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Transcription
- 静かな艦橋。端末から目を離して伸びをすると体の節々が悲鳴を上げた。
- ちょっと休憩するか…。
- 滅亡した世界でも時というのは流れていくものだ。
- 鉄虫にも年末という概念があるのだろうか、
ここ最近奴らに大きな動きはなかった。 - それはとてもいいことなのだが、多くのバイオロイドを率いる司令官として、
やることはまだまだ山積みだ。 - 押し寄せてくる決裁待ちの各種書類は、どれだけ片付けても終わりそうにない。
- 指揮官バイオロイドたちがある程度処理してくれていたのに
まだこんなにあるのか… - 凝り固まった肩や首を解して、仕事を再開しようとすると誰かが近づいてきた。
- コンスタンツァS2:
ご主人様、疲れたご様子ですが、少しお休みになられてはどうですか?
- コンスタンツァS2:
病気にでもなってしまったら大変です。
- …そんなに疲れてそう?
- コンスタンツァS2:
いえ、ずっとご主人様のお世話をしてきた私だからわかる程度ですが…。
- 主人公:
- コンスタンツァが端末を覗き込んで、画面を埋め尽くさんばかりの
文字の羅列に溜息をつく。 - コンスタンツァS2:
こんな量をおひとりで抱え込まないでください…
- ごめん。
- コンスタンツァS2:
謝るくらいの自覚があるならお部屋で休んでください。
残りの仕事は私の方で片付けておきますから… - 主人公:
- 反射的に「大丈夫だ」と断ろうとしたが、
コンスタンツァの心配そうな顔に言葉を飲み込む。 - …わかった。少しだけ休んでくるよ。
- コンスタンツァS2:
はい、ご主人様。
- コンスタンツァS2:
ごゆっくりお休みください。
- あくびを何度も噛み殺しながら艦長室に向かう。
- 主人公:
- いざ休もうと意識すると急にベッドが恋しくなってきた。
- ドクター:
お兄ちゃん、お疲れ様~
- うん。ドクターもお疲れ~
- 主人公:
- いつものように隊員たちと挨拶を交わしながら通路を歩く。
- 主人公:
- とりあえず部屋でひと休みして、そのあと次の仕事は…
- 主人公:
- ああ、偵察に出ていたカーンに何か異常はなかったか確認しないとな…
- 主人公:
- それにクリスマスだし、いつも苦労をかけている隊員たちの為にも
何かプレゼントを準備… - …ん?
- 主人公:
- さっきのアレはなんだ…?
- ドクター:
お姉ちゃんたち、お疲れ様~
- 主人公:
- ドクターによく似たバイオロイドが俺とすれ違った後、
他の隊員たちと挨拶を交わしている。 - 主人公:
- 声が微妙に変わった気もしなくもないけど…それに位置は違うがあの三つ編みは明らかに…
- ドクター…か…?
- ドクター:
うん?どうしたの~?お兄ちゃーん?
- ……
- 主人公:
- 振り返ってわざとらしく笑みを見せるバイオロイドはやはりドクターだった…。
- 主人公:
- こいつだけ10年分くらい一気に成長したように見えるんだが…?気のせいか?
- ドクター:
どうしたの~?人を呼び止めておいて…ぷ…
ププ… - ドクター:
ぷはははっ!笑うの我慢できな~い!そう!ついに成功~!
大人になったドクターだよ~! - ドクター:
お兄ちゃん、お兄ちゃん。
私どうかな?感想を聞かせて?は~や~く~! - 主人公:
- ドクターがこれ見よがしに胸を張る。
そのせいでなんとか服に収まっていた肉が満を持して外へと溢れ出ようと… - うおぉ!?おー!研究とか言ってたアレか!
- ドクター:
え~?お兄ちゃん、目を逸らさないでよ~私大変だったんだよ~!?
- ドクター:
身長もこーんなに伸びたんだよ~?
- そ、そうか~!オオキクナッタナ~!ドクター!
- ドクター:
ぐへへ、それじゃあ遠慮なく…
- んじゃ、これからも頑張って!俺はこれで…
- ドクター:
ほえっ!?お兄ちゃん!?
- 逃げろ!これはマズイ!このまま流れに任せていたら絶対にマズイことになる!
- ドクターには悪いけど無理矢理話をぶった切って、すぐさま逃走を開始する。
- 背後から追いかけてくる不吉なスリッパのペタペタペタペタペタペタという音を
必死に無視して艦長室に逃げ込んだ。 - ドアが開くとそこには見慣れた艦長室ではなく、全体的に見慣れぬふかふかとした部屋が…
- な、何だ!?これは!
- 立て続けに起きる衝撃的な出来事に頭がパンクし、俺はぼーっと立ち尽くす。
すると追いついたドクターが近づいてきた。 - ドクター:
サプラ~イズ!えへへ~!いつも私たちの為に頑張ってくれてるお兄ちゃんへの
プレゼントだよ~! - ドクター:
デザインは私とフォーチュンお姉ちゃんでやったけど、
コンスタンツァお姉ちゃんや他のお姉ちゃんたちも手伝ってくれたんだよ? - ドクター:
いひひ~!どう?感動した~?したよね!?だったら…そのあとは感謝の…ほよ?
- 主人公:
- 頭を撫でてあげるとドクターの目が丸くなった。
- うん、本当に嬉しい。ありがとう。
- 主人公:
- クリスマスの雰囲気で飾られた部屋。
- 主人公:
- 隅々まで丁寧に飾ってくれているのを見ていると
不思議とみんなの気持ちが伝わってくるようだった。 - すごく、嬉しい。感動してるよ。
- ドクター:
ふっふーん、えへへ…
- ドクター:
お兄ちゃん、お兄ちゃん。そんなとこに立ってないで奥へ奥へ~。
このソファーすっごくふわふわだよ? - 主人公:
- ドクターに手を引かれてソファーに座る。
ドクターは当然のように俺の膝の上に座る。 - 主人公:
- 以前のドクターとは全く異なる重みと香りに理性が持っていかれる。
- ドクター:
いひひ、いいねいいね…
- 主人公:
- ドクターは俺に身を寄せてくる。迫る大人ドクターの背中…。
更なる理性への危険を感じ、急いで上体を反らす…。 そのせいで俺の体はソファーに深く沈みこんでしまった。 - そ、それで?その研究とやらは終わったのか?
- 主人公:
- 墓穴を掘らないよう慎重に質問しながらドクターの体を観察する。
- 主人公:
- バイオロイドの骨格をこれほど簡単に成長させられるなんて、
ものすごい大発明なのに当のドクターは特に大したことでもなさそうな様子…。 - ドクター:
ぜーんぜん終わってはいないよ?まだ少し不安定だし。量産はまだ難しいし…
- ドクター:
今回は急いでたから自分に使ったけど、本当はもっと臨床試験しないといけないから…
- 主人公:
- いつの間にか博士モードになったドクターがペラペラと説明をし始めた。
よし、計画通り。 - ドクター:
実際、私たちの骨格を成長…というか交換する技術は既にあるでしょ?
- ドクター:
でも、あれって工程が複雑で面倒くさいしコストも時間もかかるしで、
それをある程度簡略化してみたの。 - ドクター:
お薬をぐいっと一本飲めば、あら不思議~!変身出来ちゃったってわけ~
- ドクター:
味も色々用意するつもりだよ。今回はイチゴ味にしたんだけど、
まぁ思ったよりは美味しかったかな? - 主人公:
- 目をキラキラ輝かせながら熱心に説明してくれるドクター。
- 主人公:
- 以前までならただただ可愛いだけだったのだが、
今は知的な美女のオーラを醸し出している…。 - ドクター:
初回の臨床試験に成功したとは言え、本来の完成品までは
まだまだ先は長いよ~? - ドクター:
この研究が完成したら…あ、今は言えない。
お兄ちゃんをまたびっくりさせなきゃいけないもんね~ - 主人公:
- いひひと笑うドクターのほっぺを、いつもの調子で摘まもうと手を伸ばしたが、
躊躇ってしまった…。 - 主人公:
- 姿形が変わっただけでこんなにも意識してしまうものなのだろうか…?
- か、完成したらどうなるかヒントだけでもくれないか?
- ドクター:
いひひ~どうしよっかな~?
うーん… - ドクター:
そうだ!
これはお兄ちゃんの為でもあるし、私たちの為でもあるんだよ。 はい!ヒント終わり! - ドクター:
さてさて~それじゃあ、お待ちかねの…
- 主人公:
- こっち側を向いて座り直し、意味深に笑うドクター…。それを見て再び
理性と身の危険を感じた…。ダメだ!正面は危険すぎる! - 主人公:
- 何とか気を逸らし続けることが出来ていたのだが、
だんだんとドクターと俺の接触面積が広がっていく…。 - 主人公:
- その感触に理性が蒸発しそうになるのを必死に堪え、
話題を逸らそうと思考をめぐらせる…。 すると、いい考えが浮かんだ! - そうだ、ドクター!手伝ってほしいことがある。
- ドクター:
うん?なぁに~?どういうお手伝いかなぁ~?ひひひ…
- 俺を、サンタにしてくれ!
- 主人公:
- 下を向いていたドクターはピクリと止まり、
そのまま上目遣いで両目をぱちぱちさせた。 - ドクター:
…お兄ちゃん、大丈夫?一回寝る?
- ……
- 主人公:
- 冗談でも何でもなく、ドクターは本気で心配しているようだ。
- ドクター:
サンタさんはなりたいからなるもんじゃないよ?
- ドクター:
まだサンタさんを信じてるなんて、お兄ちゃんもまだまだ子供なんだね~!
- そういうわけじゃなくてだな…
- 主人公:
- こいつ、普段言ってることは無茶苦茶だけど、根っこは科学者だから
変なところで現実的なんだよな… - ドクター:
そんな子供のお伽噺をするよりもさ?今はもっと大人のぉ…
- 主人公:
- ドクターは両腕を俺の首に回してきたが、幸いにもこのタイミングで
通信が入って来た。 - 迅速のカーン:
司令官、通常偵察任務の遂行中に状況が…
- 迅速のカーン:
…お楽しみ中だったか?
- ドクター:
カーンお姉ちゃん、こんにちは~?
- 主人公:
- 俺の膝の上に堂々と居座りながらもドクターのいつもの陽気な挨拶に、
カーンはただただ無言で頷く。 - ドクター、ちょっと降りてくれ。…どうした?
- 迅速のカーン:
ん?いいのか…?
偵察中、未確認飛行物体の墜落を感知した。 墜落地点からは立ち昇る煙を肉眼で確認できる。 - 鉄虫か?
- 迅速のカーン:
いや、この飛行物体から鉄虫の信号は検出されなかった。
- 迅速のカーン:
だが、周りに散らばっていた鉄虫どもが、一斉に墜落地点へと接近している。
- 迅速のカーン:
当偵察隊で撃破できる規模と判断する。指示を…
- クイックキャメル:
も~隊長!久しぶりに司令官と話してるのに、そんなお堅い話し方じゃ
ダメですよ~? - クイックキャメル:
やっほー、司令官~!
- よお。ウェアウルフも一緒じゃなかったか?
- クイックキャメル:
あのバカは一人で騒いで何故か穴に落ちちゃって、
今は雪で濡れた服と装備を乾かしてるよ。 - クイックキャメル:
そこにいるけど呼ぼうか?ウェアウルフ!こっち来て!
- クイックキャメル:
あ、ちょっと!服着なさいよ!司令官と通信中なんだから!
- 迅速のカーン:
…面目ない。
- 主人公:
- そう言いつつも部下たちを見ているカーンの口元には笑みが浮かんでいる。
- いいや、仲が良さそうで結構だ。
- 迅速のカーン:
まぁ…そうだが…あぁ、脱線したな、本題に戻ろう。
このエリアの鉄虫勢力は当偵察隊が自力で撃破できると判断した。 - 迅速のカーン:
墜落地点まではそう遠くはない。飛行物体の確認もしに行ったほうが良さそうだ。
- わかった。何かあればまた連絡してくれ。
- 迅速のカーン:
ではただちに鉄虫を掃討し墜落地点へ向かう。以上。
- あ、ちょっと待って。
- 主人公:
- 滅亡前から修羅場をくぐり抜けてきたカーンと違って、
クイックキャメルとウェアウルフはそこみたいな雪原には慣れてないだろう。 - 雪原での作戦だからキャメルとウェアウルフが心配なんだが…
- 迅速のカーン:
続けてくれ。
- 俺が指揮してもいいか?
- 迅速のカーン:
ふむ…
- カーンを信用してないわけじゃないんだ。口出ししてすまない。
- 迅速のカーン:
謝る必要はない。司令官の考えにも一理ある。
- 迅速のカーン:
わかった。では指揮を頼むとしよう。すぐに行動を開始する。