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Transcription
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- 工場地帯から抜け出したトモはよろけながら夜の裏通りを歩く。
- -:
- 全身傷だらけ。言うことを聞かなくなった左足を引きずりながら必死に歩くが…
ついに地面に座り込んでしまった。 - 奇跡のトモ:
うぅっ…痛いよ……
- -:
- あまりに出血し過ぎたため、体は次第に冷たくなっていった。
しばらく考え込んだトモはブリーフケースから取り出した書類を ビリビリと破いて下水道に捨てた。 - 奇跡のトモ:
はぁ…これ…もっと痛いんだろうな…やりたくないな…
- -:
- トモはそう呟きながら自分のサブマシンガンの銃口を口に咥えた。
- -:
- 「そんな者は存在しない」…任務に失敗した080機関のバイオロイドは、
必ず自ら自身の存在を抹消せねばならない。 - -:
- 次第に力が抜けていく指で引き金を引いたが、路地には鋭い銃声の代わりに
空虚な金属音だけが響いた。 - 奇跡のトモ:
弾、もう残ってなかったんだった…
- 奇跡のトモ:
へへ…、まぁゆっくり死ぬだけか…。
- 奇跡のトモ:
シラユリ、ごめん。任務…失敗した…
- -:
- トモがゆっくりと目を閉じて、どれくらいが経過しただろう。
誰かが靴音を鳴らしながら路地に入ってきた。そして… - ??:
うわああああっ!?何だこれは!!!死体!?
- ??:
畜生…、殺人事件か?くそ…よりによって何で私の事務所の前で…………………ん?
- ??:
な、何だ……生きてるのか…?
- 奇跡のトモ:
うっ…
- -:
- トモはコーヒーの香りとタイプの音、そして全身を走る激痛で眠りから覚めた。
- 奇跡のトモ:
ここは…?
- -:
- お世辞にも綺麗とは言えない部屋のソファに寝ていたことを認識したトモは、
反射的に銃を探した。だが、銃はなく古びた毛布がスルリと滑り落ちるだけだった。 - 奇跡のトモ:
……
- -:
- デスクだけは整然と片付けられていて、そこで男がキーボードを叩いていた。
トモは無言で起き上がり、床に落ちていたボールペンを拾った。 - 奇跡のトモ:
騒がないで…質問に答えなさい。
- -:
- ボールペンの芯がうなじに触れるや、男の体がビクッと震えた。
- シャーロック・キムラ:
な、何だ。起きたのか?
- 奇跡のトモ:
お前は誰だ?それからここはどこなのか言え。
- シャーロック・キムラ:
と、とりあえずこれを離してくれないか……
…あぅっ……わ、わかった…。わかった…。 - シャーロック・キムラ:
私は…シャーロック・キムラだ。それからここは私の事務所…。
- 奇跡のトモ:
そう、ショーロック。お前の所属はどこだ?
- シャーロック・キムラ:
え…?BHK新聞社だが…。
- 奇跡のトモ:
新聞社…?
- -:
- トモは一人呟きながら、モニターの画面を覗き込んだ。
- 奇跡のトモ:
どうして私を助けた?
- シャーロック・キムラ:
どうして?それはこっちが聞きたい。こんな風に脅されると知っていたら
ちょっとは悩んだかもしれないのに…。 - 奇跡のトモ:
真面目に答えろ!
- シャーロック・キムラ:
うあっ!いたっ!痛いっ!あっ…
- 奇跡のトモ:
早く答えて!
- シャーロック・キムラ:
気になったから助けただけだ!ゴミを捨てに外に出たら銃を持った女子学生が
血塗れになって倒れているのを見たら、誰だって無視できないはずだ! - 奇跡のトモ:
意味がわからない…
- -:
- その瞬間、トモのお腹がぐぅーっと鳴った。
- 奇跡のトモ:
あ……こ、これは…
- シャーロック・キムラ:
腹が減っていてもおかしくない。お前、どのくらいの時間寝ていたのか
わかってるか? - シャーロック・キムラ:
尋問する気ならメシを食べてからにしよう。ずっとこのままだとズボンに
粗相をするかもしれないからな…!私が。 - 奇跡のトモ:
これは…何?
- シャーロック・キムラ:
……
- シャーロック・キムラ:
時代遅れの小説でも読んで影響されたか?女子学生が銃を持って戦う
異世界モノは昔はよくあったパターンだが。 - 奇跡のトモ:
質問に答えて。
- シャーロック・キムラ:
……それはハンバーガーだ。味は保証する。
- -:
- しばらくハンバーガーを睨みつけていたトモは、恐る恐る包みの紙をはがして、
かぶりついた。 - -:
- 黙ってハンバーガーを食べていたトモは、少し緊張が解けた顔で話を始めた。
- 奇跡のトモ:
銃…
- シャーロック・キムラ:
何だ?
- 奇跡のトモ:
私の銃はどこ?
- シャーロック・キムラ:
さっきからお前だけ質問をしている。不公平じゃないか?
- シャーロック・キムラ:
お互いに一つずつ質問することにしよう。
- 奇跡のトモ:
…わかった。
- シャーロック・キムラ:
名前は?
- 奇跡のトモ:
トモ。私の銃はどこ?
- シャーロック・キムラ:
お前の後ろにある。
- 奇跡のトモ:
え?ないけど?引き出し…?
- シャーロック・キムラ:
私の番だ。何であそこで倒れていたんだ?
- 奇跡のトモ:
…それは答えられない。私の銃を返して!
- シャーロック・キムラ:
それは答えたことにならないだろ…
- シャーロック・キムラ:
はぁ…、まあいい。その引き出しの中だ。
- 奇跡のトモ:
……
- 奇跡のトモ:
な、何なのこれ。全部分解されてるじゃない!!
- シャーロック・キムラ:
気になって分解してみたはいいが、戻せなくなってしまった。
- シャーロック・キムラ:
今度は私の番だ。お前、バイオロイドだろ?
- 奇跡のトモ:
……
- シャーロック・キムラ:
どこの会社所属だ?三安?ブラックリバー?それとも伝説?
- 奇跡のトモ:
…答えられない。
- シャーロック・キムラ:
ということは、バイオロイドなのは間違いないってことだな。
- 奇跡のトモ:
あ……!
- -:
- しまった…と慌てて口に手を当てるトモ。
シャーロックはそんなことに興味はないと言わんばかりに話を続けた。 - シャーロック・キムラ:
気にするな。そんな大怪我をしてるのに生きていれば誰でもわかる。
それにここに運ぶ時、体つきに比べて軽すぎると思った。 - 奇跡のトモ:
……
- シャーロック・キムラ:
そんなに心配するな。工場から逃げ出したとか、何か事情があったんだろう。
犯罪を犯したわけじゃないなら別に気にしない。 - 奇跡のトモ:
…お前、一体なんなの?
- シャーロック・キムラ:
少し前に記者だと言ったはずだが?
- -:
- そう言うとシャーロックは椅子をくるりと回して再びモニターに向かった。
- シャーロック・キムラ:
全部食べたらまだ寝ててもいいし、ここから出たければ出ていっても構わない。
引き留めもしない。 - -:
- 興味ないといった様子で再び仕事に集中するシャーロック。
その様子をしばらく見ていたトモは恐る恐るソファに戻り、眠った。 - -:
- 次の日の朝、二人はテーブルに向かい合って座り、無言で朝食を食べた。
- -:
- 気まずいような、探るような空気の中、トモの視線がシャーロックの後ろの
モニターに向かった。 - 奇跡のトモ:
ねえ、ショーロック・キムラ。伝説の工場の火災の記事を書いてるの?
- シャーロック・キムラ:
そうだ。それから「シャー」ロックな。
- 奇跡のトモ:
うっ…そ、それはともかく!
- 奇跡のトモ:
それ、火災じゃなくて放火だよ。
- シャーロック・キムラ:
何だって?
- 奇跡のトモ:
写真を見て。工場で火災が起きたらスプリンクラーが作動するし、
AGSが鎮圧するはず。 - 奇跡のトモ:
でも、写真にはAGSの姿は見えない。他の場所に行っていたってことの証拠だわ。
- シャーロック・キムラ:
ただ写真にAGSが写らなかったから放火事件だって断定するのは無理が
あるんじゃないか? - 奇跡のトモ:
まだあるわ。工場の天井を見て。
- 奇跡のトモ:
火が回った部分よりも天井が一番大きく崩壊してるでしょ?これは火災で天井が
崩壊したんじゃなくて、爆発なんかの衝撃で崩壊したって思う方が正しいわ。 - シャーロック・キムラ:
ふむ…
- シャーロック・キムラ:
それなら説得力のある仮説だ。記事もより良いものになる。
- シャーロック・キムラ:
ありがとう、トモ。
- 奇跡のトモ:
ただ…ご飯の代金を払っただけ。
- シャーロック・キムラ:
そうか。だがまあ、つり銭は出そうにないな。
- シャーロック・キムラ:
じゃあ記事の続きはちょっと後で書くことにして…
- 奇跡のトモ:
…それは何?
- シャーロック・キムラ:
知らないのか?格闘ゲームだよ。この前ゲームセンターで子供に負けたのが
悔しくてな…練習するために買ったのさ。 - シャーロック・キムラ:
おかげで今月の私の財政状況は限界ギリギリ、悲鳴を上げてる…
それなりの成果が出ればいいのだが…。 - 奇跡のトモ:
ゲーム…
- 奇跡のトモ:
…ちょっと…、私もできる?
- シャーロック・キムラ:
構わない。CPU相手よりは練習になるだろうし。
- -:
- シャーロック・キムラ:
必殺技が出ないのはどうしてだ…?
- シャーロック・キムラ:
いや、おかしい、さっき確かに防御したぞ?
- 奇跡のトモ:
あはは…あなたすごく下手だね。
- シャーロック・キムラ:
子供に負けたと言っただろ。
- シャーロック・キムラ:
お前はあの子供よりは上手いみたいだ。
- 奇跡のトモ:
……ねえ。
- シャーロック・キムラ:
勝って楽しいのはわかるが、また今度にしよう。
そろそろ記事の続きを書かないといけないんでな。 - 奇跡のトモ:
そうじゃなくて。
- 奇跡のトモ:
私、もう少しここにいてもいい?
- 奇跡のトモ:
シャーロック~今日のお昼ご飯はハンバー…うわっ!?
- シャーロック・キムラ:
ちょっと部屋で隠れてろ。
- シャーロック・キムラ:
はいはい、今行きます!
- 警察:
ちょっと失礼しますね。
- 警察:
先週この辺で負傷したバイオロイドを見かけませんでしたか?
- 警察:
人相と身なりはこんな感じです。
- シャーロック・キムラ:
う~ん…よくわかりませんね。
- シャーロック・キムラ:
所有者の方がこの辺で失くしてしまったんですか?
監視カメラには映ってないんです? - 警察:
ちょうどその日、ここ一帯の監視カメラが故障していたそうなんです。
おかげに我々がこうしてしらみつぶしに聞き込みをするハメに… - 警察:
もしも何か見かけましたら最寄りの交番にでも連絡してもらえますか?
- シャーロック・キムラ:
はい。そうしましょう。お役に立てずすみません…ご苦労様です。
- 警察:
とんでもないです。
- 警察:
では、お騒がせしました。
- シャーロック・キムラ:
……
- シャーロック・キムラ:
もう出てきてもいいぞ。
- 奇跡のトモ:
……どうして。
- シャーロック・キムラ:
監視カメラに映っていなかったみたいでよかったな。警察まで動いてる所を見ると…
お前の行方については何も掴めていないようだ。 - 奇跡のトモ:
どうして言わなかったの?
- 奇跡のトモ:
私をこのまま隠し続けたら…きっと後で…
- シャーロック・キムラ:
この前、ここから出たければ出ていっても構わない、好きにしろと言っただろ。
- シャーロック・キムラ:
お前は仕事も手伝ってくれるし、そんなに金がかかるわけでも…
いや、金はそれなりにかかるか。 - シャーロック・キムラ:
とにかく、私は自由気ままな生き方をしてはいるが、
友達をダシに使うような真似はしない。 - 奇跡のトモ:
とも、だち…?
- シャーロック・キムラ:
そうだろ?あっ、そういえばお前の名前とも似ているな。
- シャーロック・キムラ:
それから今日のハンバーガーは却下だ。一昨日の記事がボツになって金がない。
- シャーロック・キムラ:
ちょうど近所のスーパーでタイムセールが…トモ?
- 奇跡のトモ:
はは、あははは…
- 奇跡のトモ:
あははは…友達、なんだね…
- シャーロック・キムラ:
ど、どうした。いきなり気味悪いな…。
- 奇跡のトモ:
あはははは…ううん、何でもない…何でもないよ。
- シャーロック・キムラ:
この前怪我した時に頭に問題でもあったのか?
- シャーロック・キムラ:
あー、そうだ。今度ワタベスズキという奴が手伝いに来てくれることに
なってるんだが、そいつがいろいろ物知りな奴だから、ちょっと見てもらおう。 - シャーロック・キムラ:
良い奴だから、トモもすぐに仲良くなれるだろう。
- 奇跡のトモ:
あはははは…うん。
- 奇跡のトモ:
楽しみにしてるよ。