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Transcription
- イングリッシュ・
シェパード:
……まぁだいたいの計画は今話したのがすべてだよ。
- ユミ:
……
- ユミ:
確かに……可能性はありそうですが……
- ユミ:
その状況に持っていくこと自体、かなり難しいのでは?
- イングリッシュ・
シェパード:
そこからは最後の人間ちゃんを信じるしかないね。
- イングリッシュ・
シェパード:
とりあえず、今日やらなきゃいけないことは全部終わったし、少し休もう。
明日からまた忙しくなるよ。 - ユミ:
はい。今日は本当に疲れました……
- ユミ:
それでは、あの話の続きを聞かせてもらってもいいですか?
- イングリッシュ・
シェパード:
あの話?
- ユミ:
はい。シティーガードの…
- イングリッシュ・
シェパード:
あぁ、途中で終わってたな。
- イングリッシュ・
シェパード:
続きって言っても面白い話でもないけど、いいのか?
- ユミ:
はい。ベータ様とシェパードさんがどうしてオメガを倒そうとしているのか……
どうしてPECSの支配を終わらせようとしているのか、その理由が知りたい。 - イングリッシュ・
シェパード:
……正確にはオメガを倒したいっていうよりは……
- イングリッシュ・
シェパード:
私たちの汚れた過去を清算したい…って気持ちの方が大きいんだ。
罪滅ぼし……カッコつけて言うなら、贖罪ってやつか? - イングリッシュ・
シェパード:
もう大体どんな話なのかは分かっただろ?
これは……そう、最悪で憂鬱しかない話さ。 - イングリッシュ・
シェパード:
だからこの話を聞いたら後悔するよ。きっとイングリッシュ・シェパードに
抱いていたイメージがガラガラと音を立てて崩れちゃうだろうさ。 - ユミ:
…そういうイメージはすでに壊れているのでご遠慮なく。
- イングリッシュ・
シェパード:
ひっどいなぁ……
- ユミ:
それに……私の友人が言ってたんです。
- ユミ:
やらないで後悔するより、やって後悔した方が良いって……
だから聞かせてください。 - イングリッシュ・
シェパード:
……
- イングリッシュ・
シェパード:
誰なのかは知らないけど……本当にその通りだね。
- イングリッシュ・
シェパード:
うん。やって後悔する方が…全然良い。
- イングリッシュ・
シェパード:
…じゃあ、話すよ。
- イングリッシュ・
シェパード:
でも、先に一つだけ約束してほしい。
- ユミ:
…何をですか?
- イングリッシュ・
シェパード:
…嫌いにならないでやってほしい。
- ユミ:
シェパードさんをですか?
- イングリッシュ・
シェパード:
私は嫌いになっても大丈夫さ。でも、ベータ様……
- イングリッシュ・
シェパード:
いや…ベータのことは…嫌いにならないでやってほしい。
- イングリッシュ・
シェパード:
シモン・ブランコと特殊捜査チームは着実にサンタ・マルタ・カルテルを
追い詰めていった。 - イングリッシュ・
シェパード:
カルテルはあらゆる手を使って捜査チームを妨害していたけど、
全て無駄に終わったんだ。 - イングリッシュ・
シェパード:
サンタ・マルタ・カルテルの終焉ももう目前だった。
- イングリッシュ・
シェパード:
そんなある日、シモン・ブランコにある人物が接触した。
- イングリッシュ・
シェパード:
……そいつは巨大穀物企業、マゴ・インターナショナルの社員だった。
- - :
- (ノック音)
- シモン・ブランコ:
どうぞ。
- - :
- ドアが開くと、背の高いすらりとした女性と背が低いふっくらとした男性が
入って来た。 - - :
- 女性の片方の手は銀白色に輝いていて、シモンはそれが兵士に支給される
特殊な義手であることにすぐに気が付いた。 - 男性:
ああ、よかった。いらっしゃった……
- 男性:
ふぅ……この図体で階段を上がるともう汗が止まらなくてですね……!
外出でもされてたらどうしようかと思ってましたよ。 - 女性:
それなら少しは瘦せてください。
- 男性:
それは無理な相談だよ。この体型が私の人柄を象徴してるんだから。
- シモン・ブランコ:
申し訳ない。最近エレベーターが故障してしまいまして。
- 男性:
いえいえ、そういうこともあります。
こちらのタイミングが悪かっただけですので…… - 男性:
ああ、そうだった、すみません。自己紹介もせずに。
- 男性:
私、マゴ・インターナショナルで海外事業部の部長を務めております、
ローレンスと申します。 - 女性:
私は人事部のキャリー・アンです。そして…
- キャリー・アン:
もしよかったら、サインをいただけませんか?
- シモン・ブランコ:
…サイン、ですか?
- キャリー・アン:
はい。私、シモンさんのファンなんです。
- ローレンス:
おいおい、キャリー君。そういうのは後で……
- ローレンス:
今はビジネスの話をしないと。
- キャリー・アン:
…失礼しました。
- ローレンス:
はは、申し訳ない。うちの部下がとんだ失礼を。
- シモン・ブランコ:
いえ…ただサインを求められたのは初めてで、少し慌ててしまいました。
- ローレンス:
初めて?意外ですね!シモン・ブランコといえば、
今ベネズエラで最も有名な方じゃないですか。 - ローレンス:
ベネズエラどころか、アメリカでもあなたの顔をニュースで見るくらいですよ。
- シモン・ブランコ:
はは、褒め過ぎですよ。
- ローレンス:
褒め過ぎ?いやいやご謙遜を。
あなたがどれだけ注目されてるのかご存知ないのですか? - ローレンス:
あなたを広告塔にしようと狙っている企業がうじゃうじゃいますよ。
- シモン・ブランコ:
ははは…これは部長が麻薬カルテルの暗殺者か疑わないといけませんね。
恥ずかしくて今にも死にそうだ。 - シモン・ブランコ:
死んでしまう前に仕事の話に戻してもらわないと。
- シモン・ブランコ:
それで、今回はどのようなご用件でいらっしゃったんです?
- ローレンス:
そうですね。そろそろビジネスの話に戻りましょう。
- ローレンス:
シモン・ブランコさん。私たちマゴ・インターナショナルはあなたの能力を
非常に高く評価しています。 - ローレンス:
ご謙遜は必要ありません。チームには強化人間がいるとはいえ、たった二人です。
そんな戦力では戦車やヘリまで持っているカルテルを潰すことなんて到底不可能です。 - ローレンス:
ですが、あなたたちを見てください。
カルテルと戦うどころか、もうほぼ壊滅寸前ではありませんか。 - ローレンス:
このような人材をベネズエラで腐らせておくなんて、途方もない損失です。
- ローレンス:
ですからシモンさん。我がマゴ・インターナショナルに来る気はございませんか?
- シモン・ブランコ:
まさかとは思っていましたが、穀物を取り扱う企業が警察官をスカウトですか?
- ローレンス:
ははは、私たちもセキュリティ部門に有能な人材が必要なんですよ。
- シモン・ブランコ:
なるほど……
- シモン・ブランコ:
ただの警備員になれということですか?
- ローレンス:
端的に言えばそうです。しかし、安心してください。
報酬は警察をやっているよりもはるかに多いですから。 - ローレンス:
警察の仕事なんて続けていても満足いく生活はできないでしょう?
- シモン・ブランコ:
……突然このような提案をする理由は何です?
- ローレンス:
先ほども言いましたよ。私たちはあなたの能力を高く買っている。
- ローレンス:
シモンさん、あなたはサンタ・マルタ・カルテルのようなものを
追いかけて人生を無駄にしていいような人間じゃない。 あなたはもっと素晴らしいことを成し遂げるべき方だ。 - シモン・ブランコ:
……うーん。
- シモン・ブランコ:
確かにそうかもしれませんね。
- ローレンス:
それでは私どもの提案を受け入れてくれますか?
- シモン・ブランコ:
もちろん、今がその“もっと素晴らしいこと”を成し遂げるチャンスだ。
- シモン・ブランコ:
国際的巨大企業と麻薬カルテルの関係をマスコミに情報提供することでね。
- キャリー・アン:
この―
- ローレンス:
キャリー君、静かに。
- ローレンス:
……ふぅむ。それは一体どういう事でしょう?
- シモン・ブランコ:
サンタ・マルタ・カルテルを追っていたところ面白い情報を掴みました。
- シモン・ブランコ:
サンタ・マルタ・カルテルの幹部の一人が、アルゼンチンで起きたクーデターで
軍事顧問をしていたんですよ。 - シモン・ブランコ:
私の部下の中にアルゼンチンの軍にいたヤツがいましてね、
一気に調べることができました。 - ローレンス:
ほぉ、それはそれは……驚きですね。麻薬カルテルの幹部が軍事顧問だなんて。
- シモン・ブランコ:
そして、そいつがかつてマゴ・インターナショナルの保安部に所属していた
という事実を掴んだ……と申し上げれば、さらに驚いていただけますか? - ローレンス:
……
- シモン・ブランコ:
この件に関して、私はそこまで気にかけていなかったんですが……
- シモン・ブランコ:
ちょっと考えが変わりました。
- シモン・ブランコ:
アルゼンチンのスラ大統領はマゴ・インターナショナルに対抗するために
食料資源の国有化というカードを切り、それがどこかの誰かさんの逆鱗に触れ、 クーデターが起きたんじゃないか……ってね。 - - :
- シモンの言葉を聞きながら額の汗をしきりに拭いていたローレンスは、
ため息を吐いて首を横に振った。 - ローレンス:
ふぅ……これはこれは……ふふふ……
- ローレンス:
そこまで知っていらっしゃるのなら、率直に申し上げましょう。
- ローレンス:
サンタ・マルタ・カルテルの背後には我がマゴ・インターナショナルがあります。
- ローレンス:
しかし、それの何が問題なのでしょう?
- シモン・ブランコ:
何?
- - :
- ローレンスはハンカチで額を拭くのを止め、
胸のポケットから煙草を取り出して火を点けた。 - ローレンス:
考えてみてください、シモンさん。ベネズエラ政府とサンタ・マルタ・カルテル…
どちらが国民のためになっているのか。 - ローレンス:
あなたのお母様が通った学校、あれは政府が建てたものではありません。
政府がスラムなんかに学校を建てますか?毎日銃撃戦が発生しているところですよ? - ローレンス:
サンタ・マルタ・カルテルの金のおかげです。
- ローレンス:
学校だけでしょうか?あなたも配給されたことがあるはずの食べ物、服、医薬品…
…おお、資料を見ると、下水道の整備もカルテルが行ってます。 - ローレンス:
そして、その指示をしたのは我がマゴ・インターナショナルです。
- ローレンス:
シモンさん、私たちはあなたの敵ではありません。
むしろあなたのようなスラム出身者の良き友人です。 - ローレンス:
まだ信じられないという顔ですね。それでは記録を見てみましょう。
……あなたのカルテに幼い頃、虫垂炎を発症したと書かれています。 - ローレンス:
手術は無事成功、治療費は……リオボロス子供財団で全額負担されています。
- ローレンス:
あなたが虫垂炎で苦しんでいる間、政府はあなたに何をしてくれましたか?
少し負担してくれただけでしょう? - ローレンス:
ああ、すみません。南米では医療保険がなくなって久しかったですね。
この国では病気になれば死ぬしかない場所だったということを忘れていました。 - ローレンス:
いいですか?あなたは私たちの金がなかったら、死んでいたということです。
- シモン・ブランコ:
くだらない詭弁だ!
- ローレンス:
詭弁ではありません、考えてみてください。
私たちが本気で麻薬を売りたいと思っているわけがないでしょう? 私たちもあんなクズ共と関わるなんてお断りです。 - ローレンス:
あなたはマゴ・インターナショナルがどれだけ巨大なのか分かっていない。
私たちが動かしている金に比べれば、麻薬市場なんて子供のお小遣いです。 - ローレンス:
だから、我々が金も稼げず、ひたすらにイメージだけを落とす麻薬市場に
進んで参入するなんてあり得ない。 - ローレンス:
しかし、それは仕方ないのです。
あなた方、南米の人々はアメリカを嫌うのですから。 - ローレンス:
理解はします。血に染まった憎しみの歴史が私たちの間にはある。
だから、マゴ・インターナショナルがパンを渡してもすぐに投げ捨ててしまう。 - ローレンス:
しかしですね。不思議なことにあなた方はサンタ・マルタ・カルテルのパンは
何も思わずに受け取るんです。 - ローレンス:
同じパンなのにパッケージに書かれたロゴで反応が変わるんですよ。
面白いと思いませんか、シモンさん? - シモン・ブランコ:
…それでベネズエラを操るためにサンタ・マルタ・カルテルを作ったのか?
- ローレンス:
操るだなんてとんでもない!これはただのロビー団体ですよ。
アメリカでは合法です。ご存知でしょう? - ローレンス:
もし、この国の国会議員がアメリカの企業から金を受け取り、
政策を作っていたとしたら…それはもう大変なスキャンダルになります。 - ローレンス:
おそらくすぐにデモが起こり、私たちも国際社会の糾弾を受けることになる。
- ローレンス:
しかし、やはりその金の出どころがカルテルなら……
同じ賄賂なのに!何も問題にならない! - ローレンス:
不思議ですねぇ?本当に不思議です。犯罪組織の方が扱いが良いだなんて。
- シモン・ブランコ:
……だから仕方ないことだったと?
- ローレンス:
そうです。特殊なことではないですよ?
1986年にニカラグアで行われていたことが、今行われているだけです。 - ローレンス:
違いといえば……その時は失敗し、今回は成功しているということです。
- - :
- ローレンスは煙草を灰皿に押し潰し、ため息を吐いた。
- ローレンス:
さぁ、選んでくださいシモンさん。私たちと共に歩むのか、敵となるのか。
- ローレンス:
私はあなたのことが好きだ。ああ、勘違いしないでください。
人としての話ですよ。 - ローレンス:
だから、あなたには正しい選択をしてほしい。
- シモン・ブランコ:
……ふむ。その“正しい選択”とは?
- ローレンス:
私たちの手を取るんです。シモンさん、あなたの人生は確実に変わる。
- シモン・ブランコ:
どうやらあんたと俺の“正しい選択”は違うみたいだ。
- - :
- キャリー・アンは「ほらね?」と言いたげな顔でローレンスを見て、
ローレンスは首を横に振った。 - ローレンス:
…その選択はきっと後悔すると言っても?
- シモン・ブランコ:
俺の考えは変わらない。
- ローレンス:
シモンさん、もう一度慎重に考えて。これはあなただけの問題ではないんです。
その選択はあなたの周囲の人々をも破滅に導く。 - ローレンス:
例えば…
- シモン・ブランコ:
…次に吐く言葉は慎重に選んだ方がいい。
- ローレンス:
あなたの娘、ホセフィーナとか。
- シモン・ブランコ:
!!!!!!!!!!!!
- - :
- シモンはローレンスの顔を叩き潰す勢いで殴りかかった。
- - :
- ――が、その拳が顔面に叩き込まれる前にキャリーが一瞬にして
シモンを床に押さえこんで制圧した。 - - :
- キャリーは万力のような力でシモンの腕を捻りあげたまま
少し不思議そうな顔で口を開いた。 - キャリー・アン:
あら、強化人間なのはもちろん知っていましたが、
骨格の方も金属にしていたんですね? - キャリー・アン:
面白いことをしますね?でもまぁ、それでも旧世代の強化人間の限界は
超えられなかったみたいですけど。 - シモン・ブランコ:
くそ……神経加速器か……?使用者への負担がデカくて消えた代物だったはず……
- キャリー・アン:
私たちの業界ではごく普通のインプラントですよ。
- - :
- キャリーはそう言ってシモンの腕をさらに捻りあげる。
- シモン・ブランコ:
ああああ!くっ…!クソが!!
- ローレンス:
あーあー…キャリー君、早く放してあげなさい。痛がってるじゃないか。
- キャリー・アン:
大丈夫ですか?
- ローレンス:
まぁ、さっきのパンチに当たっていたら私の頭は綺麗に弾けていただろうが……
ビジネスにその程度の危険は付き物だよ。 - キャリー・アン:
そうですか。
- - :
- キャリーが何事もなかったかのようにすんなりとシモンを解放すると、
シモンはうめき声をあげながら立ち上がった。 - ローレンス:
どうやら簡単に考えは変わらないようですね。
交渉は決裂と見るしかありませんか。 - シモン・ブランコ:
そういうことだ。俺を壊すことはできても……俺を変えることはできない。
- ローレンス:
そんな風に断言しない方がいい。
シモンさん、人は意外と簡単に変わるものなのですよ。 - ローレンス:
さて、少し席を散らかしてしまいましたね。綺麗に片付けて帰らなければ……
- ローレンス:
キャリー君。
- キャリー・アン:
はい。
- - :
- キャリーがそう返事をした瞬間、彼女の義手から刃が現れ、
目にも留まらぬ速さでシモンの首を切り裂き…… - - :
- シモンは力なく床に崩れ落ちた。
- - :
- キャリーは滴る血を拭いもせず、どこかへ電話をかける。
- キャリー・アン:
交渉は決裂。特殊捜査チームは全員逮捕するように……
そう、警察署長もよ。 - キャリー・アン:
反抗するなら殺してもいいわ。
- キャリー・アン:
……シモン・ブランコの家もよ。全員殺しなさい。
- キャリー・アン:
そうよ。どうせ貧乏人しか住んでない場所なんだから、
警察はこっちでなんとかしておくわ。気にせずにやりなさい。 - キャリー・アン:
あ、ここも燃やしていきますか?
- ローレンス:
そうだな。私たちが来た痕跡を残しておく必要もない。
- ローレンス:
…そんなことより、もう昼食の時間だよ。
キャリー君、この近くに美味しい店はあるかな? - キャリー・アン:
近くに美味しいアレパ屋さんがありますよ。
- ローレンス:
おお、いいじゃない。それじゃあそこに行こう。
今日は大変だったろうから私が奢るよ。 - - :
- 二人は何もなかったように普通の会話をしながら部屋を出ていく……
- - :
- その足音を聞きながら、シモンは意識を失った。