?
- ジソク:
厳密に言えば、お前と俺は本当に他人だろ?
- アダム:
また恥ずかしがってんのか野良猫ちゃ~ん?……うわっ!
- :
- ジソクはアダムのシワの寄ったラボガウンをグッと引き寄せて、
流れるようにヘッドロックをかける。 - :
- そんなことをしていると、周囲からキャーキャーと黄色い声が聞こえてくる。
気が付くと二人の周りには、人だかりができていた。 - アダム:
はぁ……まただよ……。お前はアイドルかよ?
- :
- アダムはそう皮肉って口笛を吹く。
- アダム:
あーあ、ちょっと顔が良いってだけで騙されちゃって……
本性は金の損得ばっか考えてるサイコパスなのにな? - ジソク:
どうぞ続けて?研究費削減してやるから。
- エヴァ:
あら、なかなか面白い話をされてますね?
- :
- ジソクは突然話に割り込んできた落ち着いた声の方を見る。
- :
- そこには豊満なスタイルを隠そうともしないファッションの女性が立っていた。
自信あふれるその雰囲気はやり手のキャリアウーマンのようだ。 - アダム:
あぁ、イヴ!思ったより早く着いたな?紹介するよ。こいつがジソク。
- :
- 疲れでダルそうに喋るアダムの声を聞いたせいか、
彼女の声には教養と優しさがにじみ出ている気がした。 - エヴァ:
お話は彼からよく聞いています。
自然科学学部生命科学専攻のエヴァ・ストロースです。 - ジソク:
そうですか。申し訳ない…私はあなたのことは知らなくて―
- アダム:
ほら!インターナショナル遺伝学会の学術大会にいた人だよ。
真剣な交際を考えているから、お前にも一度紹介したかったんだ。 - :
- アダムは慌ててジソクに耳打ちした。
- ジソク:
なんで今?研究室からあれだけ出てこなかったお前が
急に顔を出したから何か変だと思ったけど…… - エヴァ:
ある程度予想はしていました。アディって自分の話は全くしないものね。
- アダム:
イヴ…ジソクが誤解するような言い方しないでくれよ。
- アダム:
投資資金誘致とかで忙しくて、最近ゆっくり家族と話す時間が
作れなかっただけだから。 - ジソク:
……
- :
- エヴァは渋い顔をしているジソクに握手を求めながら、にっこりと微笑んだ。
- エヴァ:
ジソク君は経営学部ですよね?学術誌に掲載されていた論文 とても興味深かったです。
- :
- ジソクはエヴァの手を握って少し力を込めた。
- ジソク:
よろしく、ストロースさん。<三安産業>のキム・ジソクです。
- ジソク:
新分野に取り組むアダムの情熱を評価してくださり、学界代表に選出できるよう
積極的に支持してくださったことに対し、深い感謝を。 - ジソク:
おかげでエンジェル投資家から目標額以上の投資と後援を
受けることが叶いました。 - エヴァ:
……ふふ。
- エヴァ:
未来志向的な人材を発掘し、社会に貢献するための人的ネットワークを
広げていくのが当財団の主な指針ですから。 - エヴァ:
それにあなたも生命工学副専攻博士号取得と同時に新物質バイオ関連分野で
広く名を知られて評価されてる……逆に支援を申し出ない理由なんてあります? - ジソク:
こんなことを申し上げていいのかわかりませんが……
- :
- ジソクは周囲をわざとらしく見渡して、指でエヴァを手招きする。
そして声を潜め…… - ジソク:
……顔で博士号を取ったって言われてますけどね……
もうウンザリしてます…… - アダム:
何だよ~…俺を仲間外れにするなよ。
- :
- アダムはジソクとエヴァの首に腕を回して、ニヤニヤ笑う。
髪色のせいか、ボサボサの大型犬のようだった。 - ジソク:
ストロースさんなら、こんな奴より好条件の男たちがたくさんいるでしょう?
相当な変わり者だと思われますよ? - エヴァ:
子供みたいに純真なところが何と言うか……
なかったはずの母性を刺激されるというか? - :
- ジソクは甘ったるい雰囲気を感じ、一刻も早くこの場から離れようと思った。
- ジソク:
じゃあ私はそろそろ行くよ。
そうそう、アダム。ほらこれ、三安のロゴ。 - アダム:
さすがキム・ジソク代表!やっぱりあらかじめ考えてたな~!今見てもいいか?
- アダム:
う~ん……
- ジソク:
…三つ目の鳩とかゲーミングPCみたいな配色がよかったとか言うなよ?
- ジソク:
……流石にそんなセンスのやつとはやっていけないからな。
- :
- アダムはブツブツ言っているジソクの頭をチョップした。
- アダム:
「親しみやすさがないと大衆にアピールできない」って耳にタコができるほど
言ってたのは誰だよ? - ジソク:
僕の言葉をちゃんと覚えてたなんて本当に感動的だけど……
それは場合によるだろ、バカ。 - ジソク:
このデザインにはそれなりに意味があるんだよ。
- エヴァ:
へぇ、そうなんですか?どういう意味があるんです?気になりますね?
- ジソク:
真ん中に描かれた顔は眠っているレイチェルを象徴してる。
全てはレイチェルの病を治すために始まったっていう事を忘れないように… そういう意味で入れてみた。 - エヴァ:
レイチェル? アディの妹さんですよね?
- エヴァ:
三安の始まりと終わりにはいつもレイチェルさんが寄り添っている……
とても素敵なロゴだと思います。 - アダム:
良い、良いと思うよ……
- アダム:
でも、そういう意味があるんなら、「安心・安全・安眠」を
モットーにしてもいいかもな? - :
- 二人は目が合うとおかしくなって、クスクス笑いあった。
- アダム:
それにしてもこれ、レイチェルにしては美人過ぎないか?
- アダム:
キレイな顔で呑気に眠ってるよ、まったく……
俺たちがどれだけ心を痛めてるか知りもしないで。 - ジソク:
だから……僕たちが一日でも早く治してあげないと。
- アダム:
ああ、そうだな。
- ジソク:
(もうすぐだよ)
- ジソク:
(本当にもうすぐなんだ。だからレイチェル…)
- :
- 時は戻り、現在。
- ジソク:
…ただ、もう彼について私が言及するのは色々と不都合があるかもしれません。
ですのでこういった質問は…… - パク・ジェミン:
…あはは!そうですよね!では、続いての質問です……
- :
- その日の夕方。
- ジソク:
クソッ…!
- :
- パーティー会場の応接室に入ったジソクは、
そこにいた三安産業の幹部たちを乱暴に押し退けてソファに座った。 - ジソク:
くだらないワイドショーごときに尋問されるなんて!!
- ジソク:
民衆の信用を取り戻すのに、私はどれだけ恥をかけばいい!もうウンザリだ!
- ジソク:
今度こそ間違いないよな?
- バニラ A1:
もちろんです。会長が資本投資の最大の障壁を解消してくださったおかげで
アダム会長が目指していた― - ジソク:
…アダム…会長?正確に呼べ。
- バニラ A1:
申し訳ございません!アダム…前会長が設計した遺伝子モジュールを
完璧に再現できるよう設定し、そのプロトタイプの準備も完了しています。 - ジソク:
あの女にエヴァの所有権が渡ってしまったんだ。
今回のモデルは大ヒットどころか、他と一線を画さなければならない! - バニラ A1:
はい、胆に銘じております。
- ジソク:
あの女…三安の企業イメージを崩壊させただけでは飽き足らず、
私の椅子まで狙うとは…… - ブラック・リリス:
会長、お話中に申し訳ありません……どうやら急いだほうがいいかと。
- ブラック・リリス:
すでにこの会場にまで反対デモが押し寄せています。
- ジソク:
厄介事が次から次に……軍事用プロトタイプの緊急招集はかけたか?
- ブラック・リリス:
はい、すでに。
- ジソク:
まだ改造プロセスが終わってない奴らだ。
さっさと処理させたら即座に現場で廃棄しろ。