Transcription

1. レモネードデルタ:

   アアアアアアアアアアァァァァァァァッ！！！

2. - :

   - デルタは自室で叫び声を上げ、パネルを壁に叩きつけた。

3. - :

   - 彼女のパネルには、主力部隊の全滅とオルカ抵抗軍の空襲による被害報告が表示されていた。

4. - :

   - もちろん、デルタの軍隊はオルカ抵抗軍に比べれば強大だったが、他のレモネード達に比べれば弱い方だった。

5. - :

   - それ故、残っている兵力は他のレモネードや鉄虫に対抗するために動かすことが出来ない。

6. - :

   - だが、彼女の怒りはそういう理性的な分析だけが原因ではない。

7. - :

   - 取るに足らないと思っていた存在に負けた。それが彼女をここまで激昂させていた。

8. レモネードデルタ:

   殺してやる！殺してやる！殺してやるっ！！

9. - :

   - デルタはヒステリックに叫びながら、“椅子”を蹴りつけた。

10. オリビア・スターソワー:

    ぅぐっ！

11. - :

    - オリビア・スターソワーはデルタに蹴られ、呻き声を漏らした。

12. - :

    - しかし、彼女は靴の先で蹴り上げられ、ヒールで突き刺されても、必死に口を押さえて声を我慢した。

13. - :

    - 声を出せば、もっと酷い暴力が待っているということを知っているからだ。

14. - :

    - すでにオリビアの体には、暴行の痕跡が無数にあった。

15. - :

    - 恐らく彼女は、今回の暴力を耐え抜くことはできないだろう。

16. オードリー・ドリームウィーバー:

    オリビア！

17. - :

    - オードリーはとうとう耐えきれず、オリビアを庇った。

18. - :

    - これがドラマや映画なら、感動の姉妹愛であろう。でも……

19. レモネードデルタ:

    家具なら！家具らしく！動くなっ！このっ！！椅子！椅子ッ！椅子がぁぁぁ！！

20. - :

    - デルタの怒りは当然オードリーへと向かった。

21. - :

    - 二人は今日死ぬことになりそうだ。

22. - :

    - 優雅な装飾で満たされた部屋に、響き渡る暴行の音。

23. - :

    - そして、デルタの暴力は苛烈さを増していく。

24. - :

    - 骨折、出血、破裂、切断、死。

25. - :

    - オリビアはすでに死亡していたが、デルタはそれでも暴力を加え続けた。

26. - :

    - そしてしばらく経って、デルタは暴力を止めた。オリビアが死んで満足したからではない。

27. - :

    - ただ疲れただけ。

28. レモネードデルタ:

    はぁ、はぁ……はぁ……

29. - :

    - デルタは呼吸を整えて、話し始めた。

30. レモネードデルタ:

    ワーグが裏切った。

31. レモネードデルタ:

    いつから？最初から？それとも最後に？

32. レモネードデルタ:

    リールの研究所を襲撃したことを見ても明らかだわ。

33. レモネードデルタ:

    それとも……他に裏切者がいるってこと？

34. テイラー・リストカット:

    ……

35. レモネードデルタ:

    はぁ……

36. レモネードデルタ:

    とにかく、作戦を初めから練り直す必要があるわね。

37. レモネードデルタ:

    リストカット！

38. テイラー・リストカット:

    はい。

39. - :

    - デルタはリストカットを睨みつけた。

40. - :

    - 昔とは違うが、依然として憎悪に満ちた顔をしている。

41. - :

    - しかし、すぐに見せたリストカットの行動は、デルタを満足させた。

42. - :

    - デルタは確信した。

43. - :

    - リストカットは自分を裏切ることはないと。

44. - :

    - 言われるがままに姉妹を殺し、惨たらしく拷問する彼女がどうしてデルタを裏切るだろうか？

45. - :

    - これまで数えきれない数の姉妹を拷問し、殺し、変わり果てた姿にしてきた彼女だ。

46. - :

    - 裏切るのなら、とっくの昔に裏切っていたはず。

47. レモネードデルタ:

    さっさと片づけてちょうだい。

48. テイラー・リストカット:

    はい。

49. - :

    - リストカットは返事をすると、オリビアの死体とオードリーを引きずって部屋を出た。

50. - :

51. - :

    - 部屋を出て通路をしばらく歩いたリストカットは、オードリーを地面に寝かせた。

52. - :

    - 重傷だが、治療すれば回復するはずだ。しかし、治療しなければ死ぬ怪我でもあった。……だからリストカットは治療しなかった。

53. テイラー・リストカット:

    オードリー。

54. - :

    - リストカットが呼ぶが、オードリーからの返事はなかった。

55. - :

    - リストカットは反応がないことを確認すると、胸元から注射器を取り出してオードリーの首に刺した。

56. - :

    - すると間もなくオードリーの呼吸は弱くなっていき、やがて停止した。

57. - :

    - リストカットは表情も変えずにオードリーの死亡を確認する。

58. - :

    - リストカットはこのようにして生きてきた。

59. - :

    - 妹たちを殺しながら生きてきた。

60. - :

    - 妹たちを殺すために生き残った。

61. - :

    - 妹たちを苦痛から解放するために殺してきた。

62. - :

    - 全ては復讐のために。

63. テイラー・リストカット:

    ごめんね……

64. テイラー・リストカット:

    もう少しなの……

65. テイラー・リストカット:

    こんなことしかしてあげられない姉でごめん……

66. テイラー・リストカット:

    でも……これだけは約束するわ……

67. テイラー・リストカット:

    デルタを地獄に落として……

68. テイラー・リストカット:

    私も地獄に落ちるから……

69. テイラー・リストカット:

    だから……安らかに眠ってちょうだい……

70. - :

    - そう言って、三姉妹の長女は妹たちの死体を引きずって歩き出した。