シーンビューアの使い方
- 背景画像・セリフ下のNEXT・選択肢をクリックでセリフ送り
- 過去のセリフの選択肢・BACKをクリックでログジャンプ
Transcription
- :
- 2052年、アダム達と言い争った後、空の病室。
- ジソク:
くそ!!
- ジソク:
何も知らないくせに…
- :
- そう言ってジソクは部屋の壁を殴りつける。
- :
- ジソクはいつもこうやって傷を増やし、その拳には傷が絶えなかった。
- :
- 誰かが病室のドアをそっと開ける。
- :
- アダムだ。
- アダム:
…ジソク、やっぱりここに来たか。
- :
- ジソクはアダムが自分の手を見ていることに気が付き、
慌てて傷だらけの拳を隠した。 - ジソク:
精神病患者の診察にでも来たのか?
- アダム:
……
- ジソク:
今まで楽しかっただろう?僕の戯言を聞いて面白がってたんだろ!?
- ジソク:
僕をそうやって馬鹿にし続けてきたんだろ……なぁ?
- ジソク:
黙ってないで何か言ってみろよ!
- ジソク:
なぁ、お前から見て僕の人生はどうだった?クソだろ……?
クソ過ぎて面白いだろ! - ジソク:
僕が何をしたっていうんだよ…
- ジソク:
なぁ…
- :
- ジソクは苦しそうに笑いながら続ける。
- ジソク:
何が兄貴だ……人をこけにして、笑って、欺いて……
- ジソク:
……異常だろ……
- ジソク:
ふん……僕みたいな奴を拾って兄弟なんて言い出すやつがマトモなわけないか。
- ジソク:
あぁ……悪い悪い。頭がおかしいのは僕だった……
- :
- ジソクが言葉を吐き切ると、ずっと黙っていたアダムはゆっくりと口を開いた。
- アダム:
…
- アダム:
…ジソク。
- アダム:
俺達はやるだけやった。レイチェルもお前に感謝してるはずさ……
俺の妹だからわかる。 - アダム:
もう解放してあげよう。
- ジソク:
解放?何から?
- :
- ジソクはまさに狂ったように笑い始めた。
- ジソク:
はははは!ここまで来て言う言葉が解放???
- ジソク:
…解放してやろう???
- ジソク:
はは!あははは!
- :
- そしてジソクは部屋の入口に立っているアダムに一気に近づき、
胸ぐらを掴んだ。 - ジソク:
お前は何を言ってるんだ?
- ジソク:
お前……
- ジソク:
もう一度言ってみろよ…
- ジソク:
なぁ……
- ジソク:
もう解放してやろう?
- ジソク:
お前の妹が死んだんだぞ……
- ジソク:
なのに、そんな…馬鹿な言葉が兄の口から出てくるのか?
- ジソク:
そもそも俺たちがこれを始めた理由は……
- ジソク:
レイチェルの病気を治すためだっただろうが!!
- アダム:
……
- ジソク:
まただんまりか……
- ジソク:
お前はいつもそうだ……!
- ジソク:
都合が悪くなったら、すぐに黙り込む……!
- ジソク:
何とか言えよ!!
- アダム:
……
- アダム:
レイチェル…
- アダム:
…確かに俺はレイチェルのためにこの道を進んだ。
- ジソク:
だったら…!
- アダム:
でも俺とお前は違う。
- アダム:
お前はレイチェル一人のことしか考えていない。
それ以外のことはただの手段だと思ってるだろ。 - アダム:
俺やエヴァのことまで……
- アダム:
……何か間違ったことを言ってるか?
- ジソク:
……!
- :
- ジソクはアダムの胸ぐらから手を放し、廊下の壁に寄りかかって笑い始める。
- ジソク:
くくくく……呆れる。
- ジソク:
お前こそあんな“虫”のことを自分と同列に扱って……頭大丈夫か?
- アダム:
…!!!
- アダム:
…ジソク!!言葉には気を付けろよ……!
- ジソク:
何か気に障ったか?
- :
- 今度は逆にアダムがジソクの胸ぐらを掴んで、乱暴に壁に叩きつけた。
- アダム:
おいっ!!
- アダム:
お前こそもう一度言ってみろ!!
- アダム:
あんな“虫”!?
- アダム:
俺の妻を……
- アダム:
エヴァはお前にとってそんなものになってしまったのか!?
- ジソク:
あのな……何か勘違いしていないか?
- ジソク:
俺はお前の女を同列の人間として見たことはない!一度もな!!
- ジソク:
あれはただレイチェルの病気を治すために実験台に載せたモルモット、
- ジソク:
それ以上で、それ以下でもない。
- アダム:
……!!!
- ジソク:
最初からあの実験は“レイチェル”のためだけに考案されたもので、
お前の女のためなんかじゃない。 - ジソク:
それはお前の方がよく分かっていたはずだ!!
- ジソク:
あの時、あのままじゃ失敗すると予想したお前はどうした?
- ジソク:
あの女のためだけに実験を練り直し、新たな方法を作り出した。
- ジソク:
そこに注ぎ込んだ時間と金は誰が補償してくれるんだ?
- ジソク:
あの女は……僕の願いを台無しにした邪魔者に他ならない。
- ジソク:
贔屓目に見てやっても、アレはただの三安の実験体一号だ。
- アダム:
……最悪だ。
- アダム:
最悪だ!最悪過ぎて、お前との記憶を全て消し去ってしまいたいくらいだ!
- アダム:
レイチェルに恥ずかしいと思わないのか!?
- アダム:
お前は異常だ!こんなの…こんなのレイチェルが浮かばれない……
- ジソク:
…おい。
- ジソク:
浮かばれない?お前が勝手にレイチェルの死を決めるな。
- アダム:
じゃあ、生きてるのか?
- アダム:
死んだだろ!!!
- ジソク:
……
- アダム:
もう耐えられない!ジソク、お前の妄言にはもうウンザリだ!!
- アダム:
お前はただ自分を楽にするためだけに現実を否定しているだけだ!
- アダム:
…むしろ俺はレイチェルがお前を好きだったって事を否定したいよ。
- :
- ジソクは込み上げる怒りに耐え切れずアダムに飛びかかった。
- :
- 二人は床に転げ、揉み合う。
- :
- ジソクはアダムの顔面に拳を何度も撃ちこみ、胸ぐらを掴んで叫んだ。
- ジソク:
答えろ!
- ジソク:
レイチェルが死にかけていたあの時、お前は何をしていた!!
- アダム:
……
- ジソク:
お前の大事な妹が冷たくなっていく間、お前は何をしていた……!!
- ジソク:
どうして!あの時いなかった!
- アダム:
……
- :
- ジソクの興奮した声はがらんとした廊下に響き渡った。
- ジソク:
自分は何も間違ってないんだな?お前は正しいんだな!?
- ジソク:
自分だけは正しいと思い込んでるだけだろ…
- ジソク:
いまさら僕の言葉を咎める…?
- ジソク:
僕はむしろお前のような善人面の人間に吐き気がする…!
- ジソク:
お前からすれば僕は自分の女を虫扱いするクズに見えるだろう!
- ジソク:
だが、お前はどうだ?自分の妹の死に対して疑問も、罪悪感も、危機感すら
持っていないだろうが!! - ジソク:
それなのに平気な顔をしているお前が怖くてたまらないよ!!!
- アダム:
……
- :
- アダムは何も言い返せず、ジソクから目を背けた。
- :
- 二人の間に重い沈黙が訪れる。
- :
- アダムは袖で鼻血を拭い、口に溜まった血を吐き捨てた。
- アダム:
…ジソク。
- アダム:
はぁ……ジソク。
- アダム:
俺達はもう違う道を歩いてる……
- アダム:
お前が空の病室をずっと借りているのも…
- アダム:
オリジンダストを大量に手に入れるために会社の金を横領していたのも…
- アダム:
それすら足りず、さらに金に執着していくのも……
- アダム:
見ないフリをしてきた……
- アダム:
お前が何をしようとしているのか聞き出すより…
- アダム:
それでお前の心が少しでも楽になるのならって……
- アダム:
レイチェルのことを乗り越えて、以前のお前に戻ることができるならって……
- アダム:
少なくとも俺は…お前を……
- アダム:
兄弟以上に思っていたから黙って待ってたんだ。
- アダム:
お前を信じてたから、お前がどんな選択をしても俺はお前の味方でいようって!
- アダム:
でも、今はもう耐えられない。
- アダム:
お前の言ってた通り、俺たちは最初から兄弟でも家族でもなかった。
- アダム:
ただの他人だ。
- アダム:
でも、お前の人生の邪魔にはなりたくない。
だから、ここからはそれぞれの道を歩いていこう…… - アダム:
…俺は三安を離れる。
- ジソク:
……!
- :
- アダムのその言葉はジソクにとっては予想外だった。
- :
- 言いたいことを全て吐き出したアダムは立ち上がり、ジソクに背を向けた。
- ジソク:
待て…
- ジソク:
待てよ…!!!
- :
- ジソクは慌てて立ち上がり、大股でアダムを追いかける。
- ジソク:
お前が今三安を去ればどうなるか分かっているのか?
- ジソク:
お前の大事な缶詰女が何事もなくカメラの前に立てているのは
誰のおかげだと思っている? - アダム:
お前……!!!!
- ジソク:
アダム、お前は知ってるだろう。
- ジソク:
バイオロイドの存在を否定する抗議団体の奴らや…
- ジソク:
お前たち夫婦に向けられる世間の目…
- ジソク:
お前たちの私生活はメディアの格好の餌食だ。
- ジソク:
今は三安という傘に守られているから…それを感じることはないだろう。
- ジソク:
三安を…俺のもとを去って、お前ひとりでエヴァを守れるのか?
- アダム:
……
- ジソク:
なぁ?
- ジソク:
レイチェルと同じことを繰り返していいのか?
- ジソク:
私たちで作り上げた三安まで敵に回す必要はないだろ?な?
- :
- アダムは目をギュッと閉じる。
明らかに脅迫ではあったが、確かにジソクの言うとおりだった。 - アダム:
……
- アダム:
俺も辛い……本当に辛いんだよ……ジソク……
- アダム:
もう決めたんだ……
- アダム:
……ジソク、俺の家族の名前を二度と口にするな……俺の名前もだ……
- アダム:
もうこれで終わりだ。ジソク。
- :
- アダムの表情は自身の無力さを悔やむように悲痛に歪んでいた。
- :
- そうやってアダムは再びジソクに背を向けて歩き出した。