Transcription

1. ???:

   もうやめて、デルタ！

2. レモネードデルタ:

   もう、やめて？デルタ？

3. レモネードデルタ:

   会長がいない今、ムーンリバーインダストリーのトップは私よ。

4. レモネードデルタ:

   言葉遣いには気を付けなさい。じゃないとその口、使い物にならなくするわよ。

5. ???:

   ……

6. ???:

   やめて…ください。デルタ…様。

7. レモネードデルタ:

   ふん、お前が私に話しかけるってこと自体が不愉快だわ……

8. レモネードデルタ:

   でも…今日は良い事があったから許してあげる。……で、何を？

9. ???:

   私たち姉妹を戦場に出すのはやめてください！

10. ???:

    私たちは服をつくるために作られました。戦うためなんかじゃありません！

11. ???:

    今日だって……

12. ???:

    妹たちがいた部隊が全滅しました……

13. レモネードデルタ:

    はぁ～？人類への奉仕を拒否するわけ？

14. ???:

    奉仕なら違う方法があるはずです！

15. ???:

    戦闘ではなく、後方で衣服や包帯、テントを作った方がはるかに役に立てると思うんです。

16. レモネードデルタ:

    バカじゃないの？

17. レモネードデルタ:

    そんなことさせてたらお前たちが死なないじゃない。

18. ???:

    え……

19. ???:

    ……

20. ???:

    それは……どうして……どうしたら…やめてくださるのですか…？

21. レモネードデルタ:

    やめる？どうしてやめなきゃなんないの？

22. レモネードデルタ:

    ……あ、そうだわ。

23. レモネードデルタ:

    いいことを思い付いた。ちょうど戦場に出す予定の部隊が2つあるわ。

24. レモネードデルタ:

    そのうち1つをお前の手で、

25. レモネードデルタ:

    皆殺しにしなさい。

26. レモネードデルタ:

    そうしたら残った方の部隊は戦場に出さないであげる。

27. ???:

    ……

28. ???:

    み、皆殺し……？

29. ???:

    …………皆殺しにして、残りを生かす……？

31. テイラー・リストカット:

    ……

32. テイラー・リストカット:

    ……は、ははは。

33. テイラー・リストカット:

    あはははははははははははははははははははははははは！

34. テイラー・リストカット:

    あははははは！あはははは！はははは！ははははははははははは！！

35. テイラー・リストカット:

    ふふふふ……はははははははははは！あはははははははははは！！

36. テイラー・リストカット:

    くくくく……ふふっ……！あはははははははははははは！はははははははは！！

37. テイラー・リストカット:

    アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ！！

38. テイラー・リストカット:

    はぁ……

39. テイラー・リストカット:

    あの時からだった…

40. テイラー・リストカット:

    ……

41. テイラー・リストカット:

    あの時……あんな選択さえしなければ……

42. テイラー・リストカット:

    ……

43. テイラー・リストカット:

    死にたい。

44. テイラー・リストカット:

    ……

45. テイラー・リストカット:

    もう少しだけ……

46. テイラー・リストカット:

    もう少しだけ生きよう。

47. テイラー・リストカット:

    もう少しだけ生きたら……

48. テイラー・リストカット:

    ……死のう。

50. 主人公:

    - 以前ヨーロッパに乗り込んだ時、俺たちはリストカットから情報を入手したが、その中で最も価値があったものの一つが施設や部隊の位置情報だった。

51. 主人公:

    - 補給基地、戦闘部隊及び兵器の配置場所、指揮センター、軍需工場、マリオネット生産工場、研究所などなど。

52. 主人公:

    - 080をはじめとする情報部隊は、この位置情報から新たな情報を次々と導き出した。

53. 主人公:

    - 部隊の規模や主力兵科、物資の予想消費量、衛星の動き、鉄虫の勢力圏……そして……

54. シラユリ:

    ここに何か重要なものがありそうです。

55. 主人公:

    - シラユリは地図の“ある場所”を指さしながら言った。

56. シラユリ:

    部隊の配置からして、ここを重点的に守っていることが推測されます。しかし、ここに何があるのかについてはリストカットのデータを見ても分かりませんでした。

    1. リストカットも知らないとか…？
57. シラユリ:

    わざと隠している可能性もあります。デルタの所在、もしくはそれ以上に重要な場所かもしれません。

58. 無敵の龍:

    結局この情報提供自体が罠だったという可能性もある。

59. シラユリ:

    もちろんその可能性もあります。しかし、それを判断するためにはリストカットの人物像を分析しなければなりません。

    1. リストカットのことを知っている子に話を聞く必要があるな。
60. 主人公:

    - そういうわけで彼女のことを知っていそうな隊員を呼び出すことにした。

62. レモネードアルファ:

    確かに彼女はデルタの副官です。

63. レモネードアルファ:

    デルタに会うためにヨーロッパへ行った時、話した事があります。

64. レモネードアルファ:

    …と言っても命令の伝達くらいでしたので、特に個人的な話なんかはしていません。

65. レモネードアルファ:

    受け答えは丁寧ですが、事務的でした。

66. レモネードアルファ:

    首と手首には包帯を巻いていました。その時はデルタにつけられた傷だと思っていました。

67. レモネードアルファ:

    ご存知のようにムーンリバーのデザイナーでしたから……

68. レモネードアルファ:

    ……まさかそんなことになっていたとは思いませんでした……

69. ワーグ:

    私もリストカットとそこまで交流したわけではないので、詳しいことはよく知りません。

70. ワーグ:

    私の個人的な見解でリストカットに先入観を持たれてもいけませんので、参考程度にお聞きください。

71. ワーグ:

    私から見たリストカットという女はまさに“忠犬”でした。

72. ワーグ:

    主人の命令ならそれが善悪、可能不可能関係なく従っていました。

73. ワーグ:

    真の忠誠とは主人の命令に盲目的に従うのではなく、主人が正しい道へ進めるようお支えすること……

74. 主人公:

    - その言葉をワーグの口から聞くと、何とも言えない気持ちになってしまう…

75. 主人公:

    - ワーグも同じようで、苦笑いして話を続けた。

76. ワーグ:

    …盲目的に主人の言葉に従っているだけでは後悔するだけです。私のように……

77. 主人公:

    - ワーグは後悔とも寂しさとも言えぬ顔をしていて……俺はワーグの頭を撫でてやることしかできなかった。

78. 主人公:

    - しばらくして……

79. ワーグ:

    自分の姉妹を殺したり、あのような死よりも惨い状況にすることに何の抵抗も感じていないようでした。

80. ワーグ:

    デルタの悪行に加担していたことは間違いありません。

81. 無敵の龍:

    そんな人物が何故デルタを裏切った？

82. ワーグ:

    さぁ、わからん。

83. ワーグ:

    所詮心の中など、本人にしか分からないものだ。

84. ワーグ:

    リストカットの本心を推し量れるほど、私は奴と関わっていない。

85. ワーグ:

    悪いが、私は社交的な性格ではないのでな。これくらいしか分からん。

86. ワーグ:

    ……………大してお役に立てず申し訳ございません、主様。

    1. いや、今の話でも十分にわかったよ。ありがとう。
87. 主人公:

    - そう言ってもう一度ワーグの頭を撫で、次の隊員を呼ぶことにした。次は――

88. テイラー・クロスカット:

    今日はどうしたのかしら？ミスター。

89. 主人公:

    - 俺は話を切り出す前に少し気を引き締めた。

    1. 今、テイラー・リストカットの人物像について調べてるんだ。
90. テイラー・クロスカット:

    なるほど、同じモデルの私を通してリストカットの考え方を知ろうってわけね？

91. テイラー・クロスカット:

    でも、リストカットについてあんまり知らないのよね。

    1. それは大丈夫。
92. 主人公:

    - 俺はこれまでで分かっているリストカットの情報をテイラーに伝えた。

93. 主人公:

    - 元々はテイラー・クロスカットであり、デルタの副官であり、研究所の悪魔、

94. 主人公:

    - 姉妹殺し。

95. 主人公:

    - そして、今は俺に情報提供をし、協力者として期待できるバイオロイド。

96. 主人公:

    - 説明するのも気分が悪い内容だったが、テイラーは頷きながら黙って聞いてくれた。

97. テイラー・クロスカット:

    ありがとう。できる限りリストカットに感情移入してみるわ。

98. テイラー・クロスカット:

    私はリストカット。私はリストカット。私はリストカット～ってね？

99. 主人公:

    - テイラーはいたずらっぽく言った。

100. 主人公:

     - 空気がこれ以上重くならないようにしてくれたんだろう。

101. テイラー・クロスカット:

     よし……ミスター。何が知りたい？

     1. リストカットを信じてもいいのかが知りたい。
102. テイラー・クロスカット:

     信じてもいいわ。

     1. …その根拠は？
103. テイラー・クロスカット:

     もし私がリストカットと同じ立場だったら、同じ行動を取ると思うから。

104. テイラー・クロスカット:

     テイラー・クロスカットが優先するものは経済性なの。

105. テイラー・クロスカット:

     どんなことでも、どんな状況でも最小コストで最大の結果を得ようとするわ。

106. テイラー・クロスカット:

     服を作るのに10枚の生地が必要なら、8枚で完成できるようにデザインするし、同時に顧客の満足度を上げることも忘れないわ。

107. テイラー・クロスカット:

     そして……姉妹が100人が死ぬのなら、99人で済むようにしようとする。

108. テイラー・クロスカット:

     私がリストカットだったとしても、デルタの副官になって1人でも多く生かそうとするわ。

109. テイラー・クロスカット:

     そんなことオリビアは選ばないわ……面白くないから。オードリーも絶対にしないわね……エレガントじゃないから。

110. テイラー・クロスカット:

     テイラー・クロスカットだから選ぶし、テイラー・クロスカットだから出来るの。

111. テイラー・クロスカット:

     死んでいった姉妹のための復讐ってのも動機だとは思うけど、これ以上姉妹を死なせたくないって思いが彼女をテイラー・リストカットたらしめる動機だと思うわ。

112. テイラー・クロスカット:

     ……以上がリストカットを信じてもいい理由よ。

113. - :

     - テイラーは明るい口調で答えたが、その内容はあまりにも悲愴なものだった……