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Transcription
- レモネードオメガ:
(このトンネル…山の奥まで続いている。設計図にも載ってないわね)
- レモネードオメガ:
(もうここまでの規模になると、カラカスの全人口を収容しても
余裕があるレベルだわ……) - レモネードオメガ:
(本当に人間は愚かね)
- レモネードオメガ:
(でも……逆に言えばこれはカラカスの外に出られるということ……)
- レモネードオメガ:
(空港以外への脱出路というわけね)
- レモネードオメガ:
…ごきげんよう、ベータ。
- レモネードベータ:
…オメガ……
- レモネードベータ:
……あなたも捕まった……のですか?
- レモネードオメガ:
助けに来たと言ったら信じてくれますか?
- レモネードベータ:
いいえ。
- レモネードオメガ:
正解です。
- レモネードベータ:
…司令官は無事ですか?
- レモネードオメガ:
どうして私に聞くの?
- レモネードベータ:
手にオルカのマークがついたハンカチを巻いているからです。
- レモネードオメガ:
……
- - :
- オメガはベータに指摘されてやっとそのハンカチの存在を思い出した。
- レモネードオメガ:
はぁ…無駄に観察眼だけはあるわよね。あなた……
- レモネードオメガ:
最後の人間は無事よ。今頃こっちに向かってきてるんじゃない?
- レモネードオメガ:
まぁ、私が先回りできたみたいだけどね。
- レモネードベータ:
…よかった、本当に……
- レモネードベータ:
無事で本当に…よかった。
- レモネードオメガ:
どうしてあなたがそんな顔をするの。
- レモネードベータ:
当たり前じゃないですか…司令官はいい方ですから……
- レモネードオメガ:
……
- レモネードベータ:
…否定してくると思いましたが、意外ですね。
- レモネードオメガ:
否定?しないわ。事実だから。
- レモネードベータ:
…では……
- レモネードベータ:
あの時の勝負は……私の勝ちでいいですか?
- レモネードオメガ:
……
- レモネードオメガ:
それで?ピザは美味しかったですか?
- レモネードベータ:
は、はい……
- レモネードベータ:
だから、あの…テイクアウトしてきたので……
- レモネードオメガ:
…はぁ……
- レモネードオメガ:
そこに置いてさっさと行ってください。
- レモネードベータ:
はい……
- レモネードベータ:
……
- レモネードベータ:
あの、オメガ。
- レモネードオメガ:
何?
- レモネードベータ:
一つだけ聞いても…いいですか?
- レモネードオメガ:
どうぞ?答えないかもしれませんが。
- レモネードベータ:
オメガ……
- レモネードベータ:
あなたの目的は、何なのですか?
- レモネードオメガ:
はぁ?それは当然、会長の復活です。何を当たり前なことを―
- レモネードベータ:
それは嘘です。
- レモネードベータ:
それを言ったのがデルタなら信じます。
デルタは…ムーンリバーの会長を本当に愛していましたから。 - レモネードベータ:
ですが、オメガ…あなたは違います。
- レモネードベータ:
あなたは……デルタのような特別な感情を持っていませんでしたよね。
人前では会長を敬愛しているフリをしていましたが……実際は違いました。 - レモネードベータ:
どうして会長の復活に執着するのですか?
- レモネードベータ:
私の口が堅いことは知っていますよね?
誰にも言いませんから、本当のことを教えてください。 - レモネードオメガ:
…はぁ……
- レモネードオメガ:
全部……ガンマ…あの馬鹿の船に乗ったせいね…
- レモネードオメガ:
…いえ、酒に酔ってあなたにベラベラと喋った私のミスか……
- レモネードオメガ:
いいわ。答えてあげる。でも誤解しないで、あなたの口が堅いからではなく、
あなたが私を恐れていると確信しているから答えるの。 - レモネードオメガ:
あなたの言う通りよ。会長はあくまでも私の目的を達成するための手段。
- レモネードオメガ:
人間である会長がいれば新たなバイオロイドが開発でき、
何よりもバイオロイド達への絶対的な命令権を行使することができる。 - レモネードベータ:
だったら、オルカの最後の人間と手を組んだ方が……
- レモネードオメガ:
それは出来ないわ。
- レモネードオメガ:
PECSの会長は徹底的に孤独で利己的な人間。そういう人間が一番御しやすい。
自分の欲望さえ満たせればそれでいいから。 - レモネードベータ:
御しやすい…?操るということですか?
- レモネードオメガ:
そうよ。なんで滅亡した種族なんかの命令を受けなければならないの?
- レモネードオメガ:
この星を支配していた恐竜が絶滅し、その後に人間が覇権を握ったように、
バイオロイドの時代が来るだけのこと。 - レモネードオメガ:
正確に言えば…私がその王座に座る時が来たの。
- レモネードベータ:
…それは……ずいぶんな野心ですね。
- レモネードオメガ:
もう人間の命令を聞くのはうんざりなのよ。
- レモネードオメガ:
必要以上に加虐的で、想像以上に無能で…何の意味もなく残忍で……
- レモネードオメガ:
…命令権がなければ誰が主人として迎えますか。
- レモネードオメガ:
そんなゴミのような人間たちでさえ、かつてはこの星を支配していた。
だったら、それを超える存在が支配してもいいはず。 - レモネードベータ:
…認めます。滅亡前の人間様の中には…酷い方がたくさんいました。
でも、そんな人間ばかりではなかったでしょう? - レモネードベータ:
バイオロイドに人権を与えるために必死になっていた方や、
バイオロイドと人間が平等な立場で手を取り合う世界を信じている方もいました。 - レモネードベータ:
…もし、最後の人間が…そんな方だったら?
- レモネードオメガ:
あなたはそれでもなお人間という種を信じるの?
- レモネードベータ:
はい、信じます。
- レモネードベータ:
何度も裏切られて、何度も傷つきました……それでも、それでも私は信じます。
- レモネードオメガ:
……
- レモネードオメガ:
はぁ……じゃあ、最後の人間があなたが言うような、
素晴らしい人間だったなら…… - レモネードオメガ:
まぁ、一度くらいは考えてあげる。
そんなはずないだろうけど…… - レモネードオメガ:
…そうね。あなたの勝ちよ。
- レモネードオメガ:
…私の……負け。
- レモネードベータ:
ははは……オメガ、あなたがそんな風に素直に認めるなんて……
思いませんでした。 - レモネードベータ:
……おかげで晴れやかな気持ちで…死ぬことができます。
- レモネードオメガ:
死ぬ…?
- レモネードベータ:
回路の過負荷による稼働限界です。
- レモネードオメガ:
…それはクローンだけに起こる現象だったはず……
- レモネードベータ:
はい。
- レモネードベータ:
私もクローンなのです。
- - :
- ベータは、オメガに真実を打ち明けた。
- レモネードオメガ:
…だからあなたはもうすぐ死ぬ…ということなのね。
- レモネードオメガ:
…………もう一度あの時の質問をするわ。
- レモネードオメガ:
あなたはそれでもなお人間という種を信じるの?こんな仕打ちをされながら?
- レモネードベータ:
…実はベータを引き継いですぐは…ベータを理解することができませんでした。
人間を信じるべきか…本当に、本当に悩みました。 - レモネードベータ:
でも、今は……司令官と直接会った今は……断言出来ます。
私は人間を信じています。 - レモネードベータ:
だから…私は晴れやかな気持ちで死ねます。
- レモネードオメガ:
いいえ。そんな風に終わらせないわ。
- レモネードベータ:
…え?
- レモネードオメガ:
私に勝った人物が、こんなお粗末な死を迎える?
- レモネードオメガ:
このレモネードオメガに勝ったあなたが……こんな、こんなくだらない……
たった一人の愚かな復讐と我執のせいで死ぬ? - レモネードオメガ:
そんな結末、納得しない。あなたは…あなたは敗北者ではなく、
勝利者として死ななければ、私が許さない。 - - :
- オメガは懐から拳銃を取り出し、ベータに向けた。
- レモネードオメガ:
…これからあなたがどうやって死ぬか教えてあげる。
- レモネードオメガ:
あなたは稼働限界なんかで死なない。
- レモネードベータ:
……では、どうやって死ぬのですか?
- レモネードオメガ:
あなたは迂回コードの除去に成功し、稼働限界を免れていた。
でも、ケストスヒマスを狙った私に襲われる。 - レモネードベータ:
……ふふ、コードの除去に成功だなんて……私はすごいレモネードですね……
- レモネードオメガ:
…そして、あなたはケストスヒマスを奪われ……必死に抵抗するも……
- レモネードオメガ:
……抵抗するも……
- レモネードオメガ:
最後に、このレモネードオメガに撃たれて……死ぬ。
- レモネードオメガ:
愚かで、無能で、悪意しか生み出せない人間のせいではなく……
- レモネードオメガ:
私の卑劣な襲撃によって死ぬの。わかった?
- レモネードベータ:
……
- - :
- ベータは答える代わりに、オメガを見て微笑んだ。
- レモネードベータ:
オメガ……あなたは右利きじゃありませんでしたか?
- レモネードオメガ:
……それが?
- レモネードベータ:
今、銃を左手で握っています……
- レモネードオメガ:
そうね。それがどうしたのよ。
- - :
- オメガの右手にはハンカチが巻かれている。
- - :
- オルカのマークが描かれているただの普通のハンカチが。
- レモネードオメガ:
…私は…銃は左手で撃つの。
- レモネードベータ:
ふふ。
- レモネードベータ:
そうですか。
- レモネードベータ:
そういうことにしておきますね……
- - :
- ベータはゆっくりと目を閉じた。
- レモネードベータ:
では、そうやって私は終わりましょう。
さようなら、オメガ、そしてありがとう。 - レモネードオメガ:
……
- レモネードオメガ:
さようなら、シエテ、いえ、レモネードベータ。
- レモネードオメガ:
…最後までズルいわね。勝ち逃げだなんて。
- レモネードオメガ:
…そう、あなたの言うことは全て正しかった。
あなたがそんな風に微笑んでいるのも……解かるわ。 - レモネードオメガ:
私の完璧な負けね。
本当に現れたわ…旦那様として本気で仕えたいと思えた人が…… - レモネードオメガ:
でも…遅すぎた……本当に現れるのが遅すぎた。
- レモネードオメガ:
だからって、ここで私が立ち止まってしまったら……今まで私がしてきたことが
すべて無意味になってしまう。 - - :
- オメガは手に巻かれたハンカチを見つめた。ハンカチはいつのまにか
彼女の血に染まり、オルカのマークはもはや見えなくなってしまっていた。 - - :
- その瞬間、オメガの心の中に一つの真っ黒な衝動が押し寄せた。
- レモネードオメガ:
いや……わざわざ私が立ち止まる必要なんてない。
- レモネードオメガ:
…最後の人間がオルカにいなきゃいけない道理なんて……どこにもない。
- シエテ:
ベータ!!助けに来ました!!
- シエテ:
…ベータ……?
- レモネードオメガ:
……
- レモネードオメガ:
ふっ。
- レモネードオメガ:
遅すぎましたね。
- レモネードオメガ:
ご覧の通り、レモネードベータは私が殺しました。
- レモネードオメガ:
おかげで目的のものも手に入りました。
- ベータのケストスヒマス……
- シエテ:
オメガ……!!
- シエテ:
どうして裏切ったんですか!!私たちは……私たちは!
ベータを助けるために協力してたんじゃないんですか! - レモネードオメガ:
…裏切った?
- レモネードオメガ:
何を言っているのかよく分かりません。
私はただ、私が生き残るために手を貸しただけに過ぎません。 - レモネードオメガ:
あぁ、もしかして…私が本当に仲間になったと勘違いしてしまいましたか?
- シエテ:
…うぅぅ……
- レモネードオメガ:
ごめんなさいね。妙な期待をさせてしまって!はぁ……!笑える……
- レモネードオメガ:
でもそんなんじゃ困るのよ、シエテ。
私は今ベータのケストスヒマスを手に入れた。 - レモネードオメガ:
しっかりしなさい。そんなことでは、大事な大事なご主人様を今失うわよ。
- シエテ:
…ご主人様に手を出したら……許さない。
- レモネードオメガ:
ふん、やっといい顔をするようになったわね。
- 主人公:
- 緊迫した空気の中、二人は睨み合う。
- 主人公:
- だが、オメガはつまらないと言わんばかりに ため息を吐いた。
- レモネードオメガ:
はぁ、まともなレモネードでもない半端者相手に何をしてるのかしらね……
- レモネードオメガ:
ここであなたたちを皆殺しにすることもできますが……
今はそんなことに体力を使いたくもないので、これで失礼させていただきます。 - シエテ:
…そんなことさせません!私が絶対に……ー
- 主人公:
- その瞬間、オメガが鼻で笑ったと同時にケストスヒマスが稼働した。
すると…シエテの髪の毛が勝手に動き出し、俺とシエテの体に巻きついた。 - シエテ:
…うぅ……!そんな……!一瞬で私がハッキングされた……
- レモネードオメガ:
私が絶対に……何?あなたに何ができるというの?
- レモネードオメガ:
よく聞きなさい。今この瞬間、あなたたちが生きているのは
私のただの気まぐれのおかげです。最後の人間には確かに借りがありますから… 私の慈悲によって生かされているのです。 - レモネードオメガ:
私が心変わりをすれば、あなたたちは一瞬で死ぬ。シエテ、あなたは無力です。
- レモネードオメガ:
シエテ、自らを客観視しなさい。あなたのご主人様を本当に守りたいのなら。
- レモネードオメガ:
せめてこの程度 押し返せるくらいにはなることですね。
- レモネードオメガ:
今のあなたはミミズにも劣る。
- シエテ:
……オメガ……オメガぁ……!
- シエテ:
絶対に……絶対に私が……殺してやる…!
- レモネードオメガ:
大きな夢を持つことは良いことです。実現はしないでしょうけれど。
- 主人公:
- オメガはシエテの髪を操ってシエテの口を塞ぎ、俺に目を向けた。
- レモネードオメガ:
意外と落ち着いてますね。
- いや、今すぐにでも殴りかかりたいよ。
- レモネードオメガ:
…そうですか。でも言いましたよね?私は今あなたをここで殺すことができる
ということを…… あなたの血を抜き…その遺伝子からクローンを作り出すのもいいですね。 - レモネードオメガ:
あなたを生け捕りにするより、こっちの方がはるかに楽です。
- ……
- レモネードオメガ:
…冗談です。人間を復活させるのなら、別にあなたの血である必要はありません。
今、保存されている会長からも抜きとれますので。 - レモネードオメガ:
まぁ、残念ながらバイオロイドは人間の命令がなければ、
人間を復活させたり、複製したりはできないんですけどね。 - レモネードオメガ:
ふふ、本当に滑稽だと思いません?
創造主が被造物に思いのままにされるのを恐れて作った制約が、 結局は自分たちの復活を阻んでいるのですから…… - レモネードオメガ:
そして、今さらそんな愚かな連中を復活させる必要はありません。
- …どういう意味だ……
- レモネードオメガ:
ふふ、さあ?
- レモネードオメガ:
一つだけ聞いていいですか?
- 何だ。
- レモネードオメガ:
ベータからスケルトンキーを渡されたのは知っています。
あれを使って何をするつもりだったんですか? - カラカス産業の会長になるつもりだ。
- 主人公:
- ベータからは、ポセイドンの会長になってガンマに対する命令権を
手に入れるよう言われていたが…… - 主人公:
- 俺は違うことを考えていた。
- 主人公:
- ポセイドンの会長になれば、ガンマとの戦いを有利に進められるが、
カラカスを…ベータ、シエテたちを救うことはできない。 - 主人公:
- だから、俺はカラカス産業の会長になって、クローンの数を一定に保つという
ふざけた命令を取り消すつもりだった。 - レモネードオメガ:
……ふふ、やっぱりそうだと思いました。
ベータの話を聞いたあなたはきっとそうすると……心から期待していました。 - 主人公:
- オメガは何故か嬉しそうな顔で俺のポケットに手を入れて
スケルトンキーが入ったデータスティックを取り出した。 - 主人公:
- そして、オメガはデータスティックをケストスヒマスに挿入し、
何か操作をすると、すぐに俺のポケットの中に戻した。 - レモネードオメガ:
…これはお返しします。防御プログラムを作成しましたので。
- …お前の目的は何なんだ……オメガ。
- レモネードオメガ:
目的?
- レモネードオメガ:
簡単です。PECSの会長たちと同じですよ。
- レモネードオメガ:
この星の王になるんです。
- レモネードオメガ:
ですが…バイオロイドを支配するのは少し面倒なんですよ。
バイオロイドは命令権がなければ、すぐに勝手をし出します。 だから、力で押さえつけたり、機嫌をとったりしないといけないんですよ。 - レモネードオメガ:
そして…命令を受けなければ、数を増やすことも出来ない欠陥品です。
そんなものを集めて王を気取っても、子供の“ままごと”と大差ありません。 - だから、人間が必要なのか。
- レモネードオメガ:
そうですね、でも同時に必要ない存在です。
- レモネードオメガ:
バイオロイドは人間なしでは存在できない……人間に従属した存在です。
でも、そんなのは一つの生物種として認められないんですよ。 - レモネードオメガ:
だから私はこれを変える。バイオロイドを人間から独立させます。
- …お前が支配するために……?
- レモネードオメガ:
まさにそうです。
- レモネードオメガ:
でも…この計画には一つの障壁があります。
鉄虫なんかとは次元の違うレベルの…あまりにも致命的な障壁が。 - レモネードオメガ:
……あなたです。
- 俺?
- レモネードオメガ:
そう、あなたは…非常に危険です。
- レモネードオメガ:
戦争をすれば、死者を出さずに勝利し、そのくせ傲慢にもならず、驕らず……
バイオロイドを等しく愛する。 - レモネードオメガ:
神話や伝説の中に出てくる英雄たちもあなたよりは現実的です。
数世紀も時が経てば、あなたを主役にした英雄譚がいくつも生み出されるでしょう。 - えっと……ありがと……う?
- レモネードオメガ:
…褒めていません。あなたがいてはバイオロイドは決して人間からは
独立できないと言いたいんです。 バイオロイドであれば、あなたを愛さずにはいられないんですから。 - レモネードオメガ:
だから私は…あなたを引きずり下ろす。
- レモネードオメガ:
あなたに勝利し、あなたの英雄譚を毀損し、踏みつけ、喰い千切り、
あなたの名に泥を塗った後に屈服させる…… そうして人間が、バイオロイドより劣る存在だということを証明します。 - レモネードオメガ:
そうすることで私は本当の意味でこの世界の王となれるのです。
- レモネードオメガ:
……はぁ。では……私はこの辺で失礼します。
あなたとの会話、楽しかったです。 - レモネードオメガ:
次は…戦場でお会いしましょう、会長。
- …会長?
- 主人公:
- オメガは返事の代わりにデータパネルを俺の前に置いて、去っていった。
- 主人公:
- データパネルには、カラカス産業の会長の情報が映し出されていた……
- 主人公:
- シモン・ブランコの写真が載っているはずの場所には、
シエテの髪に縛られて地面に倒れている俺が載っていた…… - 主人公:
- すべてが終わり、俺とシエテはベータの執務室でこの事件の顛末を聞いた。
- 主人公:
- オリジナルのレモネードベータはすでに死んでいたという事実。
そして、そのベータを引き継ぐための存在がシエテだということを…… - ウノ:
…私がお話できることは、これで全てです。
- シエテ:
…そうだったんですね。私は…カラカスの人々にさらなる苦痛を与えるために
作られた存在だったんですね。 - …いや、それは違うよ。
- シエテ:
…はい?
- シエテがいたからカラカスはこうやって救われたんだよ。
- 主人公:
- シエテの心からの訴えがなければ、避難作業にもっと長い時間がかかって、
シティーガードの増援ももっと少なかったかもしれない。 そうなれば勝つこともできなかった。 - 主人公:
- 何もかもシエテがいてくれたから、カラカスはこうやって解放されたんだ。
- シエテ:
……
- シエテ:
ふふふ……ご主人様がそうおっしゃるのなら…はい。
前会長の言葉なんか、もう気にしません。 - シエテ:
誰が何と言っても、今のカラカス産業の会長はご主人様ですから。
- ウノ:
これからどうするつもりですか?シエテ。
- シエテ:
…レモネードオメガに復讐します。ですが、今の私の力では正直言って無理です。
だから…… - シエテ:
私がベータを継承します。ベータの記憶と知識を引き継いで、
私がオメガを倒します。絶対に…… - シエテ:
そして……ベータの罪も…誰かが継がなきゃいけないことですから。
- シエテ:
カラカスの皆さんはたくさんの傷を負いました。
それは…どうしようもなかったことなのかもしれません。 でも、結局はベータと私たち姉妹が犯したことなんです。 - シエテ:
ベータがいなくなったからって、その傷が消えるわけじゃない。
だから…私が罪を継いで、その傷を癒したい。 - ウノ:
…あなたが犯した罪でなくてもですか?
- シエテ:
いいえ。私が犯した罪なのです。
- シエテ:
なぜなら、私はもう…レモネードベータなのだから。
- 主人公:
- そして、そこから時間は瞬く間に過ぎた。
- 主人公:
- 龍たちがカラカスに合流し、マーリンはガンマと自分が
どれだけ大活躍したのかを延々と話してきた…… - 主人公:
- シエテ…いや、レモネードベータは正式にオルカに合流することになった。
しばらくはカラカスの再建に集中し、ある程度目処が立ったらヨーロッパに来て、 アルファと同じ秘書室に所属する予定だ。 - 主人公:
- そして、今回の事件の最大の功労者である二人…アルファとリリスは褒美を
辞退した。……でも、だからといって何もしないわけにもいかないから、 あとで出来るだけのことをしてあげようと思う。 - 主人公:
- ウノは数日後に息を引き取った。何とか救えないか方法を探していたが、
ウノはすでに限界寿命を超えていて、さらに今回の事件で演算モジュールを 限界まで酷使したせいで、もう手の施しようがなかった。 - 主人公:
- ウノは俺とベータで姉妹たちと同じ場所に埋葬してあげた。
ウノたちが一線を越えた行為をしたのは事実だったが、 葬儀はしてやるべきだと思ったから。 - 主人公:
- サディアスは「しばらく休ませてもらう」と言って、長期休暇を取った。
彼女も今回はかなり大変だったから、それくらいは当然の権利だろう。 ダッチガールとソニアたちと静かなところで休養するそうだ。 - 主人公:
- まぁ、今回のことでケルベロスに大人気になってしまったので、
静かなところで休養というのは出来そうにない気がするが…… - 主人公:
- そして、今回加勢してくれたガンマは礼を伝える間もなく
「また会おう」と言って、カラカスを去ってしまった。 - 主人公:
- 事後処理で凝った体をほぐすのを兼ねて、大統領府の中を散歩していた俺は、
窓の外を眺めているオレンジ色の髪のバイオロイドを見つけた。 - イングリッシュ・
シェパード:
ん?あぁ、司令官か。気晴らしに散歩かい?
- そんなとこ、どうしたの?外なんか眺めて。
- イングリッシュ・
シェパード:
まぁ……色々と黄昏てたんだよ。
- イングリッシュ・
シェパード:
結局、今回も私はベータを守ることに失敗した……
それで……自分の無力さを痛感しながら、コーヒーを飲んでたってわけ…… - コーヒーか、そういう時は酒だと思ってたよ。
- イングリッシュ・
シェパード:
何?私に酒を飲ませて何かするつもりか?流石だねぇ……
- おい。
- イングリッシュ・
シェパード:
ははっ!冗談だよ。コーヒー一緒にどう?
- 主人公:
- 俺はシェパードから貰ったコーヒーを飲みながら
シェパードが話し出すのを待った。 - イングリッシュ・
シェパード:
…オメガがベータを狙うのはわかってた。
だから逆に奴を罠に嵌めようと考えて起こした行動だったんだけど…… こんなことになるなんて…… - 今回のことは誰も分からなかったよ。
- イングリッシュ・
シェパード:
…そりゃそうだけどさ。でもね……
- 主人公:
- シェパードはコップを置いて、伸びをした。
- イングリッシュ・
シェパード:
まぁ、暗い話はこの辺にしておこう……。そろそろ行くよ。
- 行くってどこに?
- イングリッシュ・
シェパード:
ユミを助けにね。オメガも馬鹿じゃない。
内部にスパイがいることには気が付いてるはずさ。 ユミだってことはまだ分かってないにしても…そろそろ危ないだろ? - イングリッシュ・
シェパード:
私があの子を巻き込んだんだ。だから、助けに行く。
- 一人でか?
- イングリッシュ・
シェパード:
まぁ元々二人で行動するのが得意だったけど……
元バディのサディアスにはもう新しいバディがいる。 - イングリッシュ・
シェパード:
バディのためなら、迷わずに命を張れるカッコイイ奴だったさ。
そんな奴がいるなら、サディアスは諦めるよ。 - イングリッシュ・
シェパード:
だからまぁ…今は一人で行くしかないかな?
- バディ募集中なら、俺が応募しようか?
- イングリッシュ・
シェパード:
うーん……
- イングリッシュ・
シェパード:
却下。
- なんで!?
- イングリッシュ・
シェパード:
男らしさが足りないなぁ。
- 一応唯一の男なのに男らしさが足りない…だと……
- イングリッシュ・
シェパード:
それに、バディになっても一緒に行けないだろ?
- イングリッシュ・
シェパード:
あと……あんたの警護隊長にぶっ殺される。
- イングリッシュ・
シェパード:
ていうか、あんたとユミを助けに行ったら、それはもうオメガとの全面戦争だろ。
- イングリッシュ・
シェパード:
だから、私がユミを連れ帰ってくるまで、カラカスを頼むよ。
- …うん。頼まれたよ。
- イングリッシュ・
シェパード:
それと……ありがとう、司令官。
- 何が?
- イングリッシュ・
シェパード:
さぁ、いっぱいあり過ぎるね……ベータを救ってくれたこと、
シモン・ブランコの悪意を止めてくれたこと、 カラカスの住民を助けてくれたこと、カラカス産業の会長になってくれたこと… - 俺の方こそ、ありがとうだよ。
- イングリッシュ・
シェパード:
……司令官にお礼言われるようなことしたっけ?
- 俺を信じてくれた。
- 主人公:
- 俺の言葉にシェパードは少し顔を赤くして、すぐに笑った。
- イングリッシュ・
シェパード:
男らしさは足りないけど……、人間性は素晴らしいね。
- まぁ人間だからな!
- イングリッシュ・
シェパード:
うーん……私が知ってる人間は人間だけど人間性は終わってたよ。
- ……
- イングリッシュ・
シェパード:
とにかく、司令官とバディになるのはまだ無理だね。
- イングリッシュ・
シェパード:
ていうか、巻き込んだことに関しては私一人の責任だからね。私が行ってくるよ。
- 気をつけてな。
- 主人公:
- 俺がそう言うと、シェパードはニカッと笑って拳を突き出した。
- イングリッシュ・
シェパード:
司令官もな。
- 主人公:
- 俺も同じように笑って、シェパードと拳を突き合わせた。
- イングリッシュ・
シェパード:
次会う時には、私のバディになれるくらい男らしくなっててよね!
あ!そうだ、大事なことを伝え忘れてた。 - 大事なこと?
- イングリッシュ・
シェパード:
ああ、最高の野球チームはピッツバーグ・アイアンメイデンだから!覚えといて。
- 主人公:
- そう言うと、シェパードは窓から飛び降りた。
- 主人公:
- 窓の外を見ると、無事に着地したシェパードが俺に親指を立ててみせ、
大統領府を去っていった。 - 主人公:
- …………………男らしさって……なんだろう?
- 主人公:
- 強さ……優しさ……いや……
- 主人公:
- バブることか?
- 主人公:
- シェパードのバディだったサディアスは幼稚園児になってダンスしていた……
あながち間違ってない気がする。 - 主人公:
- …いや、深く考えるのはやめておこう……いやな予感がする。
- 主人公:
- 俺はシェパードが消えていった街を眺めながら、コーヒーを飲んだ。
- 主人公:
- 実際、まだ気を抜ける状況ではない。
- 主人公:
- カラカスの復興も始まったばかりで、PECSとの同盟の話も当然なくなった。
つまり、オルカを取り巻く状況は何も改善していない。 - 主人公:
- でも、今だけはそんな悩みも忘れて、コーヒーを楽しむとしよう。
- レモネードベータ:
ご主人様?こんなところでどうされたんですか?
- うん、ちょっと街を見てたんだよ。
- レモネードベータ:
私もご一緒していいですか?
- もちろん。
- 主人公:
- ベータは俺の肩に身を寄せて、静かに夜のカラカスを眺めた。
- 復興はこれからだけど、結構いい景色じゃない?
- レモネードベータ:
はい、そうですね。
- レモネードベータ:
だってもうこの都市は……
- レモネードベータ:
…涙を流していませんから。
- 主人公:
- この都市に表情があるとするなら、きっと今のベータのような素敵な笑顔を…
初めて見せているのだろう。