Transcription

1. レモネードアルファ:

   あり得ない……どうやってこんな……

2. レモネードオメガ:

   …ホログラムを使ったイタズラか何かなら、やめてもらえる？面白くも何ともないから。

3. レモネードベータ:

   ホログラムでもイタズラでもありません。この子たちは現実に存在しているバイオロイドです。

4. レモネードベータ:

   この子たちは……私のクローンです。

5. レモネードアルファ:

   クローン……

6. レモネードアルファ:

   ですが、それはあり得ません。

   1. さっきからあり得ないって言ってるけど、どういうこと？
7. レモネードアルファ:

   …不可能なんです。

8. レモネードアルファ:

   “レモネードを量産しない”というPECSの会長たちが結んだ協約によって……

9. レモネードアルファ:

   アンナ博士はもともと私たちレモネードを量産する計画でした。ですが、PECSの会長たちはそれが気に入らなかった。

10. レモネードオメガ:

    ……秘書レモネードはラビアタプロトタイプや無敵の龍のような、量産を考慮せずに作られたモデルとは違います。

11. レモネードオメガ:

    かなりの高級機なのは間違いありませんが、量産が不可能な設計ではないのです。

12. レモネードオメガ:

    多大な金と資源が必要ですが、PECSの会長たちの財力であれば十分作れるレベルです。

13. レモネードアルファ:

    ですが、そうなった場合、レモネードをより多く保有している企業がPECS内の主導権を握ることは火を見るよりも明らかです。

14. レモネードアルファ:

    レモネードの能力…戦闘力ではなく、経営に関係する能力は他を遥かに凌駕するものですので。

15. レモネードアルファ:

    ですからPECSの会長たちはレモネードを量産しないという協約を結び…

16. レモネードアルファ:

    その協約を破ることが出来ないよう、アンナ博士に複製防止のための特殊なコードを作るよう命令しました。

    1. そこまでしなきゃならなかったの？
17. レモネードアルファ:

    PECSは確かに連合体ですが……その実、お互いのことをまったく信じていませんでしたから。

18. レモネードアルファ:

    そこまでして保険を作っておかないと安心できなかったのでしょう。

19. レモネードオメガ:

    ……そして、その複製防止コードはこの私ですら解除に失敗しています。

20. レモネードオメガ:

    それをベータ……アルファよりも演算能力が低いあなたがコードのクラックに成功した？

21. レモネードオメガ:

    そんなの信じられないわ。

22. レモネードベータ:

    …私も複製防止コードの解除には失敗しています。これは……ただ禁則事項を迂回しただけです。

23. レモネードオメガ:

    そんなことが出来たのなら、どうして共有しなかったんです？その迂回方法があれば鉄虫との戦いももっと楽に進められたはず。

24. 主人公:

    - オメガの言葉を聞いたベータは苦々しく笑いながら首を横に振った。

25. レモネードベータ:

    言ったじゃないですか。ただの迂回だと……

26. レモネードベータ:

    何もしないで放置した傷というものは、悪化してさらに大きな傷になる。

27. レモネードベータ:

    この迂回コードも同様です。

28. レモネードアルファ:

    ……何かがあるわけですね。

29. レモネードアルファ:

    ベータ。私はあなたがカラカスに行ってしまってからのことを知りません。

30. レモネードアルファ:

    よかったら……カラカスで何があったのか、聞かせてくれませんか？

31. レモネードベータ:

    ……

32. レモネードベータ:

    …少し、長い話になってしまいますが……

33. レモネードベータ:

    大丈夫ですか？

    1. 大丈夫だよ。どうせ数日はここにいるんだから。
34. 主人公:

    - 本格的な協議は明日から行われる予定だし。

35. レモネードベータ:

    …わかりました。では、お聞かせします。会長と私…そして、シェパード姉さんについての話を。

36. 主人公:

    - ベータは話を始めた。

37. 主人公:

    - シモン・ブランコが何故PECSの会長となったのか。

38. 主人公:

    - どのようにしてイングリッシュ・シェパードが生まれたのか。

39. 主人公:

    - そして、カラカスデモで起きた惨劇の真実を。

40. レモネードベータ:

    カラカスデモが発生した時、カラカス産業の会長……シモン・ブランコの指揮下にはもう兵力が残っていませんでした。

41. レモネードベータ:

    会長の最側近だったエルネスト隊長が部下と一緒に会長を裏切って、デモ隊の側に付いたんです。

42. レモネードベータ:

    ブラックリバーから支給された多脚歩行機動戦車…デスストーカーはありましたが……デスストーカーを指揮する人員が不足していました。

43. レモネードベータ:

    会長は鎮痛剤とお酒のせいで正常な状態ではなく、私一人ではカラカス全体をカバーすることもできません……

44. レモネードベータ:

    それで、会長はオメガ産業の会長に支援を要請しました……