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Transcription
- 会長:
それは本当か?
- アンヘル・
リオボロス:
はい、我がマゴ・インターナショナルの<ブラックリバー>は、
割り当てられるはずのオリジンダストを三安産業に全て奪われることになります。 - 会長:
三安はオリジンダストで何をするつもりなんだ?
- 会長:
軍事分野に足を踏み入れるということか?
まったく…金のニオイにだけは敏感なやつらだ! - アンヘル・
リオボロス:
三安に潜り込ませているスパイによると、
最近の動向を見てみるに軍事目的とは断定できません。 - 会長:
ふむ……
- 会長:
軍事への事業拡張でもないのに、あんなものを手当たり次第に調達する理由…
- 会長:
うーむ。三安……存在が“不愉快”だ。
……なぁ? - アンヘル・
リオボロス:
はい、仰せのままに。
- 会長:
そのままスパイを潜入させ…
- 会長:
確実に処理しておくように。
- アンヘル・
リオボロス:
ただ、三安の規模が拡大しているこの時期に企業のトップが殺されれば、
マスコミも騒ぎ、嗅ぎ回るかもしれませんが、そこはいかがいたしましょう? - 会長:
それは私が何とかしよう。
- 会長:
我々は我々のやり方で粛々と蹴落としていくだけだ。
- 会長:
三安を引きずり下ろしたいハイエナどもはたくさんいる。
あとは勝手に群がって、貪り食らってくれるだろうよ。 - 会長:
とにかくミスは許されない。分かっているな?
- 会長:
私の信頼を裏切るなよ。
- :
- 大きな手術を控えて、ジソクはレイチェルと一緒に海を見に行った。
- レイチェル:
わぁー、ジソク!
- レイチェル:
海だよ、本物の海!
- レイチェル:
見てるだけで気持ち良い~!
- ジソク:
ただの塩水の一体何がいいんだよ。
- レイチェル:
おぉ……猫は水が苦手って聞くけど、本当みたいだね~!
- :
- まるで子供のように砂浜を走り回るレイチェルの姿を見守っているジソク。
やれやれといった感じだが、その口元には小さく笑みが浮かんでいた。 - ジソク:
転ばないように気をつけて。
- レイチェル:
ジソクはまだ私が子供だと思ってるの?転ぶわけないでしょ?
- レイチェル:
そんな風に格好つけて立っていないで、こっちに来て!
海水が冷たくて気持ちいよ! - ジソク:
突っ立ってるんじゃなくて君を見張ってるんだよ。
それに、適当に遊んだらすぐに帰るよ。 - レイチェル:
え…?私たち今来たばっかりじゃない……
- ジソク:
許可なしで君を連れてきたことがアダムに知れたら……
明日の朝まで説教コースだよ。 - ジソク:
君も僕も、正座させられて……
- レイチェル:
……うっ……
- ジソク:
まぁほら、今回の手術が無事に終わったら、次は許可をもらって
海辺の街にでも旅行に行こう。な? - :
- 昔から無愛想だったジソクは最近レイチェルに合わせて笑ったりと少しずつ
優しくなってきていた。 彼女もその変化には気が付いており、そのことが無性に嬉しかった。 - レイチェル:
あはは!本当に?約束だよ?
- レイチェル:
ジソクが忙しいのは結局は私のせいなのに……私って本当に自分勝手だよね……
- レイチェル:
そういえば3人で海に遊びに来たことって一度もなかったね。
- ジソク:
…だから手術が終わったらみんなで行こうって言ってるんだよ。
- レイチェル:
ふふふ……うん!さすがジソクだね!
- ジソク:
わかったらそろそろ帰るよ!
- :
- ジソクはそう言ってふさふさした彼女の綺麗な髪を優しく撫でる。
- レイチェル:
はぁ……やっぱり帰るのね。
- :
- レイチェルは頬を膨らませながらジソクのことを上目遣いで見つめた。
- :
- 帰り道、夜の街の雰囲気に当てられて、
二人はいつの間にか肩を寄せて歩いていた。 - :
- 広場がある通りにやって来ると、どうやって根を張ったのかデイジーの花が一輪
ジソクの足元で揺れていた。 - ジソク:
レイチェル、全部上手くいったら…いつか二人で……
- :
- レイチェルはジソクが少しよそ見をしている隙に、
彼が普段好んで着ている綺麗なスーツのポケットに素早く何かを入れた。 - レイチェル:
猫ちゃ~ん?それってデートに誘ってくれてるの?
- :
- 彼女が言うと、デートの申し込みをしているという自覚さえなかったジソクは
耳を真っ赤にして言葉を詰まらせてしまった。 - :
- それを見てレイチェルはジソクの腕をぽんぽんと叩くと、
一瞬飛んでいた意識が戻ってきた。 - ジソク:
えっ……と……どうした?
- レイチェル:
ジソク!ジソク!あそこ!見て!
- レイチェル:
パンケーキ屋さん!
- レイチェル:
お母さんのパンケーキ、美味しかったよね?はぁ、お母さんに会いたいなぁ……
- ジソク:
はあ?他にもっと美味しい料理があっただろ。
- :
- それを聞くとレイチェルはめいっぱいに頬を膨らませた。
- レイチェル:
もー!ひどい!私はお母さんのパンケーキが好きだったの!!
- ???:
お前ら!!!
- :
背後から、アダムの声が聞こえた気がした。
声の雰囲気からして、とてもにこやかに笑っている感じではない。 - レイチェル:
ど、どうしようジソク!!バレちゃってるじゃん!!
- アダム:
あれー?おかしいぞ?なんで野良猫とおてんば娘のニオイがするのかなぁ~?
- ジソク:
(なんだあの小芝居は……)
- レイチェル:
ここにはジソク一人で来た。そういう設定で行こう!ね?
- :
- レイチェルはそう言って素早くジソクの後ろに身を隠した。
- ジソク:
…おい、僕は生贄か何かか?
- アダム:
おー!本当に野良猫がいたぞ~?まったく……
- アダム:
さ・が・し・た・ん・だ・か・ら・なぁ~!!!
- アダム:
心配したんだぞ!!うぅ…ううう……!
- :
- アダムは大人げもなく声を出して泣き始め、
ジソクの後ろからレイチェルが顔を出した。 - レイチェル:
わ、私は……大丈夫だから。ごめん、兄さん……
外に出たいって私がジソクにせがんだのよ…… - アダム:
ジソク。お前も反省しろ。
- ジソク:
僕も?なんで?全部分かってるくせに。
ほらほら。さっさと帰ろ― - :
- ジソクがそう言うと、どこからかものすごいお腹の音が聞こえた。
- アダム:
…?
- ジソク:
…?
- レイチェル:
…………
- :
- ジソクとアダムがその音に驚いて顔を合わせると、
レイチェルの顔はリンゴかと思うほどに真っ赤になっていた。 - アダム:
…プッ!プハハハハ!
- アダム:
そんなにお腹が空いてるのか!いいじゃないか!健康だっていう証拠だよ!
- レイチェル:
ううう…!わざわざそういうこと言わないでよ……
恥ずかし過ぎて今すぐ死にたい…… - ジソク:
僕がパンケーキ買ってきてあげるよ、二人はここにいて。
- レイチェル:
ありがとう!
- ジソク:
味は何がいい?
- アダム:
俺はチョコ!
- レイチェル:
私はイチゴがいい~
- レイチェル:
早くしてねジソク……私、もうお腹が空いて倒れちゃいそう。
- ジソク:
また大袈裟な、すぐ戻ってくるよ。
- :
- この日の夜は何故か不思議と静かだった。
- :
- ジソクがパンケーキを注文しようと店員に声をかけたその瞬間―
- :
キャアアアアアアアアアアッ!
- ジソク:
……!?
- ジソク:
(何だ……?)
- :
- 声がする方を見ると、さっきまでジソクがいた場所に倒れている人が……
レイチェルにそっくりな女性が倒れていた。 - ジソク:
(…疲れてるのか?幻覚が見えてるみたいだ)
- ジソク:
(…いや、だって、レイチェルなはずないだろ、アダムと一緒にいるのに)
- :
- 足が進まなかった。
- ジソク:
(……そんなはずないだろ)
- :
- 頭の中がぐちゃぐちゃになって時間が異常にゆっくりと流れる……
ジソクは見えている情報を正確に認識できなくなっていた。 - ジソク:
…レイチェル?
- :
- その場を遠目に見ていた人たちは、事態を把握して
慌てて悲鳴をあげながら逃げ惑う。 - ジソク:
違う……違うよ……違うよ!
- :
- そして広場からは人が消え、そこにはまるで眠っているかのように
地面に横たわっている女性がいた。 - :
- 顔だけを見れば、よく見慣れた寝顔だった。
- :
- 動かない足を必死に動かして、女性のそばに寄る。
彼女のワンピースは真っ赤に濡れていた。 - ジソク:
違う、違うって……違う…違う違う違う……!!!
- :
- 血が溢れ出ている彼女の胸を手で必死に圧迫する。
- :
- ジソクの手はすぐに血で濡れて、その行為が意味を成さないことを
嫌でも悟らせた。 - :
- そして彼女の肌に残っていた温もりは、だんだんと冷めていく……
- ジソク:
め、目を開けて……君は…本当に……
- ジソク:
いい大人が…こんなイタズラやめてくれよ……
- ジソク:
ああ……ダメ、ダメだろ!まだダメだって……!!
なぁ……レイチェル……返事してくれ…… - :
- 周囲の音は一切聞こえなくなり、ジソクはただ彼女が返事を……
声を出してくれることを祈り、待ち続けた。 - :
- 彼女は―
- :
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- :
- 静寂の中で、永遠の眠りに落ちた。
- :
- そうやってその日、レイチェルは死んだ。